4 橙色の食卓
テーブルは6人掛けだったが、詰めて7人で掛け、中央にはランプを置いていた。
7人の顔や服も仄かに橙色がかかり、温かな色合いに見えた。壁も薄っすらと橙色に染まり、7人それぞれの影が、揺らいでいた。
夕食は、ハーフラビットのソテーと、ジャガイモと玉ねぎ、にんじん、ハーフラビットの肉を煮込んだプ―プ、それとベグルというこの世界の一般的なパンだった。
ベグルは、バターや牛乳、卵を使わずに生地をリング状にして茹でてから焼くパンで、元の世界のベーグルに似ていた。
「今日、僕は、ジロジ山脈にあるキリセクレ山に白いドーナツのような雲がかかっているのを見たんだ。カミュー様の輪かもしれない」
とペーターが言うと、バイカルがペーターを見て目じりを下げる。
「それは縁起が良いな。今年は12年に1度のお干支祭だからな。ペーターもエマも初めてだろう」
「うん、とても楽しみ。カミュー様の姿をした山車を早く見たい」
「エマも、カミュー様の飾りつけと、お歌を歌うんだ」
「エマは、ミュー様の童歌をお干支祭で歌えるのが、楽しみでしょうがないみたいね」
ミリアが、エマに笑顔を振り向けた。
「あそこで歌えるのは、幼い子供だけだから、一生に1度あるかないかの大舞台じゃな」
ガリムが、目を細くしてエマを見て言った。
エマは、首を傾げて笑顔でガリムの話を聞いている。
ダイチは、微笑ましい会話にうんうんと頷いていた。アイも優しい眼差しを、子どもたちに投げかけていた。
食事は、どれも温かく美味しかった。特にハーフラビットのソテーは、脂身がほとんどない赤身で、程よい歯ごたえもあった。臭みも感じられずメイン料理に相応しい味で、ダイチは感激していた。
ピーターもエマも、美味しいと繰り返した。
アイは、皆の皿に、ハーフラビットのプ―プのお代わりをよそっている。
橙色の温かな光の陰影は、顔のほりを際立たせ、美味しそうに食べる子供たちを見るバイカルやミリアの笑みを、いっそう幸せそうに演出していた。
ダイチは、この世界に来て初めての安全、安心を感じた。自分の心が、穏やかで温かくなり、この家族の団らんの輪の中にいると実感していた。
「心が癒されている」、そんな思いが湧き上がっていた。
食事が済むと、バイカルとガリム、ダイチ、アイの4人でテーブルを囲み、サトウキビから作られたラームという酒を飲んでいた。
この地方では、ラームと、ジャガイモと穀物を発酵させてから蒸留したジラク、葡萄を発酵させたワイインという酒が一般的らしい。
ミリアさんと子供たちは、脇に置いた大きな樽をテーブル替わりにして、ブドウを絞ったジュースを飲んでいた。絶え間なく笑い声の響く、心温まる一時であった。
鍛冶職人のバイカルは、アイの腰にある剣を見つめている。
「アイ、良かったら、その腰の剣を俺に見せてもらえないか」
「はい」
アイは、バイカルに剣を鞘ごと渡した。
バイカルは鞘から剣を抜くと、剣身を舐めるように見ている。その眼は、先ほどのペーターの話を聞いていた時のものとは違い、鋭く厳しい、鍛冶職人の眼差しであった。
アイは、バイカルの眼力に、気圧され額から汗が滴り落ちていた。
バイカルは、剣を鞘に納めると、アイに礼を言って返した。
「・・・ミスリル製の逸品だ。さぞ名のある刀工が鍛えたものだろう。しかも、かなり使い込まれている。アイ、この剣をどこで?」
「・・・私は、記憶を失くしているので、分からないのです。ダイチ様に助けられた時には、腰に帯びていました」
「そうであった。すまない・・・では、アイの掌を見せてもらっても良いか?」
