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怪奇事変 魚の料理

掲載日:2026/02/09

二ツ星を獲得したレストランで提供された魚料理。

2人の出会いの記念にと予約困難なお店で料理を楽しみ、例の魚料理を提供され、その味は予想を超える物だった。

しかし――翌日起きると彼らの身に異変が……

 第十六怪 魚の料理


 「2人の記念日に」


 「「乾杯~!!」」


 キッチリと着込んだスーツと、華やかなドレス、美しい装飾が飾る店内でディナーを楽しむ2人は、今年付き合ってもう5年経つ。

 男は会社の経営に全力で取り組み上々と言った具合に仕事の流れが良く、そんな相手の女性はアパレル関連の店長としての仕事を真っ当している。

 以上の事から外先で中々会う機会がない訳だが、付き合って1年目で同性と言う形で同じ家から出勤、生活をしている為、外以外では毎日の様に顔を合わせているのだ。


 「ふふ、久しぶりね、貴方から誘ってくれるなんて」


 「ずっと行きたいと思ってたんだよ、だけど仕事が重なって――」

 

 「仕事の話は忘れましょ?今日は付き合って5年の記念日じゃない?」


 「そうだね、ごめん。俺の悪い癖だ」


 「弘毅(こうき)は何も悪くないでしょ?」


 「ありがとう、夢美」


 2人はシャンパンが入ったグラスを再び重ねて、音を立てた後にゆっくりと口に含んでいく。

 スパークリングの味が下を刺激し、とても美味しい。


 実はこの店は入念な下調べとして調べた所謂、二ツ星レストレランになる。


 「(本当は三ツ星が良かったけど、流石に年末前の時期になると、予約が取れないな)」


 1カ月前、いや、下手したらそれ以上前から予約の画面は見ていたし、実際にレストランに電話をした際の予約状況は参った。

 半年先まで埋まっていると言われたのは正直驚いた、三ツ星レストラン、その腕を振るうシェフの名は“柚木雅斗(ゆずきまさと)”。

 料理業界並び食通で知らない者は居ないと言われた最年少で連続5年以上の三ツ星保持者で、彼の味を知る者は“消えない新生”と言われたぐらいだ。

 

 そこにしたかったが仕方ない、またチャンスはあるはずだっと割り切り運ばれて来た料理を口に運ぶ。


 「ん!?」


 「美味しい~、この料理美味しいわ!」


 「そ、そうだね、驚きだ!一体何の魚料理なんだ?」


 見た目も美しく、肉には若干の赤身がある部分が気になっていたが、質問するとちゃんと中心温度を調べて提供している為、衛生面には全く問題がないらしい。

 所謂、レア焼きっと言うやつだ。


 「付け備えのソースも魚の味と相まって、柔らかい触感が良い!」


 「海の味、塩を使わず素材だけの味で勝負してるのかしら?塩分に合うレモンのソースもとても美味しいわ!」


 2人は満足そうに舌鼓を打ち、料理を味わう。

 だがそこで問題が発生した。


 「ん~……」


 「ええ、なんと言うか…」


 「「あの魚料理を食べた後だと、他の料理の味が――」」


 同じことを考え、それを言うと、2人は顔を見合わせて笑った。


 「ごめんよ!最高の魚料理だったはずなのに、他の料理の味が……」


 「でも満足よ、アレだけ美味しい魚の料理を食べられたら、また来たくなったわ」


 「そう言ってもらって良かった」


 2人は料理を楽しみ、談笑し、将来の事について語り合い、そうして幸せな時間は過ぎ去り帰る時間となった。

 

