幸せの先取り【Xmasイブイブ小話】
「ユリシーズ様は二十五日までお仕事ですか」
「すまない。どうしても新年の祝賀会と、その後の会談の準備が終わらなくて」
やっぱり王族の皆様は、年末年始は特に大忙しみたいです。
そうなると王太子殿下の側近であるユリシーズ様も忙しくなるわけで、残念ながら聖夜のお祝いはできないみたい。
楽しみにしていなかったと言ったら嘘になってしまうけど。
「いつもお仕事を頑張ってくださりありがとうございます。日にちがずれても大丈夫ですよ! だって、二十六日はお休みなのですよね? それなら、ちゃんといい子で待ってますから。ごちそうに期待していてくださいっ!」
一日二日くらいは誤差というものです。ずっと会えないわけじゃないもの。それくらい我慢できる。
「すまない。……いや、違うな。怒らずに、それどころか感謝の言葉をありがとう。できるだけ早く帰ってこれるようにするから」
遊びや浮気でもないのに怒るはずがないのになあ。
……ん? 浮気?
まさか、ここで殿下との愛が芽生えてしまったり? まあ、破廉恥ですわ。何と言っても聖夜ですのに。んふふっ。
「……おい。なぜ急にニヤニヤしているんだ?」
「いえ! 聖夜の夜に殿下との愛が深まるのかな~なんて考えていませんよ?」
「……ほう? デコピンとアイアンクローとどちらがいい? 聖夜のプレゼントとして選ばせてやろう」
きゃっ、怖いです!
「えっとですね、できれば優しいキスがいいです。
知ってます? 聖夜の星空の下でキスをした恋人達は、永遠に結ばれるのですよ」
「……今日は二十三日の朝だけど?」
「幸せの先取りです!」
「それだと普段のキスも先取りしまくりなんじゃないか? そもそも俺達は恋人じゃなくて、すでに夫婦だろう」
そう言って笑いながらも優しく口づけてくれるのですから、ユリシーズ様はとっても優しい旦那様です。
結婚して一年。まだ子どもはいないけど、幸せな毎日を送っている。
「明日は昼寝しておいてくれ。深夜になるかもしれないが必ず帰って来るから。絶対に、星空の下でキスをしよう」
うきゃっ! 何ていいお声で囁くのですか!
「分かりました。六時間くらい寝ておきます」
「それは昼寝じゃないな? ああ、忘れるところだった。これはプレゼントな」
「わっ、ありがとうございます! 開けてもいい?」
「もちろん」
綺麗に包まれた包装紙を破れないようにゆっくりと開いていく。
プレゼントを開ける、このドキドキする瞬間が大好き。
「まあっ、スノードーム?」
球状のガラスの中には、美しいお城と森が真っ白な雪に彩られ、散りばめられた金粉は、まるで星空のようだ。
「……なんて綺麗なの……」
「ここを回すと……ほら、オルゴールなんだ」
その優しい音色は賛美歌だ。
──まるで聖夜の箱庭みたい。
「とっても素敵です、ありがとうございます!」
「俺が戻って来るまでは、これで我慢していてくれ。じゃあ、行って来る」
「はい、行ってらっしゃいませ!」
もう一度、そっと口付ける。今度は彼の無事を願って。
ユリシーズ様をお見送りしてから部屋に戻る。
オルゴールのネジを回し、美しい音色とともに優しく降り積もる雪を眺める。
「……本当にきれいね」
お仕事なのは少しだけ残念だったけど、今ではすっかりとスノードームに見入ってしまう。
ユリシーズ様は私の好みを熟知していらっしゃるわ。
「明日の夜も、こんなふうに美しい星空が見られるかしら」
早く明日になるといいのに。
そう祈りながら、もう一度オルゴールのネジを回しました。




