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また輝かしい明日の朝がやってくる  作者: 藤田大腸


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温泉で奇遇な出会いをした

 あたしたちは日が落ちる前に宿に戻った。夕食までまだ時間があるから温泉に浸かることにした。


「うお、すげー広いな……」


 大浴場のど真ん中にドンとでかい浴槽があり、他にもジャグジーバス、ジェットバス、寝そべり湯まである。もちろん、外には露天風呂もついている。


 壁には泰山の湯の由来が書かれている看板があった。遥か昔、この地に修行僧がやってきて喉のかわきを癒やそうと水を探していたら湯気が出ている場所があり、湯が地面から滲み出ているのを見つけて飲んでみたらたちまち元気になったそうだ。そのためかここの温泉は飲めるとのこと。だけど試しに大浴場の隣にあった飲泉場で一口飲んでみたところしょっぱくて美味しいとはいえなかった。本当に健康に効くんだろうか。


 客層は高齢層が多いが、みんな岡山弁で談笑している。宿泊客よりも日帰りで立ち寄る村民が多いとアサから聞かされていたけど、よそ者の高校生のあたしはアウェー気分を味わうことになり、落ち着かなかった。


 それでも湯に浸かっているうちに気持ちよくなってきて、ボケーッとしていたら、「どこから来たん?」と声をかけられた。


 あたしと同い年ぐらいの若い子二人連れだった。


「S県の空の宮からっす」

「へー、空の宮?」

「朝水の通うとる高校があるとこじゃ」


 びっくりした。


「もしかしてアサ……神城朝水の知り合いっすか?」

「「朝水のこと知っとるん!?」」


 ジャバッ、と湯しぶきが飛んだ。


「あいつとは同じ高校の同級生で、実家まで遊びに来たんすよ」

「偶然じゃなあ! ウチらも朝水の幼なじみの同級生なんよ!」

「おー……」


 故郷にいた頃は同級生が四人しかいなかった、とアサが言っていたことがある。そのうち二人があたしの目の前にいる。


 自己紹介して、二人は彩乃とゆなと名乗った。下の名前で良いよと言われたからあたしも明日香でいいぜ、と返した。


「朝水に迷惑かけられとらん?」

「いや、全然そんなことねえよ。しょっちゅう振り回されてはいるけどな」

「向こうでも元気しとるみたいで良かったわ。明日香も遠いところからわざわざありがとうな」

「実はここに来たの二回目なんだ。さっき実家にも寄ってきたし、明日は年越しライブの練習するんだ」


 年越しライブの参加は最初に訪れたときに約束したことだ。


「へー、明日香も楽器できるん?」

「ああ、ドラムやってるぜ。アサと同じ軽音楽部でな」

「一緒の部活かあ」


 彩乃と会話が続いていたところ、ゆなが切り出した。


「聞いたことあるんじゃけど、朝水と明日香がおる女子校って女の子どうしで恋愛してる子が多いって本当なん?」


 いきなり踏み込んできたもんだから、ちょっと身構えてしまった。


「あー、まあな……」

「じゃあ明日香も恋人おるん?」


 そんなこと聞かんでええよ、と彩乃に怒られるゆな。初対面なのにやたら距離詰めてくるなあと思うが、アサと同じだ。やっぱり田舎独特の人間関係が濃い環境で育ってきたからかな。


 アサの幼なじみならちゃんと言っておいた方が良いだろう。


「いるよ。つーか、相手がアサだし」

「…………ウソぉ!!??」


 再び、でっかい湯しぶきが上がった。予想通りのリアクションだった。騒ぎすぎて近くにいたお婆さんに睨まれたから、場所を露天風呂に移して、アサの幼なじみたちとのトークを続ける。


「急に恋人のことを聞いてしもたけど、実はウチら二人もつきあっとるんよ。明日香ならわかってくれると思うたけえ聞いたんじゃ」

「へー、君たちも恋人どうしなのか」

「じゃけど朝水に恋人ができとるとは思わんかったなあ。あの朝水が」

「あの、って何か含んだ言い方だな……」


 まあ「あの」性格だからな。


「で、どこまで進んどるんな?」


 ゆなが身を乗り出してきた。


「どこまで?」

「キスぐらいはしとろう?」

「全然……」


 耳をハムハムされて指をペロペロはしたけど、正直に言ったら引かれそうだから言わなかった。


「ええー、純情じゃなあ」

「だって付き合って間もないんだぜ? まだろくにデートもできてないし、明日はまあデートっつーか、部活の場以外で初めて一緒にライブの練習するんだけどな」

「じゃあそこで一気に行くところまで行ったらええが」

「こんな風に」


 彩乃とゆなはおもむろに唇を合わせた。それどころかわざとらしく水音を立てて……


「ちょ、人前だぞ!」

「あはは、明日香ったら顔が真っ赤になっとる!」

「本当に免疫ないんじゃなあ。うちらで練習する?」

「しねえよ!!」


 つい怒鳴っちゃったけど、しなきゃアサは助からない……とワタ婆さんに脅されている。あたしはプライドを捨てた。


「まあ、実践はいらねえから、言葉だけで簡単に説明してくれたら……」


 二人はにひひ、と笑った。

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