 お店を後にしても、2人は共に暮らしている為、別れが無い所が良い所だ……人には寄ると思うが。


 「こう、本当だったら、じゃーねって分かれるんでしょうけど……」


 「僕らは一緒に暮らしてるからね、そこの寂しさは埋められてる」


 2人は丁度良い場所を見つけると、そこで立ち止まり互いの顔を近づけ口づけをかわす。

 アルコールをのんでいた為、互いに酒の味が滲むキスとなったが、そんなことはどうでもよいと弘毅は思った。

 そうして帰宅した後、2人は何も言わず入浴し、そのままベットに押し付け自然とそう言う形へともつれ込んだ。


 「……夢美、結婚しよ」


 「もうこんなシチュエーションで言う事じゃないでしょ?」


 「こんな時だからだよ、愛を確かめ合える今だからこそ、君に告白できるんだ」


 「ふふ、変わった人」


 「変わってる人は……いや、変わってる僕は嫌いかい?」


 「ええ、大好きよ」


 そうして口づけをかわし、その夜は明けていった。




 ――翌朝――


 まだ寝ている夢美を起こさないよ言うに風呂場に行き、髭をそり、顔を洗う。

 ついでに仕事の都合で身体を洗い支度をすませようとする中で――


 「ん?」


 背中に違和感があった。


 痛み――吹き出物でもあったのかと鏡を見るとそこには奇妙な“モノ”くっ付いていた。


 「なんだ、コレ」


 六角形の様な何かがくっ付いており、背中についてるそれを剥がそうとすると痛みが走る。

 だが関係なく、それをとると剥がれたが、肉がソレに引っ付いていた為、血で滲んでしまう。


 「いてぇ……なんだ、コレ?」


 目の前にある六角形のウロコの様なものを見て、昨日の夜を思い出す。

 特にそう言った物を使ってないし、ベッドに落ちてた何かの破片か?っと思い、それを捨て痛みが走る背中にお湯を当てながら汚れを落としていく。


 そうして準備が整い、書置きで「いってきます、愛してるよ」とリビングの机に置いて出社する。

 外気は指す様に寒く、クリスマスには十分な寒さだと感じる。

 今日は帰りにケーキを購入して帰ろうと思い、タワーマンションを後にする。


 出社は専属の送迎者で会社に進む。

 その最中、弘毅がする事はノートパソコンを開き会社のデータ入力だ。

 だが――


 「ん?この店って」


 「どうかされましたか?」


 「いや、何でもない、ただの独り言だ」

 

 そう運転手に言って、気になったサイト、ブログを確認すると昨日食べに行ったレストランの好評評価が書かれていた。

 その内容は――あの魚料理だった。


 「(確かに美味かったからな、あの魚は――)」


 内容を確認すると――


 元々一ツ星から停滞ていしたレストラン、シェフの思考錯誤の末、新作として出したスペシャリテの魚料理が絶品!息を吹き返したこのレストランの快進撃はいつまで続くのか!?


 なるほど、アレはシェフの渾身の料理だった訳だ、だがコメントには辛口コメントも書かれている。


 『美味いのは認める、だがスペシャリテの魚料理のインパクトが強すぎて、後に出ていく料理の味が薄まる』

 『最後に出す料理でしょ!?』

 『バランスは改善が必要!急ピッチで作った感が凄い感じる、美味しいけど』

 『つうか、メニュー表みて本当に作ったのかな?最後の締めくくりのデザートの味さえ感じない程のインパクト料理サーブしてどうすんだ?』

 『やっぱり料理人は柚木だな、柚木に対抗するために作った感が強い』


 「(コメントの言うことは間違ってない、魚料理は確かに美味かったが、その後の料理の味……いや、正直前の味も、ワインの味も薄まった)」


 それだけインパクトが強い料理――寧ろデザートでこの技術を提供できれば最高なのにっと思ってしまう。

 高い金額を払うだけの価値は確かにある……が、それ以上に名残惜しいのだ。


 「(それが社会で言う経営戦略だとしても、やり方が下手すぎる)」


 料理の知識は全くだが、それなのに、此処まで酷評なはずなのに、自然と――今日も味わってしまうと思うのは何故だろうか?

