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幸せな政略結婚のススメ  作者: ましろ


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8.公開訓練日(J)

「公開訓練日?」

「やっぱり知らなかったのね」

「初耳ですわ」


騎士団の訓練とは見て楽しいものなのでしょうか?


「何をお目当てで皆様は行かれるのかしら」

「それは貴方の婚約者様でしょう?」


はっ!ではまさか!


「白百合の会の活動が見られるのですか!?」


凄いですっ、それは是非とも見に行かなければ!


「……貴方にとって重要なのはそっちなの?」

「だって、孤高の白百合を保護する団体の活動ですよ?何をやっているのか気になりますよね?」

「いえ、まったく」


グローリア様はクールです。たまには私と同じテンションで楽しんで下さればいいのに。


「それにですよ?もしかしたらあの名言が聞けてしまうかもしれませんわっ」


そうです。泥棒猫ですよ!


「……ねえ。本当にお巫山戯(ふざけ)ばかりしていると、いつか痛い目に遭いますわよ?」

「酷いですわ。私はいつでも真剣ですよ」

「そちらの方が問題ですわねぇ」


……いつもこうして(たしな)められてしまいます。

どうして皆様は知らないままでいられるのかしら。私は毎日多くの『何故』に出会ってしまいますのに。


私が変わり者だから?


こうして仲良くして下さるグローリア様達でさえ、私の好奇心を呆れてしまうのですから、私は相当の変人なのでしょうね。


「……ちゃんとユリシーズ様にはお手紙を出します。許可を貰ってから見に行くならばいいでしょう?」

「そうですわね。ちゃんとお知らせした方が良いと思いますわ」


よかった。正解だったみたい。

だってユリシーズ様が言ったもの。何かを試す前に言うようにって。


私は約束はちゃんと守る子なのですよ!




◇◇◇




訓練場は思っていたよりも随分と立派です。

観覧席は危険防止の為でしょうか。一階分程高い場所にあって全体が見渡せます。


あ、見つけた。


訓練を見るのは初めてですが……凄いです!

あんなにも重たそうな剣を軽々と扱っていますわ。

ユリシーズ様は動きがとっても(しな)やかで速い。

思わず見惚れてしまいました。


ユキヒョウとかってこんな感じかしら。


白百合の会のことなどすっかり忘れ、訓練風景に見入っていると、ユリシーズ様が私に気がついた様です。

隣にいらっしゃる方と何かを話しながら、楽しげに笑っています。

途端に辺りがきゃあきゃあと盛り上がり始めました。

すると、ユリシーズ様は少し面倒臭そうにしながらも私に手を振って下さったのです。


「「「きゃ────っっつ!!」」」


凄い歓声ですわ。あまりの音量に耳がキーンとしましたが、もしかして今がチャンスなのでは?

私は勇気を出して手を振り返しました。


ギンッ!と音がしそうな程に鋭い視線が私に集中して──


……アレ?思ったよりも怖いかも……


舐めておりました、白百合の会の本気を。

ジリジリと包囲網が狭まり、気が付けばぐるりと囲まれております。


「貴方どういうおつもり!?」

「白百合の騎士様は私達皆のモノでしてよ!」

「貧相な泥棒猫ちゃんの出る幕ではないの」


あ、来たよ泥棒猫。まさかのちゃん付けです。

そう思いつつも楽しめる雰囲気ではありません。


ど…、どうしたら……


「何をしている?」


──え、瞬間移動っ!?


そこには、今さっきまで訓練をしていたユリシーズ様が立っていました。

令嬢達はもの凄い速さで逃げて行き、私は何とか助かったようです。

……いえ、助かりましたが、今度はユリシーズ様が大変怒っていらっしゃるみたい。


「あのですね?その、恋人とかを奪われた時に、本当に泥棒猫と言うのかが気になりまして」


嘘が吐けない私は素直に理由をお伝えしました。

それなのに!


「この頭は何が詰まっているんだ?」

「痛い痛い痛いっ!!」


何ということでしょう。ユリシーズ様が片手で私の頭を砕こうとしています!


脳漿(のうしょう)が飛び散ってしまいますっ!」

「リアルに言うなっ!……ん?」


ん?……どうしました?……あの、頭蓋骨を砕こうとした方がなぜ私の頭を撫でているの?


「おおっ、ふわっふわ」


……どうやら私の髪がお気に召したようです。

お陰様で私の頭は守られました。髪の毛とは本当に頭を保護する為にあるのですね。


「ユリシーズ様、訓練の方は大丈夫ですか?」


嬉しそうに私の頭を撫でている場合ではないかもしれません。


「しまった!」


バッ!と下を見ると、訓練中のはずの皆様が何とも言えない笑顔でこちらを見ています。


「すまん!勝手に触ったりして」

「いえ。助けて頂いたお礼ということで」

「……そんな礼は駄目だろう」

「ですかね?」


別に抜かれたり切られたりしたら困るけど、撫でられるくらいなら減るわけでもなし。


「まだ見て行くのか?」

「はい!」

「何も楽しくないだろう」

「いえ?ユリシーズ様はユキヒョウみたいで凄いです」

「……見たことは?」

「ありませんけど、でも絶対に似ていると思いますわ」


仕方がありません。本で得た知識ですもの。


「まあいい。帰る時に声を掛けてくれ」

「はい。訓練頑張って下さい」

「ん」


……え、どこに向かうの?


ユリシーズ様はヒョイッと飛び降りてしまいました。


まさか、さっきもそこから来たのですか!?

凄いです。見たかったわ!!


興奮したのか心臓がドキドキしています。


泥棒猫よりもユキヒョウなユリシーズ様の方がよっぽど衝撃的でした。






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― 新着の感想 ―
あらあら、あらあらあら。 のお母様の気持ちが凄いわかります(^-^)
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