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噺家 猫家ミケ右衛門  作者: 双鶴


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5/8

猫の手も借りたい

えー、こりゃまた、今宵もようこそお運びいただきまして、ありがとにゃんございます。今夜は魚の匂いが強うございますな。え?気のせい?いやいや、猫の鼻は嘘をつきませんにゃ。


さてさて、今夜の噺は「猫の手も借りたい」ときたもんだ。


舞台は、町内の魚屋「魚政」。この魚屋、朝から晩まで大繁盛。鯖に鰯に鰹に鮭、魚の名前を言うだけで口が動くってもんです。けれども、店主の政吉さん、ひとりで切り盛りしてるもんだから、てんてこ舞い。


「猫の手でも借りたいよ…」と、ぽつりと呟いたのが運の尽き。


その言葉を聞きつけたのが、長屋のクロ之助。すぐさま店先に現れて、こう言いました。


「猫の手、ありますにゃ。しかも、爪付きでございますにゃ」


政吉さん、最初は冗談だと思ったんですが、クロ之助の目が真剣だったもんで、試しに“雇って”みることにした。


さて、クロ之助の仕事ぶりが見事だった。


まず、魚の並べ方が芸術的。鯖を斜めに、鰯を扇状に、鮭は“富士山型”に配置。客が「おおっ」と声を上げるほど。


次に、接客。猫なのに、ちゃんと挨拶する。


「いらっしゃいませにゃ。鰹、今が旬ですにゃ」


子どもたちは大喜び。猫目当てに魚屋に通うようになった。


そして何より、クロ之助の“目利き”がすごかった。


「この鯖、脂が乗ってるにゃ。こっちは昨日の残りにゃ」


政吉さん、驚いて言いました。「お前、魚屋の息子か?」


「いえ、魚屋の屋根の住人ですにゃ」


そんなある日、政吉さんが体調を崩して寝込んでしまった。店は閉めるしかないかと思ったそのとき、クロ之助が仲間の猫たちを集めて、こう言った。


「今こそ“猫の手”総動員にゃ!」


チビ右衛門はレジ係、タマ婆は帳簿係、三毛のミケ子は呼び込み担当。


「鰯が跳ねてるにゃ〜!鮭が笑ってるにゃ〜!」


町内は騒然。猫たちが魚屋を切り盛りしてるってんで、見物客まで押し寄せた。


政吉さんが回復して店に戻ると、売上は過去最高。しかも、猫たちはちゃんと帳簿をつけていた。


「猫ってのは、手だけじゃなく、心も貸してくれるもんだにゃ」


──てなわけで、今夜の噺はここまで。お後がよろしいようで。


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