 結局、その日は“あの料理”の事で頭が一杯になり、碌に集中できないどころか、休憩時間には昼食で夢美が作ってくれた弁当を食しても――あの強烈なインパクトが舌に残っているせいで美味いかどうか判断できなかった。




 「ただいま」


 あの料理を食べてから1週間になる。

 舌は徐々にだが感覚を取り戻す……と言う表現はおかしいかもしれないが、自然と戻ってきていた。

 

 「あら、お帰りなさい」


 「夢美……」


 「な、なによ、急に抱きついて」


 「いや、ハグってストレスが減るんだよ、自律神経が落ち着いてさ、相性が良いと効果は――」


 「ばつぐん?」


 「おかしいよな、ごめんよ、急に抱きついたりして」


 そうして堅苦しいスーツを脱ぎ、洗面所に向かって顔を洗い、スーツから別の服に着替えリビングに行くと豪華な料理が出されていた。

 

 「夢美が準備してくれたのかい?」


 「ええ、貴方、今日誕生日でしょ?」


 そうだったのかっと飾られたカレンダーを見て思う。

 誰かに祝われる事って年を重ねるごとに少なくなり、1人暮らしなどをすればそれは更に多くなる。


 「嬉しくなかった?」


 「そんな事ないよ、嬉しい、ありがとう夢美」


 口付けをかわし席について、彼女から注いでもらったワインを手に乾杯をして料理を摘まむ。


 「うん、美味しいよ」


 「全部手作りだからね、良かった~!最近は弘毅、何食べても味が~って言ってたから不安だったんだ」


 「あ……それは、ごめん」


 「ううん、実は私もあのお店で出された魚料理を口にしてから、何か他の味って駄目で、自分が作った料理の味見もおかしくなるって言うか――」


 「そうそう!まだ舌に味が残ってる感覚があるんだよね!」


 「ええ、弘毅の事を悪く言うつもりはないけど、あの店はちょっとね……」


 「あ……」


 実は弘毅は「また行かないか?」っと誘いたかったのだが、夢美の考えは逆だったようだ。

 それも当然かと、夢美の用意した料理を味わう。


 「(もう……いけないな、2人じゃ)」


 そんな事を考えながら料理に舌鼓していると、彼女の手の甲に何か付いているのが見えた。


 「夢美、それ……」


 指を指すと、夢美は反射的に手を隠す様な仕草をとる。


 「これ……ね、1週間前に弘毅と食べに行った後に、コレが出てきたの」


 「……実は、俺も」


 そう言ってその場で服を脱ごうとすると、夢美は慌てた声を出す。


 「ちょ、ちょっと弘毅!や、やめてよ!いきなり脱ぐなんて!!」


 「ご、ごめん!でも見て欲しいんだ、夢美と同じで俺にもソレが付いてたんだ!」


 「え?」


 その言葉に弘毅は上半身の服を脱ぎ、背中を見せると、夢美は席を立って近づき、近くで観察してきた。


 「本当だ、ウロコ……みたいなのはないけど、此処に六角形の跡がある」


 「無理やり剥がしたらそうなったんだけど、なんかそこ、変なんだよ」


 「変?」


 「触ると、まだ皮膚の中に何かあるような感じがして……」


 「……本当だ」


 その部分を触りながら夢美は答える。

 

 服を戻して再び席につき、料理を食べていると、夢美がこんな事を切り出して来た。

 

 「私、明日皮膚科に受診する予定なんだけど、弘毅も一緒に来る?」


 「皮膚科?んー、俺は取れたし、跡は残ったけど大した問題じゃないから遠慮しとくよ、ありがとう」


 「そう……何かあったら連絡するね」


 「わかった。いつでも連絡が取れる様に携帯は肌身離さずもっておくよ」


 そう言って夢美を安心させる。

 思えば、この夢美の提案を素直に乗っていれば、あんな事になる事はなかったかもしれないと後悔している事に気づくのは、未来の話だが。




 「弘毅社長!今日飯食いに行かないか?」


 「飯?津賀(つが)、お前今月は大丈夫なのかよ?」


 コイツは別会社で働いていた時の友人。

 企業する事を伝えたら快く付いてきてくれた、それ以降本来なら主従関係を保たなければならないが、津賀とはタメで話している。


 「それはこっちの台詞だろ?未来の嫁さんは大丈夫なのか?」


 「これぐらいの付き合いじゃ怒ったりはしないよ、最も、早く連絡しないと飯を多く作り過ぎたってしかられるけどな」


 そう言って片手で携帯を操作して、夢美に今日は同僚と夕食をとってくるからご飯は大丈夫とだけ入れておく。

 

