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ひと  作者: 花野井 京
12/17

12 漆黒の闇の世界

 漆黒(しっこく)(やみ)の世界には、魔物たちの猛々(たけだけ)しい声が響いていた。

 今夜は半月のためか、霧を通して極わずかだが漆黒の闇を照らしている。その光のほとんどが、濃い霧の存在を示すためのものの様でもあった。

漆黒の霧、なんとも幻想的で危険な世界である。

 ダイチたちは、(とげ)のある赤い茂の(つる)を黒の双槍十文字で払いながらゆっくりと進んだ。茂から出て振り返ると、白く淡い光を放つ巨大な幹がぼやけて見えていた。

 「アイ、クロー、行くぞ」

と、森を抜ける最短コースの北へ歩み始めた。

 視界は3m程度、黒の双槍十文字を手前に伸ばせばその穂先(ほさき)が見えなくなる位だ。(かす)かに見える前方を、手さぐりに近い状態で歩いていく。

 『2時、距離30、危険度Dジャイアントオーク1匹。3時、距離27、危険度Bダークオーガー1匹』

 ダイチは北から北西に迂回する。アイは、ダイチの腰から伸びる3mの(ひも)を手に取って、ダイチの後について行く。

 クローは、完全感知で捉えた30m以内にいる魔物の位置を、時計盤の時刻に置き換えてその方角を、距離、遭遇(そうぐう)時の危険度、魔物名、数をダイチに迅速(じんそく)に伝える。

 これによって、魔物との遭遇は可能な限り回避する。

 『10時、距離29、危険度Cレッドバット1匹。12時、距離27、危険度Cフィアースディアーと危険度Cブラッディリーチの2匹が戦闘中』

 北北東に迂回(うかい)をする。

 『2時、距離30、危険度Bサーベルジャガー1匹。これは速い、距離22』

 ダイチは(あわ)てて逃げようとして、枝に顔をぶつける。ガサッと音がした。

 「・・・」

 顔を押えながら、声を押し殺す。

 『2時、距離15、サーベルジャガーが追いかけて来ている』

 ガサガサ、バキバキと枝をへし折る音が近づいてくる。

 「サーベルジャガー頭の位置は」

 『2時、距離10、高さ2』

 ゾーブ

 「エクスティンクション」

 漆黒の霧めがけて、2時の方向、距離10m、高さ2mの1点にエクスティンクションを唱えた。

 本来エクスティンクションは魔物の内部1点にダークエネルギーを召喚する。しかし、漆黒の霧ともいえる状況では、視界に魔物を捉えることが困難なため、クローの指示で狙った空間にダークエネルギーを召喚(しょうかん)した。

 空間に召喚されたダークエネルギーは、一瞬にして1点から膨張し、イメージした大きさの球となる。

 その瞬間に元の1点へ向かって収縮し、効果範囲の全てを消滅させた。

9 

 漆黒の霧が、エクスティンクションで消滅した空間に流れ込んでいく。

8 

 ズドドドーンと、サーベルジャガーの倒れる音が闇に響く。

7 

 『11時、距離27、危険度Cデスボアー1匹』

6 

 ダイチは2時の方向へ迂回する。

5 

 幹から伸びた枝が、ダイチの頬と肩に当たり、カサカサと音を立てる。

4 

 『3時、距離28、危険度Aカニングガーゴイル1匹。5時、距離27、危険度Sプレデーションキマイラ1匹。7時、距離26、危険度Aジャイアントスピノ1匹、此奴は速い』

3 

 2時の方向へ回避する。

2 

 『ジャイアントスピノは、こちらを補足している。追ってくるぞ。3時と5時の魔物も一緒に来る』

1 

 バキバキバキと、枝が折れる音が迫ってくる。

 『6時、距離10、高さ6』

0 ゾーブ

   「エクスティンクション」

9 

 二足歩行の肉食恐竜の姿をしたジャイアントスピノが、ブンと尻尾を振り回す音だけが聴こえる。

8 

 ダイチは、咄嗟に黒の双槍十文字の(つか)を構えて体を防御する。突然の衝撃(しょうげき)と共に右胸が激しく痛み、弾き飛ばされる。ガサガサガサと背中が小枝を鳴らす。黒の双槍十文字は、その衝撃で闇の中へ消える。

