プロローグ
温かく見守って下さい。
(ちっ、負けちまったか。
さすがに、敵を作りすぎちまったようだな。
次は俺を起こした奴に従えるとしよう。
どんな奴でもな………………………。)
そうして男は、深い深い眠りについた。
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(くっ、どうしてこんなことになったのじゃ。)
小さな少女は、森を全力で走りながらこのあとどうするかを考えた。
彼女は、家臣の裏切りにあい、誰一人として味方がいない状態であった。
裏切りにあった原因は、彼女の父である世界最強の魔王の死であった。
父は、魔王として魔界を征服していた。
そんな父が人間界から来た勇者一向に殺されてしまったのである。
すると家臣たちは手のひらを返すように、父から彼女に受け継がれるはずだった、領地や財宝・武器・家を奪い、最後には命まで奪れそうになっていた。
そして彼女は、信頼していた全ての者に裏切られて、心が折れそうになっていた。
母親がいなかった彼女は、教育係のキノールことを本当の母親のように慕っていた。
しかし現実は甘かった 、彼女を追っている相手はキノールだったのだから。
「うふふふ、追い詰めましたわよ。」
「なぜじゃ!なぜワシを裏切ったのじゃ。
お主のことを一番信頼しておったのに。 」
彼女は崖に追い詰められて、後方には岩の壁しかなかった。
「なぜですって?
だってあなたを殺せば新しい魔王様の側近にしてもらえるのですから、当然といったら当然ですわ。」
「ワシは、お主のことを本当の母親のように慕っておったのじゃぞ。」
「あっそう、だから何ですの?
別に私には、どうでもいいことですのよ。
もうさっさと死んで下さい。
顔も見たくありませんので、最後に私の人生の糧として頑張って下さい。」
「くっ。」
「それじゃぁバイバーイさようなら来世で会おうねー。」
「うわぁぁぁぁぁぁ……………。」
彼女は、攻撃を避けようとして小さい穴に落ちていった。
「チッ、運だけはいいやつですのね。
さっさと死ねばいいものを。」
彼女は、しばらく穴を落ちた後少し開けた不思議な空間にでた。
「なんなのじゃ、どうしてワシばっかりこんな目に遭うのじゃ。
ワシが何をしたっていうのじゃ。」
彼女は小さくうずくまりながら、絶望にかられていた。
何度考えても、生き残る方法が思いつかないのだ。
そして自ら死のうと決心しかけたとき、ふと、自分がもたれている物が気になった。
どうもそれは、ツルツルしておりあきらかに人工物であるのだ。
彼女は立ち上がり、ツルツルした物の形を手で確認し始めた。
どうもそれは、縦が60cm位であるのに対し、横が彼女の身長よりも大きい長方形のようだ。
そして、物体に紙が何枚も貼ってあることに気付き、それを剥がし始めた。
そして、全部剥がし終わった瞬間に横の壁が崩れ始めてキノールが姿を表した。
「本当に手間がかかる人ですね。
でも安心してください、次は本気でいくので万に一つでも生き残ることは、ありませんので。
では、今度こそさようなら。」
キノールが彼女に向かって剣を切りつけてきた。
その速さは視界に捕らえることができない。
しかし正確に彼女の首筋へ、吸い込まれていった。
「っ!」
彼女は、死を覚悟して目を閉じて、剣が自分に到達するのを待った。
しかし幾ら待てど剣は来ないもしかしてもう死んだのかと思い恐る恐る目を開けてみると、そこには両手が無くなったキノールの姿があった。
訳が分からなかった。
それは、キノールも同じようでキノールも固まっていた。
そして、それは唐突に聞こえた。
「俺を目覚めさてたのはお前か?」