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やっぱり勝手に行っちゃいます

 さて、と。まずは脱出ですね。まぁこのくらいの高さなら乗り越えられないこともないですけど……。昔から脱走、逃亡の類はよくやってたから身体能力には少々自信があるのです! 決して私が悪いんじゃないよ、毎回追いかけてくるキースが悪いんだよ。なんにせよとりあえず門に近づいて見上げてみます。うーん、ざっと2m、いや3m? よじ登ってるところを見つかると厄介ですよね。ドレス着た公爵令嬢が自分の屋敷の門をよじ登ってる様なんてさぞかし滑稽なことでしょうし。


「よし」


 そもそもドレスで脱走図るのがおかしいって今更気付きました。街行ったら目立つこと必至。まずは着替えることにしましょう。


 素早く静かに敷地内を駆け抜けます。普通に移動する分には誰にも見つからずに動ける自信あり。和の国の……忍法っていうんだっけ。抜き足さし足忍び足~とかふざけてやってたら、深草兎歩だとか狐走だとか余計なものまでできるようになったのです。足音なんて立てません。衣擦れの音さえ漏らしません。隠密行動ならお任せあれ!


 っと、変なことを考えてる間に自室に到着。ドレスを脱ぎ捨てると、部屋に隠しておいた深い緑のショートパンツに黒のタンクトップを素早く着用。最後にクローゼットの奥からベージュの裾の長いコートを取り出して準備は完了! あ、折角だからフードも被っとこ。一度鏡の前に立ち服装確認。うーん、仮にも令嬢がする格好じゃないなぁ、と思わず苦笑いを零します。最早性別さえはっきりしないじゃないか。


 まぁここでもたもたする訳にはいかない。キース辺りがそろそろ感づく頃だし。来た時と同じく音もなく駆け抜ける。うん、ドレスなんかよりよっぽど動きやすい。廊下、階段、庭、どんどん突き進みます。


 途中何度か使用人と鉢合わせしそうになったけれどもなんとかセーフ。もうすぐ昼時だからみんな食事の準備で忙しいんだろう、と推察しているところに目的のもの発見。すでに動き出しているそれに物音を立てないよう細心の注意を払いながら滑りこみます。滑り込みセーフ! もわっと少し土の匂いがしたが別段気にしません。何せ私が忍び込んだのは食材を運ぶ運搬車。匂いからしてこれは野菜用かな? 運搬車といってもそんなに立派なものでもない。馬が引いてるから揺れること揺れること。おまけに基本素材は木だからギシギシいわないように注意。いっつもこの時間帯にこの場所から動きだすことくらい知ってるもん。これから街に戻るってことも……ね。


 というわけであとはここでじっくり待つだけです。御者にさえ気づかれなければ街へ出られます。帰ったらこっぴどく叱られるだろうけど、私にも自由ってもんがあるんです。やりたいことはやり通す。欲しい物には手を伸ばす。当然のこと。


「楽しみだなぁ」


 湧きたつ高揚感を抑えきれずにぽつりと零します。思わず顔が綻んでしまうのは御愛嬌。次第に不規則な揺れが心地良くなってきました。ゆっくりと横になると直ぐに眠気が襲ってくるのは仕方ないよ、なんだかんだ頑張ったもん私。目を覚ませばきっとそこはもう平民の人々が暮らす町。広い世界。次々と溢れだす期待を胸に私は静かに目を閉じます。

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