「私の手ですか?」
アイは、掌をバイカルに向けた。
バイカルは、アイの左右の掌に目を移した。
「・・・アイ、ありがとう。もう、良い」
「私の掌に何かありましたか」
「いや、・・・時間が解決する」
と、バイカルは、杯をぐっとあおった。
バイカルは、ガリムに顔を向け、話題を変える。
「ところでガリム、あれだけの龍神赤石があるということは、ジロジ伝説通りだな」
「バイカル親方、ありゃー、伝説ではない。俺たちの様に昔から森や山で炭を焼いたり、石を掘ったりしている山の民は、子どもの時から、その話を聞かされちょる」
ダイチは、伝説という言葉に興味をそそられて尋ねる。
「ジロジ伝説って何ですか」
ガリムは、杯を傾けながら語った。
「ジロジ伝説ってのはな、このドリアド地方には、作物に豊かな実りを与えてくださるカミュー様がおられて、我ら民は皆、感謝の祈りを捧げておる。
カミュー様は、ジロジ山脈にある洞窟に住んでおられる。その洞穴の中には、滝と泉、池、川がある。泉の水は川となって森を流れ、その川はカミュー様の通り道になるそうじゃ。その通り道には、黒曜石や極稀に龍神赤石が取れるという事じゃ。この地方の童歌にもあるぞい」
「ほう、俺が辿り着いたあの川は、カミュー様の通り道だったという事か」
ダイチは、杯をぐいっと空けた。あの川底に巨大な頭蓋骨があった事を思い出し、カミュー様と関係があるのか、聞いていてみようと思ったところに、
「お、いける口だな。もっと飲め。ぐっといけ」
バイカルは、テーブルの上に置かれたミニ樽から、ダイチの杯にラームを注ぎながら尋ねた。
「ダイチ、そういえば、草原で多数の魔物と人間たちの戦いを見たって言っていたが、どんな特徴の魔物だったのだ」
「緑色の体にヒョウ柄の鎧を着て、手には斧を持っていました」
その答えを聞くと、バイカルの動きが止まった。
「何、それはオークだ。オークの数と戦っていた人間について話してくれ」
「オークは400匹位いで、後から小隊が次々と参戦して来ました。人間は全身に銀色の鎧を着ていて、輝いていました。400人位いたと思います」
バイカルは、バンとテーブルを右手で叩いて立ち上がった。ミリアもピーターもエマもアイも俺も、ビクッと体を固めてバイカルを見た。
「なんだとー! しくじった。オークめ、本格的に攻めて来やがった」
「そりゃ、ローデン王国軍とオーク軍との戦闘に違いねえ」
ガリムも顔を上げ、目をダイチに向けた。ガリムの杯を握る手に力が入っていた。
「俺は、ダイチとアイを連れてここに戻る森の中で、数匹の獣人と思われる足跡を見た。暫く観察したが、あれはここ1日、2日の足跡だった。まさかとは思ったが、辻褄があった。あれは、オークの足跡だ」
ダイチは森の中でバイカルが顎に手を当てて、足跡を暫く見つめていた事を思い出していた。
「オークは、人間ほど協調性に富んでいない。ほとんど血縁の4、5匹の小部隊で活動する事が多い。
足跡は森の端に近く、ここら1時間程だ。オークの小部隊が迫っている可能性がある。この炭焼き小屋は放棄する。
出発は明日の早朝、日の出と共にだ」
「ダイチが見た戦闘でオーク軍が勝ってりゃ、ここにもオーク軍が攻めて来るかもしれねぇ、負けても落ち武者となってここに来る事も十分考えらるしなぁ。4、5匹の小部隊でのゲリラ戦もあるかもしれねぇ」
そう言うと、ガリムは小屋の方へ急いで向かった。
「ミリアは最低限の荷物だけをまとめろ。食料は4日分。それから、ポーションと毒消し薬だ。子供たちは外に出るな」