 「そろそろ退勤だし、準備だけしとこうぜ~」


 「OKOK」


 そう言って会社のタイムカードを押し、津賀に連れて来られた店は、以前夢美と外食したあのレストランだった。


 「此処って……」


 「クチコミもすげーんだよ、料理長が作るスペシャリテも最高でレビューじゃもう☆5に届く勢いなんだぜ?」


 「それは……確かに凄いな」


 それは仕事に行く前に一度確認した事があるから知っていた、だがどう言う偶然か――


 「(またあの料理を食える!)」


 弘毅の頭の中では期待が膨らんでいた。

 コース料理を頼み、前菜を食べつつ、まだかまだかっと待ちわびていると“あの魚料理”がサーブされた。


 「おぉー!コレが例の」


 「……ゴクン」

 

 思わず喉が鳴ってしまう程、口の中は唾液でとんでもない事になっている。

 早くコイツは口にして、至高の領域に達したい、そんな思いで握るナイフとフォークに力が入る。

 そしてようやくその瞬間が訪れた。


 「ちょい待ち!写メーー」


 「ゴクン!」


 「お、おい!」


 「う、美味い、やっぱりコレだ、コレしかないんだ!」


 「な、何言ってるんだよお前……つうか、写メ撮る前に食うなよ……」


 「自分のがあるだろ?」


 「いや、俺は――」


 「要らないならくれ」


 「はぁ?」

 

 「金なら払う!頼むよ、もう俺の魚、こんだけしかないんだ」


 そう言って見せた魚の料理は既にほとんど無くなっていた。

 その光景に思わず引いてしまう津賀を置いていき、サーブされている料理に手を伸ばす。


 「お、おい!」


 「す、すまん!でも、美味くて、すまん!」


 「大丈夫かよ……飯はまた注文すれば良いだけの話――」


 「追加か!?俺も注文する!」


 「子供かいな、弘毅社長は料理の前では幼児に退化するんですね~」


 「みたいだな、自分でも驚きだよ」


 「いや、純粋に驚いているのはコッチなんだが……」


 そうして友人との素敵な時間を過ごした。

 夢美の反応から二度と来れないと思っていた場所だが、こう言う社会での関係で外食先の指定を此処にすれば何度でも魚料理を味わえるじゃないかと思った。


 そして――それ以降は、津賀と共に外食に行ったり、会社での業務委託の話であの店で経費を落とすために利用したりと、兎に角、あの魚料理無しでは生きられなくなった。

 そんな変化に最初に気づいたのは夢美、そして次の津賀、だんだんと食べる同行者が変わっていたが、目的のモノさえ食せれば何も問題ない。


 だが突然、その時はやってきた。


 「もういい加減にして!」


 過去、一度も本気で怒鳴った事のない夢美が初めて弘毅に対して叱責をしたのだ。


 「な、なんだよ、何か悪い事でも――」


 「外食外食って、どれだけお金を使い込めば済むの!?」


 「あれは仕事の打ち合わせだし、経費だってしっかり会社から落としてるから大丈夫だって!津賀とも、小遣いの範囲内の付き合いで留めて――」


 「違う!弘毅何も気づいてないの?」


 「何を?」


 「やっぱり、私、弘毅の誕生日の次の日に皮膚科に行って、取り除いてもらったの!」


 そうして包帯を巻いた手を見せて来た。


 「や、火傷でも?」


 「違う!」


 怒鳴り散らしながら包帯を解くと、そこには痛々しい火傷の様な跡が残っていた。

 注目すべき点は六角形の跡になっている場所から枝の様に別れた皮膚の火傷の跡だ。

 

 「あの料理を食べた後に出たウロコの様なもの、皮膚の内部まで侵入して張り付いてた、先生も分からない病気だって!」


 「そ、そんな大げさ――」


 「コレ!」


 携帯を突き出されみると、そこにはウロコ塗れの背中が映りだされていた。

 まるでトカゲの様なウロコで誰のだっと言う前に、誰のか分かってしまった。


 「……コレ、お、れ……か?」


 「……シャンプー無くなった時にこっそり撮ったの、あの店の料理を食べて弘毅の背中、もうこんなに変貌してる」


 「……悪戯だろ?加工とか」


 「……私、こんな事で嘘つかない」


 「分かった!夢美も本当は――」


 「いい加減にして!」


 その一喝で室内に静寂が走る。

 だが同時に怒りも沸々と湧き出てくる。

 何故此処まで制限されなくてはならないのか?

