表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/25

9.夜会準備(Y)

「夜会?」

「ああ、ジャスミン嬢には既に手紙を送ってある」

「何してくれてるんですか、父上」

「隊長にもその旨は連絡済みだ」


……道理で休みを入れられていたはずだ。


「そろそろ婚約者のお披露目をしないと可哀想じゃないか」

「ですが!」

「ドレスを贈ると書いておいたからな。今日、店の者を呼んである。お前が決めなさい」

「私が!?」

「パパ、たちゅけて~!っと言えたら手伝ってもいいぞ」

「………………母上に頼みます」


母上に聞きたい。こんな父の何がいいのかを!





「うふふっ、まさかユリシーズのお嫁さんのドレス選びが出来るとは思わなかったわ~」

「……嫁ではなく婚約者です」

「どんなドレスがいい?何が似合いそうかしら」


似合いそうなもの……


「あまり濃い色では無く」

「うんうん」

「柔らかいイメージで」

「あら、いいわね」

「でもそうですね。少しだけ大人っぽく出来たら喜びそうです」

「んふっ!」

「…………何かの発作ですか」

「これはトキメキよ、キュンキュンするわ!」


いい年して何を……


「…痛いです」


何故か(つね)られた。


「失礼なことを考えたでしょう!」

「………黙秘します」

「もう、可愛くないわね。で?胸が開いているのと背中が開いているの、どっちがいいかしら」

「なぜ二択?どちらも開いていないは?」

「無いわ。詰め襟でも着させるつもり?」


どっち……


「さり気ない方で」

「ん~、では背中が開いているのにしましょう。髪をアップにしなければそんなに目立たないもの。さり気なく色っぽいくらいがいいわ」


あの小娘に色気なぞあるのか?


「あ、これ!これはどう?」


それはフワリと柔らかな生地のドレスで、ウエスト部から裾に向けて色が淡くなり、まるで穏やかな海の波が幾重にも折り重なっているみたいだ。

ホルターネックになっているため、胸元はしっかり隠れ、その代わりに背中が……


「背中が開き過ぎでは?」


美しいドレスだとは思うが、これは如何なものか。いやらしい意味が込められていると思われるのは心外だ。


「このくらい普通よ。アクセサリーは何がいいかしら」

「……まだ若いのであまりゴテゴテしていない物がいいです」

「そう?それなら宝石ではなく、真珠の方がいいかしら。そうね、これとか?」


それは、繊細なプラチナのチェーンと真珠の清楚なデザインだ。

セットのイヤリングはプラチナと、こちらはベビーパールが数粒あしらわれていて、ドレスと合わせると波の雫のようで可愛らしい。


「悪くないですね……、あ。あとこれも」

「あら可愛い。ドレスにも合うわね。コサージュとして服に付けてもいいし、髪に飾っても素敵」


それは白に近いくらいに淡い、薄紅の花飾り。


「貴方の中での彼女は、随分と繊細で可愛らしいのね」


繊細で可愛らしい?……あれが?


「私の中のイメージはイタズラ大好きの小型犬ですが」

「……このドレスは?」

「それくらい繊細な物にしておけば、やんちゃなことはしないかなと」

「酷い男!こんなにも素敵なドレスが実は拘束服なの!?」

「泥棒猫と言われたくて令嬢達を煽ったお馬鹿娘ですから」

「…………そう。確かに必要かも」

「でしょう?」


まあ、繊細なのは嘘ではないとも思う。


あの小娘は単なる箱入りなだけだ。泥棒猫ちゃん事件でも、実際にはプルプル震えていたし。


「次はもっと正確な事前相談をするように要求しておきます」


訓練を見に行くとしか伝えてこなかったのは減点だ。そこからあの行動を予測できるはずが無いだろうに。


「んふ、んふふふふふっ」

「……何ですか」

「貴方に報告したらやっていいの?()めろとは言わないのね」

「知りたいことを()める権利は誰にも無いでしょう。それに、危険が無いように見守るのは大人の義務だ」

「そうね、貴方が見張っていればいいのよね?」


……うん?何かおかしいような気も……


「よし!次は貴方の衣装よ!」

「黒か紺でいいです」

「何を言ってるの」

「面倒だから任せますよ」

「フリフリのブラウスにするわよ?」

「止めてください!」


この人はやる。本当にやるんだよ!

入団式にフリルだらけのブラウスを用意した人だからなっ!


「自分で選びます」

「そうなさい。あ、貴方、もちろんダンスは踊れるわよね?」

「……は?」


ダンスだと?






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
えぇ、お父さんとお母さんや…(´-`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