ひと

　ある朝、目覚めるとダイチは、パラレルの境界を越えて異世界に飛ばされていた。その世界は、魔物が跋扈し、生きるには過酷な世界であった。
　これまでの生活の全てを失ったダイチは、失意のあまり色彩が鈍くなり、この世界を「色のない世界」と感じる。
　唯一手にしていたハードカバーの本「黒の神書」の隠された性能に気付いたダイチは、この世界で逞しく生きていくことを決意した。
　そんな矢先に、記憶をなくした「魔族の祖であるルカの民」である女性アイと、鍛冶職人のバイカルと出会う。
　アイは、他者を人として尊重し、ひた向きに生きるダイチに惹かれ始める。
　異世界でも、地に足をつけて生き始めたダイチは、国の盛衰を左右する事件に巻き込まれていく。その事件を解決すべく、ダイチはアイと共に強力な魔物の住む森へと旅発つのだった。