ミリアは黙って頷くと、不安そうな目で覗き込む2人の子供たちの背中を抱きかかえた。
「大丈夫よ。父さんがいるわ」
と、2人の子供の達の瞳を交互に見ながら微笑んだ。
「お父さんがいるから、大丈夫だよ」
「おとうさん、大丈夫よね」
「勿論だ。俺が守る」
と、2人の子供たちと妻の背中を抱きかかえた。子どもたちはバイカルの大きな背中に手を回し、服をぎゅっと握っていた。
バイカルは立ち上がると、壁に掛けてある大剣を背負った。腰にはソードを鞘付きのベルトごと装着した。ミリアは荷物を整理し始めた。
夜のうちに出発しなかったのは、闇夜の移動では思わぬ遭遇の危険がある。家族を連れている以上は、遭遇戦を避けるべきだと判断したためだ。
バイカルとガリムは、母屋の戸口から右側10m程先に置いてある馬車の荷車から、荷を軽くするために、炭の束を降ろしていた。
ダイチは、バイカルたちには話しても良いかなと判断して、
「アイテムケンテイナーを持っているので、それに木炭を入れておきましょう」
と、伝えた。バイカルは驚いたような表情をしたが、黙って頷いて、炭束を3人で格納していった。まだ炭焼き小屋に置いてあった木炭まで全部収納できた。
「結構入りましたね」
と、ダイチが言うと、
「ルームサイズは、初めて見た」
「儂もじゃ」
と、この量が入ることにバイカルとガリムも驚いていた。
母屋の中では、ミリアさんが最低限の荷物をまとめ上げていた。
炭焼き小屋の戸締りが終わり、バイカルとガリムは母屋に戻ってきた。
「高い知性を持ったオークには、神龍赤石の効果はあまり期待できねえからなぁ。来たら戦うしかねぇ」
ガリムは壁に掛けてある武器から槍を選んだ。バイカルは腰に帯びていた鞘付きのベルトを外し、ソードごとダイチに渡した。
ダイチとアイの目を見ながら低く囁くように、
「俺やガリムに何かあった場合には家族を頼む」
ダイチは頷いた。
ダイチの受け取ったソードは、バイカルが鍛造した魔物も両断できる逸品だった。
夫の覚悟を悟り、ミリアも壁からショードソードを掴むと、バイカルを見つめ頷いた。
ダイチは、バイカルの背を視線で追いながら、「今夜、この小屋を攻めてくる可能性は低いかもしれないが、夜襲を受けた場合の被害は甚大となる。常に命の危険に晒されながら、厳しい現実を生き抜いている彼らは、最悪の結果を想定した素早い決断を繰り返してきたのだろう。この過酷な世界で家族を守るということは、このような判断と備えの積み重ねの結果なのだろう」と、そのリスクマネジメントに感嘆していた。
ミリアとピーター、エマは、ロフトへ上がった。ミリアは、細い指で鞘のついたショートソードを握り、ピーターとエマは、龍神赤石を両手で握っていた。
バイカルは、大剣を片手で押え、腰にはショートソードを履き、部屋の戸口の前にテーブルを倒し、樽を置いて作ったバリケードの後ろに座った。
ガリムは、窓の木枠に板と家具を置いてバリケードを作り、壁にもたれ掛かっていた。
アイは、ミリアたちを守る様に、ロフトの下に椅子を置き腰かけていた。
ダイチは、ソードを腰に差し、中央に置いた椅子に腰かけていた。
配置についた後に、ダイチはローデン王国とオーク蛮国について尋ねた。バイカルの話では、この10年はオーク軍の侵攻はなかったと言う。不可侵条約を結んでいたからだ。
オーク領からローデン王国に侵攻する場合には、互いの国を分かつジロジ山脈があるために、2つのルートに限定されるそうだ。
