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06.目覚め1

眼を開け、首を傾げる。


「何やってるんですか。ディーノさん?」

「ははははは・・・」


私の下で乾いた声を上げるのは、絶賛私に馬乗りにされたあげく、首を絞められているディーノさんだった。

彼の首を絞めていた手を放し、その上から退く。


「本気で死ぬかと思ったよ」

「・・・反撃されていたらたぶん、殺してましたね」


ゆっくり体を起こしたディーノの首にはくっきりと赤く望美の手の跡が付いていた。

よく反撃しなかったものだ。

少しでも抵抗のそぶりを見せていれば私はきっと彼を殺していただろう。

抵抗しないということはよほど私を信頼しているか、それか自殺志願のあるバカだったか。

鍛えている彼の事だ、私をどうにかしようと思えば出来たはず。

それなのに彼は何もしなかった。

首に残った赤い跡がその証拠。


「なんで抵抗しなかったんですか?」

「どんな理由であれ、あなたに手を出すことは出来ません」

「・・・じゃあ私があなたに剣で切りかかっても無抵抗で殺さるんですか?」

「その場合抵抗しますよ?」


意味が分からない。


「難しく考えなくてもいいです。ただオレが、抵抗してはいけないとそう思っただけですから」


ますます意味が分からなかった。

苦笑するディーノの首に自分でつけてしまった赤い跡を指でなぞる。

ディーノの息を呑む音が耳に届いた。

そんなに警戒しなくても、殺したりしないのに・・・


「抵抗しなくて正解。言わなかった私も悪いけど、寝ているときの私に近づかない方がいいですよ。間違って殺しちゃうかもしれないから」


力があれば結界を敷くが、力がない場合、もしくは使えない時は、殺意や殺気に体は忠実に動いてしまう。

染みついてしまっているのだ。

と、気が付く。


「どうしてココにディーノさんがいるんですか?」


ここは一応私に与えられた客室のはず。

女性の、寝室だ。

仮にも男性がこんな夜遅くに入っていい場所ではない。


「声はかけましたよ?」

「いや・・・返事がなかったと言って入りませんよね、普通」

「返事がないからと言って、安全を確認しないわけにはいかないでしょう?」

「・・・」


いい笑顔と共に帰ってきた返事に言葉を失う。

職務に忠実と言うか・・・でも普通そこまでするものだろうか?

よく分からない。

よく分からない事は考えても仕方がないから置いておくことにする。


「一つ聞いてもいいですか?」

「はい。なんでしょう?」

「もしかして記憶、戻っています?」


ディーノさんの言葉に素直に驚いた。


「よく分かりましたね」

「雰囲気が違いましたから」


意外と観察しているのだと彼に対する認識を改める。


「いつからですか?」

「さっき、かな?」


正確に言えば魔神に会った瞬間だ。


「先にその跡治しますね」

「え?」


返事を待たず、彼の首に付けた痛々しい跡を消す。

ついでに自分の足も治してしまう。

一瞬だけ淡く灯った光の後にはすべてが元に戻っていた。

包帯を取った私の足を見てディーノさんは驚きの表情を浮かべる。


「そんなに驚くことですか?」

「ええ・・・魔族の中には治療魔法の使い手もいますが、こんなにあっさりと怪我を治せるものはいませんよ」

「ふぅん。あなたは使えるの?」

「オレは・・・魔法自体が使えないんですよ。キメラ、ですから」


苦く笑うディーノさんの言葉に首を傾げる。

魔力があるのに魔法が使えない?


(・・・わからない、とか?)


けれどそれは今聞かなくてはならない事ではないと判断。

それよりも後でここでの魔法についての確認の方が重要だ。

この疑問はその時でいいだろう。


「あ、そうだ。私魔王やることにしたから、よろしくね」


いうだけ言って立ち上がり私は歩き出す。


「え?・・・ってどこに行くんですか!?」

「足の怪我も治ったしお風呂に入ります。後の事は自分で何とかするのでディーノさんはもう休んでください。お仕事御苦労さまでした。おやすみなさい」


目的の場所を見つけ、返事を待たずパタンと私は扉を閉めた。


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