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噺家 猫家ミケ右衛門  作者: 双鶴


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3/8

金魚屋の陰謀

えー、こりゃまた、今宵もようこそお運びいただきまして、ありがとにゃんございます。夏の夜風に乗って、どこからか金魚の匂いが漂ってまいります。え?金魚に匂いなんてあるのかって?そりゃあ、猫にはわかるんですにゃ。


さてさて、今夜の噺は「金魚屋の陰謀」ときたもんだ。


舞台は、町内の夏祭り。提灯が揺れて、太鼓が鳴って、子どもたちが走り回る中、ひときわ賑わっていたのが、金魚すくいの屋台。赤いの、黒いの、尾びれがひらひらしたの、まるで水の中の踊り子たち。


この屋台の裏手に、猫たちが集まっておりました。顔ぶれは、長屋のクロ之助、寺のタマ婆、そして若い三毛のチビ右衛門。そう、わたくしの弟子でございます。


「兄さん、あの金魚、うまそうですにゃあ…」


「バカ言うな。あれは“すくう”もんであって、“すする”もんじゃない」


「でも、あの屋台の親父、去年は猫に熱湯ぶっかけたって噂ですよ」


「……それは許せんにゃ」


そこでクロ之助、ひとつ策を練った。


「よし、今年は“合法的”に金魚をいただく。名付けて“猫式すくい”作戦じゃ!」


まず、チビ右衛門が子どもに化けて、屋台に近づく。もちろん、猫が人間に化けるなんて無理な話ですが、浴衣の袖に潜り込んで、子どもに“指導”するという寸法。


「もっと右にゃ、そうそう、その赤いやつにゃ!」


子どもは不思議と上手にすくえる。屋台の親父は「おお、名人だ!」と感心して、金魚を三匹もおまけしてくれた。


次に、タマ婆が登場。屋台の裏で、金魚の水槽に向かって、なにやら呪文を唱える。


「にゃむにゃむ、ひらひら、泳げども、眠れ〜」


するとどうでしょう、水槽の金魚たちが、ふわりふわりと眠たそうに漂い始めた。


「今にゃ!」


クロ之助が素早く、網も使わずに一匹、口で“すくった”。


──が、そこへ屋台の親父が戻ってきた。


「こら!また猫か!去年の仕返しか!」


ところがクロ之助、落ち着いたもんです。


「違いますにゃ。これは“恩返し”ですにゃ」


「恩返し?」


「去年、熱湯をかけられた猫の仲間が、今年は金魚を冷やして差し上げようと…」


「……お前、うまいこと言いやがって」


結局、親父は苦笑いして、金魚を一匹くれた。猫たちはそれを池に放して、こう言いました。


「命は、すくうもんであって、すするもんじゃないにゃ」


──てなわけで、今夜の噺はここまで。お後がよろしいようで。


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