1つは、オーク領からジロジ山脈を越える最短ルートだ。この場合には、ジロジ山脈のハーミゼ高原を越えることになる。ハーミゼ高原はジロジ山脈の峠であり、そこを抜ければ真西への侵攻となり終着点は首都ガイゼルだ。ダイチが目撃した戦闘はまさにこのハーミゼ高原だった。
2つ目のルートは、ジロジ山脈越えを避け、南に迂回してから北西に侵攻していく迂回ルートである。
最短ルートは、首都ガイゼルに侵攻しやすいのがメリットとなるが、山脈を越えなければならないため、大軍での侵攻は事実上不可能だ。また当然、ローゼン王国は、監視所や砦を数か所に築いている。
迂回ルートは、比較的平坦なルートとなるため、大軍での侵攻に適していることがメリットとなる。ただし、このルートは、山脈の南にローゼン王国の軍事城塞都市ゼンベが控え、守りを固めている。また、4年前にローゼン王国と隣国ザーカード帝国は友好条約を締結しているため、迂回ルートでオーク軍がローゼン王国を侵攻した場合には、東からザーカード帝国がオーク軍の背後を脅かすことになるということだ。
バイカルは静かに、
「俺が見張りをする。他は寝ろ」
「年寄りに睡眠不足は堪えるが、夜の見張りは交換じゃ。バイカルの次は儂じゃ」
「俺も見張りをします」
「わ、私も・・」
アイは震える声を振り絞って言った。
「感謝する。俺、ガリム、ダイチと一緒にアイの順でお願いする」
窓の塞がれた母屋には、月明かりもなく、床に置かれたランプの橙色をした細い火だけが揺れていた。
夜は静かに更けていった。
ミリアにしがみ付くようにエマが寝ていた。その脇でペーターがスースーと寝息を立てていた。
カタッと、風で戸が微かに音を立てる度にダイチはビクッとして身構え、ミリアはエマを抱きかかえる手にギュッと力が入った。アイは、ガタガタと震えていた。バイカルとガリムはピクリとも動かなかった。ただ、開かれたその眼は爛々と光っていた。
ダイチには、これまでで最も長い夜だった。ランプのわずかな光と静寂の中、脳裏には黄色い目を見開き、雄叫 びを上げて大斧を振るうオーク兵の姿が浮かんでは消えていた。
喉が渇き、水を飲みに歩いた。喉に水を流し込むと、カラカラに乾いていた喉に少しの痛みを覚えた。遠くで甲高い鳴き声が響く。夜行性の魔物かとダイチは考えたが、龍神赤石の効果を信じ、今は最大の脅威であるオーク兵に備えた。
ダイチは、うとうととしていたのだろうか。
「交代の時間じゃ」
と、ガリムに肩を叩かれ、目を開けた。アイは、緊張で疲れたのだろうか、椅子に座ったまま寝ていた。
ガリムは元いた場所に戻ると、座ったまま壁に背をあずけた。バイカルは、バリケードで塞がれた戸口の前に座り、大剣を片手で押えたまま動かない。
ダイチには、静寂の中、母屋周辺の景色が浮かんでいた。薄暗い中でじっとしていると、心臓の鼓動が聴こえてきた。
「見張りってこんなにも不安なんだ」
僅かな風音にも耳を澄ませ、不安を募らせた。ただそれだけの時間が過ぎていった。
バイカルは、静かに立ち上がった。4人の視線が集まる。バイカルは大きく息を吐くと、
「朝が近い。外を見てくる」
と、バリケードを解いて、静かに戸を開けた。
群青色の空が薄くなり、東の空が白くなり始めていた。バイカルは大剣を持ち、辺りを見回しながら母屋の回りを1周して来た。
「起きろ。出発の準備だ」
バイカルの声がした。
ミリアは、ピーターとエマを起こした。2人は目をこすりながら、
「おかあさん、おはようございます」
ミリアはにっこりと微笑み、挨拶を返した。3人揃ってロフトから降りて来た。俺とアイ、ガリムにも挨拶をすると手早く身支度をした。
