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第三話

話が急展開すぎたか少し不安になりますが……どうぞ。

 


 私は解散となった後、唯と一緒に帰った。唯の表情は暗かった。私もだが。


 今は自分の部屋のベッドに仰向けで寝て、天井を見詰めながら部室での事を思い出していた。


 ……近いうちに死ぬかもしれない。


 衝撃的だった。そして後悔する。あの肝試しの日、唯が帰っていいよと言った時に帰れば良かった。そうすれば七人ではなくなり赤いビー玉は現れなかったのだろう。

 でも、もう過ぎてしまった事。これからは死なないように気を付けなければいけない。゛皆で生き残って新学期を迎える゛という目標も出来たのだ。


「絶対に生きる。」



 そう宣言した時、ゴロゴロという音が外から聞こえた。そして、ザァッという音も。雷と雨だ。

 ……嫌なタイミングで雨が降ってきたな。


「……皆は大丈夫かな?」




 ***


 side笹木翔


「……何してんだよ俺。」


 一度家に帰った後俺はコンビニへ行った。資料の通りなら今日から事故に遭うらしいから外になどでない方が良いに決まっていたが、今日オカ研の部室で自分が仕出かした事を思い出すと、じっとなんかしていられなかった。


 自分でもあの時はおかしかったと思う。

 皆から視線を向けられてまるで責められているようで居たたまれなくなった。皆に顔を向けることが出来なくなり俺の視線はビー玉へと向かった。


「……あのビー玉だ。」


 そうだビー玉を見た瞬間、あのビー玉がとても恐ろしく見えた。さらにビー玉の中に何かが見えた気がしたのだ。そして何故か何も考えられなくなった。頭の中に浮かぶのは『嫌だ』『ビー玉』『嘘だ』『信じたくない』のみになった。その後俺はビー玉を投げた。


「はぁ、真理も怒ってたよな……。」


 コンビニで飲み物とスナック菓子を買おうとレジに持ってく。ポケットに入れてある小銭を探りながら溜め息を吐く。会計を済ましてお釣りを受けとり外に向かいながらポケットに入れると、入れた指先に何か丸いものが触れた。


「……っ?」


 少し冷たいそれを掴みポケットから出す。掌を開くと、そこには、



 ――自分で捨てたはずの゛赤いビー玉゛が在った。



「……っは!?な、んで!?」



 ビー玉を凝視する。

 ありえない……あり得ない、あり得ない!!

 ビー玉(これ)は確かに部室の窓から投げた。皆も見てた。それに会計でお金を出した時には無かった!


 ゴロゴロと雷が鳴り、雨が降り始めた。

 冷たい雨は俺の不安を更に高める。


「っ、早く帰らないと!」


 このままではいけないと思い、雨に濡れながら走って家へと向かう。


 車等に注意を払いつつ家まで後少しという所だった。


「はぁっはぁっ……っあ!?」


 目の先に白い影が映った。

 白い影は人の形をしていた。幼い子供の姿。十歳かそこらに見える。容姿は白すぎる肌に白く長い髪、赤い目。そして片目――右目は無い。……その少女は赤目のビー玉の話に出てくる少女に見えた。


『……』


 白い少女は口を開き何か呟いた。

 左目をこちらに向ける。赤い目は俺を見ているようで見ていなかった。赤い目にあるのは底知れない闇と深い悲しみ。


『……えセ』


 一歩、フラりと足を踏み出してきた。俺は一歩後ろへ下がる。


『カエセ』

「っうゎ」


 恐怖からか声が出ない。

 カエセ――返せ、か。ビー玉を返せと言っているのだろう。そのビー玉は俺が持っている。なら返せばいい。


「っ!ほら!お前のビー玉はここに在るぞ!」


 俺は無理やり声を出し、少女に見えるようにビー玉を差し出す。


『カエセ、カエセ……』


 しかし少女はそのビー玉には目を向けず、俺の方に歩いてくる。

 何故だ、何故ビー玉を見ない!?見えてないのか?いやそんな筈は……!八十八年前はビー玉を返して助かったんだろう!?いやまてよ……そもそも――



 ――どうやって返したんだ?


 幽霊相手に。



「っあ……うぁっ……」

『……ワ、タシ…ノ……』


 どうしていいのか分からなくなった。目の前の恐怖に対し完全に臆した俺は、


「ほらっ!?返して欲しいんだろ!」


 ビー玉を少女へ投げた。

 しかしそのビー玉は少女をすり抜けて行き、カツッと音をたてて地面に落ちた。同時に――


『カエセ』



 ――ブツリと何かが切れたような音がして、次にヒュンという風を切る音が聴こえ、

 


「何ん…………ッッッアガァっッ!!?!??!」



 途切れた。




 ***




 ……?救急車の音?

 どれくらい時間が経ったのだろう、外は暗くいつの間にか夜になっていた。ふと雷雨が降り続くなか外で救急車のサイレンの音がした。


 ――何かしら起こるとしたら今日からだ。


 橋本の言った言葉が思い浮かびどうしようもなく怖くなる。サイレンの音が更に恐怖を掻き立てる。恐ろしくて体がガタガタと震え、私は膝を抱えて丸くなる。


「……死にたくないよぉ。」


 生きる、と決意したのに思わず弱音を吐いてしまう。そんな自分が嫌になりそうで、足元にあったタオルケットを頭に被った。




 ***




 ――♪――♪


 携帯電話が鳴っていた。

 ……寝てしまったらしい。朝になっていた。昨日の雨が嘘のように晴れている。どうやら泣きながら寝たようで瞼が重い。


「あっ……電話。」


 何の音楽が鳴っているかとおもったら電話の着信音だった。誰からの電話なのかをみてみたら橋本からだった。昨日連絡先を交換しておいたのだ。


「もしも……」

『っ!岡村さん!!君は無事だったんだね!!?』


 いきなり大声で喋って来たから耳が痛かった……が、すぐに橋本の言葉が引っ掛かった。


 ――君は無事だった(・・・・・・・・)


 っ!!


「っ、誰か何かあったの!!?」


 私も大声が出た。が気にしてられない、気にする方がおかしい。


 そして、



「落ち着いて聴いてくれよ?…………翔が、笹木が…………死んだ(・・・)。」





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