 何の病でもないただ背中が“変貌”しただけではないか?

 それの何がいけないのか?


 元より――何故この女に指図されなければならないのか?


 「弘毅、病院に――」


 「もう良い」


 「え?」

 

 「たくさんだ、夢美は俺の好きな物まで奪う女だったんだな!」


 「ちょ!何を怒って――」


 「別に背中にウロコが付いた?だからなんだ?あの店の料理を食うか食わないかは俺の自由だ!夢美にそこまで制限されるつもりはない!!」


 突き放す様に言ってからしまったと気づく。

 自分でも何でそんな事を言ってしまったのか、正直な所分からない、分からないのだ。

 ただあの場所に行くなと間接的に言われた様な気がして、突如怒りが滲みだしてしまった。


 「ご、ごめ――」


 「好きにして、私は――弘毅の面倒係じゃないから」


 そう言って家を後にする夢美。

 追おうとも考えたが、足が重たく、その場から動けなかった。

 いや、意図して動かなかったのかもしれない。


 「これで――自由だ」


 それ以降は毎日の様に、レストランで夕食をとり帰宅する日課。

 気づけば夢美の私物は徐々に姿を消していき、弘毅の荷物と家具だけの家となり果てていた。

 何か文章の様な紙もあったが、どうせくだらない内容だと一見してゴミにした。


 「しゃ、ちょう」


 「あ?ドウかしタ?」


 「い、いえ、なんも」


 何か言葉が話辛い、手洗いに行き鏡を見るとそこには――ウロコで張り付いた男が立っていた。

 

 「なンだ、別にドコモ可笑しクないじゃナいカ」


 今日もまた店に行きあの料理を食べる。

 周囲の人間も同じ様にウロコが生えている、店主も、此処に居る店の全員――仲間だ。




 「で?交際相手の弘毅さんは姿をくらました……と?」


 「はい、連絡先もあって何度連絡しても電話にはでないし、合鍵で部屋に入っても居ないんです」


 「こう――いえ、社長、自分の姿もそうですけど、喋り方も不気味で……それ以前に」


 「「臭いんです」」


 津賀と夢美の証言は一致していた。

 突如消えた弘毅の行方に警察が出動したが、糸口さえ見つからない。

 それ以前に弘毅からは磯野香りが満ちていた、あのウロコから発せられている事は明白だったが、それ以上は分からなかった。

 

 弘毅が利用している店に行き料理を注文すると相変わらずの魚料理は出されており、警察の手も加わったが、特におかしな点は見つからなかったと言う。


 「夢美さん……」


 「……古い文献の言い伝えなんだけど、こんな事が書いてあったの」


 「――呪いに犯された肌はウロコに覆われ、人魚の様に人語を介す事無く、やがて人ではない怪物へと変貌する――」


 「……ありえないと思ったよね?」


 「ええ、だって、此処にいる客、そしたら全員」


 「お待たせしました、当店自慢の魚料理です」


 「「!?」」


 同時に驚き硬直してしまう。

 そんな夢美たちの様子を気にする事なく、笑顔でその場を去って行く店員。

 それを見送り、出された料理は以前食べた味を彷彿させてしまう程、感情的に食してしまくなる程、美味しそうに見える。


 「……帰りましょう」


 「……え?」


 「自分は食べてないので、幸いにも――でもなんか、この肉……あの話を見たからってのもあると思うんですけど、魚って言うより――」


 ――誰かの肉に見えるんです――



 第十六怪 人魚の料理

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