7 

 ドンと背中に樹の幹が当たり、樹の幹の根元に体が落ちる。

6 

 「くっ、右胸の肋骨(ろっこつ)が何本か折れたな。エクスティンクションが、うまく命中しなかったのか」

 『ジャイアントスピノ、12時、距離4、高さ6』

5 

 「目の前か」

 ダイチの体は衝撃で動けない。漆黒の闇の中で、死の恐怖が(おお)(かぶ)さって来る。  

 ジャイアントスピノは、巨大な(あご)でダイチを()(くだ)こうと口を開ける。

4 

 アイの剣が一閃(いっせん)し、ジャイアントスピノの(ひざ)に深手を負わせる。

 ググアアァーと、激しい絶叫が響く。

 後を追ってきたプレデーションキマイラが、絶叫したジャイアントスピノの背中に喰らいく。

3 

 ダイチは、よろけながらも距離をとろうと動き出す。

2 

 ダイチは、漆黒の霧の中をよろけながら1歩、2歩と進む。

アイが、ダイチの下に駆け寄る。

 『第3の魔物、危険度Aカニングガーゴイル、3時、距離3、高さ5』

 スー、ヒューと、カニングガーゴイル呼吸音が聴こえる。

1 

 ダイチは、(つまず)いて転ぶ。ダイチには生への渇望(かつぼう)しかない。

 カニングガーゴイルは、黒い体からはえた翼をたたむ。鋭い歯を備えた(くちばし)が足元にいるダイチに迫る。

 『真上、距離3』

0 

 ビーチボール

   「エクスティンクション」

9 

 左半身にカニングガーゴイルが、死体となってダイチに倒れてくる。

8 

 左半身に強烈な重量を感じる。

7 

 ダイチは、カニングガーゴイルの死体から左半身を引き抜こうと右手と右足に力を入れる。

6 

 アイが、ダイチの体をカニングガーゴイルの死体から引きずり出そうとする。

 ダイチの右胸が、激しい痛みで悲鳴を上げる。

 ダイチたちの右横4mでは、ジャイアントスピノとプレデーションキマイラが死闘をしている。

5 

 左半身がカニングガーゴイルの死体から抜けた瞬間、頭の上をかすめるようにジャイアントスピノの尻尾が(うな)りを上げて通過した。

4 

 ドゴンという激しい音とともに、ダイチの後ろにあった樹の幹が激しく揺れる。

 「うあああぁ」

 「きゃー」

 と叫びながら、2人は、()うようにしてその場から離れようとする。

3 

 ダイチは、よろけながら立ち上がると、左足にも痛みがあった。

 グオォォォンと、ダイチの後ろからジャイアントスピノ断末魔が響く。

 プレデーションキマイラの獅子(しし)の頭は、ジャイアントスピノの(のど)をくわえている。

 アイは、振り返って2匹を見る。

2 

 アイはダイチを支え、一歩、一歩足を前に出す。

 プレデーションキマイラは、ジャイアントスピノの頭にかぶりつく。

1 

 『3時、距離7、黒の双槍十文字が落ちている。まずそれを拾え。プレデーションキマイラからは逃げきれない』

0 

 ダイチは、右脇腹を右手で押えながら、左足を引きずり黒の双槍十文字を目指す。

 プレデーションキマイラは、ジャイアントスピノの頭を(むさぼ)る。

 アイは、プレデーションキマイラの捕食に視線が釘付けになる。

 『黒の双槍十文字、12時正面だ、距離3、地面』

 ダイチは薄っすらと見えた黒の双槍十文字を握った。

 後ろに青白い光を感じて振り返る。黒の世界でプレデーションキマイラが、青白く発光していた。その光でプレデーションキマイラの全身が見えた。

 体長4m超で巨大なサイのような体をしている。中央に獅子の頭、左に狼の頭、右にヤギの頭が出ていた。尻尾は大蛇でシュルルルと舌を出していた。そして、前足の肩の辺りには長い角が生えていた。

