こうして、幸せな政略結婚となりました
「きれいだな。よく似合ってる」
オフショルダータイプのウェディングドレスは、スカートが花びらのようなティアードスカートだ。
裾にはいくつもの細かなビジューが縫い付けられていて、粉雪を纏った八重の花みたいでとってもきれいです。
もちろん、ちゃんと手直ししてもらったから、胸元だってキツくない。大丈夫。
「ありがとうございます。ユリシーズ様もとっても素敵。なんだか王子様みたい」
フロックコートタイプのスーツは、白百合の会たっての願いで、純白の生地に銀糸で刺繍が施された白百合の騎士仕様だ。さらに、あれこれと装飾品もつけられ、いっそ王族っぽい。
この衣装を最後に、会を解散することを約束してくれたので、ユリシーズ様も腹を括り、大変麗しい。
それでも最初は豪華バージョンの純白の軍服にマントまで羽織らされそうになったのを、何とか説得してこの程度に収めたのだ。
おかげさまで、その隣の私が多少ひらひらキラキラしていてもまったく問題がない。
「……王子? まったく嬉しくない」
「じゃあ、世界一格好いいです!」
「お。いいな、それ」
「アハハッ!」
冬の結婚式だから雪が心配だったけど、本日はこれでもかと澄み渡る青空が広がり、温かな日差しが差している。
「寒くないか?」
「大丈夫です。ドレスって意外と暖かいんですよ。ベールもあるし」
今日は風もないから、念のため用意していたファーショールも必要なさそうだ。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
ユリシーズ様の手を取る。それだけで緊張が解けていく。
だって、この手は私を絶対に守ってくれると知っているから。
キュッと少しだけ指先に力が込められた。私を安心させてくれる合図だ。
そのことに、ベールの下で笑みを浮かべる。
淡いピンクのラナンキュラスを基調としたブーケを持ち直し、呼吸を整える。
彼がプレゼントしてくれたペーパーウェイトや髪飾りに似ている気がして、この花を選んだ。
ピンクのラナンキュラスの花言葉は『飾らない美しさ』。
彼がそんなことを知っているとは思わないけれど、彼の隣なら、飾らない素直な自分でいられるから。そんなところもぴったりだと思ったのは秘密なの。
二人でゆっくりと入場する。
大勢の参列者が見守ってくれる中、こうして私達のために集まってくれたことに感謝しながら歩みを進めた。
……もう。お父様がすでに泣いている。お兄様も涙目だし、そんな二人のお顔を見たら私まで泣きたくなってしまう。
絶対に号泣して歩けなくなってしまうから、一緒にウェディングアイルを歩くのは勘弁してくれと言っていたのは本当だったみたい。
私もベールがあってよかった。涙よ、引っ込め~! と念じて気合を入れた。
神父様の言葉を聞きながら、ユリシーズ様と思い描いていた未来が、やっと今になったのだと実感する。夢や憧れではなく、自分達で歩いていく現実になるのだ。
「愛することを誓いますか?」
愛する。それは、ただ好きだとか愛しいだけでなく、現実の重みが加わった言葉だ。
「はい、誓います」
今まで、好きだとは言えた。でも、愛しているなんて恥ずかしくて口にできなかったけど、不思議ね。きっと、今なら言える気がする。
「では、誓いの口づけを」
人前でキスをするなんて! と、式の流れを聞いて騒いでいたはずなのに。
私を見つめるユリシーズ様の瞳があまりにきれいで、ああ、この美しい人を一生愛していいのだなと、そっと触れるだけの口づけに、胸が熱くなる。
「幸せになろうな」
優しく告げられた言葉に、とうとう涙が溢れた。
「はい!」
それでも元気に返事をしてしまうと、フハッ! とユリシーズ様が笑った。
さっきまでの美麗な彼も好きだけど、やっぱり私はやんちゃなユリシーズ様が大好きだ。
「キャ─────ッツツ!!!」
凄まじい悲鳴が参列者席から放たれた。
どうやら白百合の会メンバーの我慢の限界だったらしい。
『何⁉ 今の笑顔!』『尊い!』『死ぬ!』『いや、死んだら駄目! もっと今の笑顔を!』と、大騒ぎだ。
しまいには、『ユリちゃん、ジャスミンちゃん、結婚おめでとう!』と、騎士団からの祝福の言葉まで飛び出して、さっきまでの神聖な雰囲気は霧散して、教会の中がお祝いの言葉であふれかえった。
思わずユリシーズ様と目を合わす。
「ハハッ! 酷い結婚式だな」
「うそ、最高です! こんなに祝ってもらえてるんですよ?」
二人で笑いあってもう一度キスをする。
また悲鳴が上がるけど気にしない。
「これからもよろしくお願いします、旦那様!」
「こちらこそよろしく、奥様?」
しまいには参列席は拍手喝采のスタンディングオベーションで、神父様まで笑っていた。
こうして、私達らしくハチャメチャな、でも笑顔いっぱいの結婚式となったのです。




