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泣きたい気分です

「うおっ!?」


「うにゃ゛!?」


 目を開けたらそこは賑わう町に楽しげな人々――だと思ってたのに。野太い悲鳴に飛び起きてみれば日に焼けた体格の良いおじさん。そうおじさん。……どなたぁぁああ!?


「「は、え、ちょ、だっ??」」


 おまけにハモったぁぁあ!! ああもう訳が分からない、寝起きは頭が働かないんです! いや待て待て、落ちつけ自分。取り戻せ自分。私はどこにいる? 運搬車の中。それはどうして? 脱走したから。じゃあ目の前のおじさんは誰? ……あぁ私今絶対涙目だ。もう泣きたいです。


 いやいや諦めないで私、落ちついて私。あれ? そういえば揺れが収まってます。つまりこの運搬車は止まっています。この現状で自由に動け、なお且つ荷台に用がある人物……。ここから導き出される答え、それは――


「御者さん!!」


 ふっふー、正解でしょー。ビシッと突きつけた指はそのままにドヤ~っとしてみせます。御者さん(仮)はポカン。いやー、答えが分かった時の爽快感って素晴らしい、知るって素晴らしい。ひとり感動しているとようやく御者さん(仮)が口を開きました。


「そうだけど……アンタ誰だい??」


 今度が私がポカン。――アンタダレ? ワタシ? 私ハ――


「おーーい」


 うわっ、ボーッとしてたみたい。目の前でおじさんが手をひらひらさせていました。ごめんなさい、考え事が好きなもので。でも私なんて答えようとしたんだろうか?……不法侵入者? はたまた無賃乗車犯?――我ながらロクな肩書きじゃないや。なんかまた泣きたくなってきました。最近涙腺が緩んでるから困るねまったく。って、こんなこと考えてる場合でも無かったです。やるべきことは唯一つ、現状打破。そのために今私がすべきこと、それは――


「すすす、すみまっせんでしたー!!」


 謝罪、後逃亡。逃げ足には多大な自信ありですから! それにあのおじさんそんなに早く走れるようには見えな……ゲフンゲフン。なんかもうほんと色々ごめんなさい、御者さん(確定)。


 ある程度の距離まで逃げ切るとゼーハーゼーハー肩で息をします。仮にも貴族令嬢だってバレたらことですしね。ようやく息が整いほっと溜息ひとつ。危なかったなー。


 さて、これからどうしようか、そもそもここはどこだろうか、と辺りを見回してみます。背伸びしてみると遠くの方に町の影が。案外近くまで来ていたようでまたほっとします。中途半端なところで気付かれて降ろされてたら路頭に迷うところでした。ありがとうおじさん、いえおじさま! 感謝感謝です。


「それじゃ、行きますか」


 町が見える方にゆっくりと一歩を踏みだす。


 ――町は近い。私はまた得も言われぬ高揚感に包まれます。今思えばこのとき既に、なにかが変わる、そんな予感がしていたのかもしれません。

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