 アイは、プレデーションキマイラのおぞましい姿に、全身が(こお)り付くような恐怖を感じ、身動きができない。

 『プレデーションキマイラは、捕食(ほしょく)した獲物の体や能力の一部を吸収しながら強化していく。吸収中には青白く発光する。動くもの全てを捕食する凶暴で貪欲(どんよく)な魔物だ』

 ダイチは、プレデーションキマイラの姿を見て手が震えていた。

 『プレデーションキマイラの弱点は・・』

 その時、プレデーションキマイラの獅子の顔が動き、黄色と黒の瞳が、ダイチを見た。ダイチの心に恐怖が、稲妻(いなづま)のように走った。

 ゾーブ

  「エクスティンクション」

 プレデーションキマイラの獅子の頭と左の狼の頭が消滅する。

9 

 プレデーションキマイラは、前足の力を失い前のめりに崩れる。ダイチは、黒の双槍十文字を構える手が震えている。

 『違う。プレデーションキマイラの弱点は頭ではない。胸だ。胸の中に生命の核がある。そこを狙え』

 アイは、(まばた)き1つできずに立っている。

8 

 プレデーションキマイラは、すぐに立ち上がる。失われた獅子の頭と狼の頭の肉が盛り上がり、復元し始めている。

7 

 『来るぞ』

 ダイチは、黒の双槍十文字をギュッと握る。

6 

 プレデーションキマイラは、サイのような体で突進して来る。

 「アイ、危ない」

 ダイチが、アイを横に突き飛ばす。

5 

 向かって左手のヤギの頭の角が、ダイチを狙う。

 ダイチは、プレデーションキマイラを右に回転しながら(かわ)し、死角となる再生しかけている狼の頭の陰から、振り向きざまに胸をめがけて黒の双槍十文字を突く。

4 

 プレデーションキマイラは突然、ダイチの前で止まって、体の正面を向けながらヤギの角で突く。

 黒の双槍十文字の突きは、プレデーションキマイラの胸をかすめたが、左の(やいば)が肩口を切る。

 ダイチは、ヤギの角を、身を(かが)めて(かわ)す。

3 

 ダイチは、プレデーションキマイラの死角となる右の腹の脇へ更に回り込む。

2 

 突然、ダイチの体の自由が奪われる。

 プレデーションキマイラの尻尾である大蛇の首が巻き付き、ダイチを持ち上げる。

1 

 尻尾である大蛇が、ダイチを頭から丸呑みしようと大きな口を開ける。

 「プレデーションキマイラ、お前の敗因は、今の一撃で俺を仕留めなかった事だ」

0 ゾーブ

   「エクスティンクション」

 プレデーションキマイラの胸の内部1点にダークエネルギーを召喚する。

 反発エネルギーであり負の圧力を持つダークエネルギーは、一瞬にして1点から膨張し、イメージしたゾーブの直径3mの球までその効果範囲を広げた。その瞬間に、胸の内部1点へ向かって収縮し消滅した。