バイカルは、魔物対策に炭焼き小屋の周辺に置いてあった龍神赤石をいくつか拾い、それを戸口の右側にある馬車の荷車の中へ投げ込んだ。
厩に近寄ると馬はブロロッと低く鳴いた。バイカルは大剣を背に戻すと、茶毛の馬の首元を撫でながら、飼葉を口先に出した。馬は黒く真ん丸な目をしたまま首を上下に振り、口を動かした。
ダイチはソードを構えながら残りの龍神赤石を拾い、次々に荷車に入れていった。荷車の中には水甕が置かれ、龍神赤石が散らばっていた。
鳥のさえずる音が聞こえ始めた。東の空が橙色の光に照らされ、辺りは徐々に明るくなり、朝日が昇ろうとしている。
バイカルが母屋の戸口に手を置いて、
「行くぞ」
と、母屋の中に声をかけた瞬間、バイカルの右腕をかすめるようにして母屋の外壁に矢が刺さった。
バイカルは反射的に母屋へ飛び込む。
「敵襲だ。伏せろ」
バイカルは戸口の壁に身を隠し、外を窺う。次の瞬間、2本目の矢が戸口から飛び込みコンと床で跳ねた。
バイカルは、テーブルを戸口に立てバリケードを作った。テーブルにカツ、カツと矢が突き刺さる。そのテーブルの陰から、大声で叫ぶ。
「ダイチ、大丈夫か」
「大丈夫です。馬車の荷台の陰に隠れています」
と、無事と場所を伝えた。
ダイチの場所からは、矢を射る時に茂から立ち上がるオーク兵の上半身が見えた。
「矢を撃った位置が見えました。その戸口から12時の方向、正面です。距離35歩の茂の中からです」
ダイチは叫んだ。自分でも冷静に対応できたことに驚いている。情報伝達の仕方は、大勢の子供たちに的確に伝える必要がある職業だったので、その技術と経験が生きた。
「バイカルさん、そこから9時の方向、3匹が丘を駆け登ってきます。距離50歩」
ダイチは再び叫んだ。
9時の方向は母屋の戸口からでは死角になり、バイカルには見えない位置だった。
「逃げ道を正面からの矢で押え、横から小屋に突撃する気だ。ダイチ、ここに突撃されたら、そこは矢の的になるぞ。無茶はするな」
バイカル叫んだ。ダイチは荷車の陰に身を潜めた。恐怖は感じているが、3日前のあの戦場の時とは違い、まだ考える余裕があった。
「俺が弓のオーク兵を倒せば、バイカルさんは戦える。そして戸口に突撃するオーク兵の背後に俺が回り込み、挟み撃ちもできる。良い作戦だと思うけれども、どうやって弓オーク兵まで近づき倒すかだ・・・む、無理だな」
ダイチの脳が高速回転する。全てがスローモーションに見えてきた。
「俺がやらないと、みんながやられる。ピーター君もエマちゃんもミリアさんも、バイカルさんも、ガリムさんも、アイもここで死ぬ。試すしかない。
召喚無属性魔法エクスティンクションを」
35m程離れた弓オーク兵を視界に入れる。ゴクッと唾を飲み込む。エクスティンクションの範囲制御に失敗して丘全体が吹き飛ぶイメージが浮かんだ。
「ダメだ、できない。この魔法はイメージだ。このイメージのまま撃ったら丘ごと消滅する。落ち着け、落ち着いて再イメージだ」
冷静になろうと静かに、大きく息を吐いた。次は粉々に吹き飛んだオーク兵のイメージが湧いた。
「魔物とはいえ、俺に殺しが耐えられるのか」
迷いが生じ頭を下げた。その時、昨夜の食卓で橙色に染まる家族の笑顔を思い出した。
「オーク殺しは俺が背負えば良い。今は救いたいと願う命だけ救えれば良い。俺の掌はまだ小さい」
茂から立ち上がって弓を引き絞るオーク兵の顔が見えた。1点の違和感への解答・・・最大効果点だ。
ダイチは、覚悟を決めた。
「エクスティンクション」