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幸せな政略結婚のススメ  作者: ましろ


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23/25

23.これからもこうして(Y)

「海だわっ!」


晴れていて良かった。一面に広がる海原に感動しているジャスミンを見ていると、何故かこちらまで頬が緩んでしまう。

彼女といると、今までと同じ景色でも美しく感じるから不思議だ。


「海は初めてか」

「そうなの。だって国から出るのが初めてですものっ!本で読んで知っていたつもりだったけど、本物はこんなにも大きくて美しいのね。

連れて来てくれてありがとうございます、ユリシーズ様っ」

「よかった。きっと喜ぶと思ったんだ」


うちの国は陸地の真ん中だから、国から出ないと海は見られない。ファーロウ行きを勧められた時、絶対にジャスミンを連れて行きたいと思ったんだ。

彼女は宝石なんかよりもこういった自然の美しさを喜んでくれると思ったから。


「でも、良かったんですか?観光なんかに来ちゃって」

「もちろん。仕事も手伝うけど、婚前旅行をプレゼントって言われてるからな」


子爵がよく許したなと思ったが。


「……こんぜん……」


お、真っ赤だ。


「照れてる」

「照れますよっ」

「大丈夫。手は出さないから」

「……出さないの?」


この小娘は……


「出さないよ。あと少しの我慢だ。子爵の信頼を失うような真似はしたくないし、ジャスミンが何の憂いも無く嫁いで来れるようにしたいからな」


だから俺の理性を試さないように!


「ふふっ、私は愛されてますね」

「メチャクチャ大切に思ってますよ」

「嬉しいなぁ」


……こら。そんなに腕にしがみつくと柔らかなのが完全に当たってるぞ。大変嬉しいが……うん、ありがたく享受しておこう。


「さて、少し歩くか。向こうの方に屋台が出てるんだ。貝は食べれるか?」

「もちろん!」

「じゃあ、行こう」


二人で手を繋いでのんびりと歩く。


「ユリシーズ様は来たことがあるのですね」

「ああ、前も殿下の護衛でな。妃殿下もいらしたから更に護衛も多くてもっと物々しい雰囲気だった。だからいつかプライベートで来たかったんだ」

「王族の方達は大変ですね」

「そうだな、どうしても不自由が当たり前になってしまうんだ。だからせめて少しでも負担を減らすことが出来たらと……って違うから。薔薇じゃないからな!」

「そんなこと言ってないのに」

「……目がキラキラしてたぞ」

「あら?」


くそっ、薔薇疑惑が中々消えない。結婚したら覚えていろよ。騎士の体力を思い知らせてやるぞ、コラ。

……ダメだな。ジャスミンの中身が気に入っているはずなのに、一度好きだと思うとそれだけでは足りなくなる。見るだけじゃなくて、触れたいと思う。抱きたいと思ってしまう。

業腹だが、俺を襲った痴女共の気持ちがほんのひと粒くらいは理解出来て……いや、やっぱり無理。アレは違うな。

抱きたいと思ってもジャスミンの意志が伴わなければ意味が無い。そんな自慰の様な関係なんか欲しくは無い。


「ジャスミン」

「はい?」

「しっかり食べて、運動もして、体力をつけてくれ」

「……なんで?」

「俺が美味しく食べられるように?」

「~~っえっち!」


ああ、可愛い。とりあえず、抱きしめて我慢しよう。


「ん」


両手を広げて見つめれば、迂闊な子犬は直ぐに懐に飛び込んで来るから困り者だ。


「これからもこうして旅行しよう」

「嬉しいです。いつかオーロラが見てみたいわ!」

「おー、いいな」


ジャスミンとこれからもこうして楽しく生きて行きたい。


「だが、これからは今までのようにはいかないことも出てくるかもしれない」

「どういう意味ですか?」

「俺は王太子殿下を支えると決めた。それは、簡単なことではない」

「…はい」

「俺は君を守りたい。だからその為の地位を手に入れた。だがそれは今とは違う意味での不自由さもどうしても出てくると思う。

俺のことならばすべて君に話せるが、仕事上見聞きしたことはどうしても話せない場合がある。それは近衛騎士だった時よりも確実に増えるだろう。

私欲での嘘では無く、国の為に秘密を作ってしまうことを許して欲しいんだ」


今は国が安定しているから、そのような事態になることは無いだろう。だが、100%の平和など有り得ない。

後ろ暗い情報の1つや2つ必ず出てくるだろう。それが彼女を傷付ける危険性があれば俺は絶対に秘密にする。


「私は嘘は嫌いです」

「ああ」

「だから、言えないなら言えないと教えて下さいね?そうしたらそれを信じます。もしも何か事件が起きて帰れなくなるなら、待っててくれってちゃんと教えて?そうしたらいい子で待つから」


……ジャスミンの言葉にホッとした。どうやら少し緊張していたようだ。


「ありがとう。だが、無理はしないでくれ。不安になったらそう言って欲しい」

「私はお口が素直なので、すぐにペロリと白状しちゃいますよ。知っているでしょう?」

「…そうだな。君はいつも私に正直でいてくれる」

「だってユリシーズ様が私に誠実でいて下さるから。だから信じられるんです」


そうだろうか?そんな大層なものではないと思うが。


「ただ、君が好きで、大切なだけだ」






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