 プレデーションキマイラの核は勿論、効果範囲内のものは全て消滅していた。

9 

 プレデーションキマイラは、動きが止まる。

8 

 ダイチの体に巻きついていた尻尾が胴体から切れ、ダイチと共に地面に落下する。

7 

 獅子の頭が、体から離れボトリと地面に落ちる。

6 

 狼の頭とヤギの頭も落ちる。

5 

 サイの体も崩れるように地面に沈む。

4 

 「クロー、プレデーションキマイラは死んだか」

3 

 『死んだ』

2 

 「クロー、索敵(さくてき)だ」

1 

 「アイ、怪我(けが)はないか」

 ダイチは横に倒れているアイへ視線を向ける。

0 

 『9時、距離27、マウントタートル1匹。7時、距離29、フォレストアリゲーター1匹。この2匹は、先程からほとんど動いていない』

「アイ、しっかりしろ」

  ダイチは、アイの肩を掴んで揺する。

 「ダ、ダイチ様・・・私、怖かった・・・」

アイは、涙を見せてダイチの胸にしがみついた。

 ダイチは、アイを優しく抱きしめる。

 「安心したよ。アイでも怖いと思う事があるのだね・・・俺は、ずっとアイが自分の命を軽く扱っている様に感じて、それが怖かったんだよ」

 「ルカの民である私にも、そんなに優しい・・・うぇ、ふぇ・・・」

 「自分を卑下(ひげ)する必要はない。アイはアイだ」

 「うぇ、ふぇ・・・・うぇ、ふぇ・・・」

 「アイ、立てるかい。ここは危険だ。一緒に行こう」

そう言って、アイテムケンテイナーから水を取り出すと、アイに渡した。

 「・・・はい」

アイは涙を服の(そで)(ぬぐ)うと、立ち上がり、水をゴクゴクと飲んだ。

 ダイチは、右手で黒の双槍十文字を構え、左手でポケットに入れたポーションを探す。ダイチのポケットの中には、割れた(びん)の破片だけだった。

 ダイチは、アイテムケンテイナーからポーション1本を取り出して飲んだ。ダイチの左足の痛みは、ほぼなくなったが、右胸には痛みが残っていた。

 「ポーションでは、完全回復とはいかないのか」

 激しい(のど)(かわ)きを感じ、ダイチも喉を鳴らしながら水を飲んだ。

 「クロー進行方向を見失った。最短ルートの方角と残りの距離、それから今の時刻」

 『2時の方向、距離2029、午前2時31分』

 「約1時間で、1000m程度しか進んでないのか。このペースだとあと2時間だな」

 

 ダイチたちは、クローの完全感知によって、多くの魔物を回避し、最小限度の戦闘をしながら進んでいた。

 アイの表情は冴えないが、プレデーションキマイラの恐怖からは、徐々に立ち直っていた。

 『止まれ』 

ダイチは、歩みをとめた。

 「クロー、どうした」

 『進行方向には、魔物が多くいて危険だ。迂回(うかい)だ。4時方向へ』

 「少し戻るが仕方ない」

ダイチは、4時方向へ戻って行く。

 『12時、距離33、危険度Aフォレストアリゲーター1匹。2時、距離30、危険度Bヘビーゴーレム1匹』

 クローのレベルが上がり、完全感知範囲が徐々に伸びてきていた。

 「迂回をしている最中だというのに、ここから更に迂回だとかなり時間のロスだ。倒して進む。」

 漆黒の霧の世界の中、足音を忍ばせて進む。

 『フォレストアリゲーター、12時、距離17、高さ2、まだ気づかれていない』

 「このまま、11時へ気づかれないように進む」

 「アイ、慎重に・・・」

 「はい」

 木の葉がアイの鼻に、草が(ひざ)に触れる。

 『フォレストアリゲーター3時、距離7、高さ2』

 ダイチの右肩は枝に触れ、カサカサと小さな音がした。ダイチは立ち止まり息を飲む。

 『動くな、身を(ひそ)ませていろ』

 「気づかれたのか」

 『いや、それではない。11時、距離31、28、26、近づいてくる危険度Sケルベロス1匹、此奴は危険だ』

 「クロー、ここは、フォレストアリゲーターに近いぞ」

 『ここは、ケルベロスにとっては風下だ。身を(ひそ)めていれば気づかれずにやり過ごせる』

 ケルベロスは、狼に似た魔物である。体長4mで全身が銀色、狼の頭を3つもち、嗅覚が非常によい。また、獰猛(どうもう)敏捷性(びんしょうせい)が高く。もし、森で人間が出会ったら、生きて戻れる事はない。

 『危険度Sケルベロス9時、距離19。やり過ごせそうだ』

 その時、風向きが変わった。

 『ケルベロスの風上になった。フォレストアリゲーターを倒せ』

 「ケルベロスに気付かれるぞ」

 『ケルベロスとフォレストアリゲーターを、2匹まとめて相手をするよりはましだ』

 『フォレストアリゲーター3時、距離7、高さ2』

 ゾーブ

  「エクスティンクション」

9 

 『フォレストアリゲーターの命が消えた。ケルベロスに気付かれた』

8 

 ガサガサと小枝と草が鳴る。

 『ケルベロス、8時、距離14、かなり速い。来る』

7 

 身を低くして、黒の双槍十文字を構える。

 漆黒の霧の中から猛烈なスピードで宙に舞う3つの頭をしたケルベロスの影が迫る。

6 

 ダイチは、左に低く跳ぶ。

アイは、咄嗟に右へ跳んだ。

 ケルベロスは、そのままダイチを飛び越えるが、すれ違いざまに右前足の一撃を出す。ケルベロスの爪で、ダイチのマントが引き()かれる。

5 

 ケルベロスは、着地とともに右横に跳ぶ。更に次の着地と同時にダイチめがけて飛ぶ。

 ダイチは、バランスを崩しながらも目でケルベロスを追う。

 アイは、剣を抜いてダイチに向かい一跳躍(ちょうやく)する。

4 

 片膝を着きながら、黒の双槍十文字を横に払う。

 宙に浮くアイの剣先が、(やみ)()いて()(えが)く。

 ケルベロスは、空中で身をよじりこれを躱す。  

3 

 ケルベロスは、着地の瞬間左に走り、ダイチの背後めがけて3つの頭の牙が襲う。

 ダイチは身を(ひるがえ)しながら、右手1本で黒の双槍十文字を払う。

 ケルベロスの右側の頭の喉を切るが、ケルベロスの左前脚が槍の柄を叩く、黒の双槍十文字は(ちゅう)(はじ)かれる。

アイの剣先が、ケルベロスの腹を(かす)めるが、浅い。

2 

 2つの頭からギャオォォンと、苦痛の悲鳴が上がる。ケルベロスの右の頭は力なく()れ下がる。

 ダイチは、黒の双槍十文字を叩かれた勢いで、尻もちをつく。

1 

 ケルベロスは、左前足でダイチを踏みつけようとする。

 ダイチは、体を横に(ひね)り、ケルベロスの左前足を(かわ)すが、マントを踏まれ動けない。

アイは、剣を中段から()ぎ払い、ケルベロスの左前脚を切断する。

0 

 ケルベロスの中央と左側の頭は、牙を剥きダイチの顔に迫る。

 「近すぎる」

 サッカーボール

  「エクスティンクション」

 ケルベロスの左側の頭は消滅する。中央の頭は、瞬き程の間、動きが止まる。

9 

 「ハァ、ハァ、ハァ」

 アイは、ケルベロスの残った中央の頭を切断しようと剣を上段に構える。

8 

 中央の頭には、ダイチの抜いたソードが、(あご)の下から頭を貫いている。

 アイは、上段に構えたまま、動きを止める。

7 

 「ハァ、ハァ、ハァ」

6 

 ケルベロスの中央の頭からソードを抜く。

 ケルベロスは静かに横に倒れる。

 「ダイチ様、お見事です。お怪我はありませんか」

5 

 ダイチは、ぼろぼろになったマントを脱ぐ。

4 

 「ハァ、ハァ、大丈夫だ。アイこそ見事な剣技だった」

3 

 ダイチは立ち上がる。

 アイは、周囲を警戒している。

2 

 ダイチは、右手に持っているソードを見つめる。

1 

 ダイチは、祈るように呟く。

0 

 「バイカル親方の魂を込めたこのソードに助けられました。(すさ)まじい切れ味でした」

 「クロー、黒の双槍十文字はどこにある」

 ダイチは黒の双槍十文字を拾うと、バイカルのソードを一振りし、腰の(さや)に納める。

 「クロー、最短ルートの方向と索敵(さくてき)を」


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