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皆様初めまして。

あーたみーと申します。

以前より構想していたお話を文字に移してみようということで書いてみました。

素人なのでところどころおかしなところはあるかもしれませんがこれを読んだ方々の時間を少しでも潰せたらいいなと思っております。

とある王国では闇属性魔法を使える者は有無を言わさずこの世から抹消するという風潮があった。


たとえそれが赤子であっても例外ではなかった。



――学園魔法大会編――



ジリリリリリリ!



「……ぅう」



やけにうるさい目覚まし時計で目が覚めた俺はいつものように支度をし朝食を適当に済ませいつものように魔法学園へと向かっていた。


魔法学園とはその名の通り魔法士の卵を育成する学校で俺はそこの2年生であり来年で3年生になる。


「ふぁ〜」


朝が苦手だからどうもやる気が起きないなぁ…

そんなことを考えながら歩いていると


「おーーす!」


「おー…ぐえ!」


などと無駄にうるさい声を出しながら

腐れ縁で辛うじて繋がっている一応親友の

シンヤが俺の肩を組んでくる。


…というかもう首絞めちゃってるし苦しいしやめて欲しい。


「ゲホッゲホッ……

もう少し優しく出来ないのか?」


と少し威圧気味に言うも


「ごめんごめん!」


と満面の笑みで謝ってくる。


あ、これ絶対思ってないわ。

覚えとけよ…。

俺も今度やってやろう…。


「それはそうともうすぐで始まる今年の魔法大会さ

ジンはどうすんの?」


と話題を変えてきた。ジンというのは俺の名前だ。


魔法大会というのは1年に国全体で1年に1度行われる大規模な大会だ。


予選と本戦に別れており、

予選を勝ち抜いた上位30名が本戦に出場できる。


順位を決めて各々のモチベーションアップを図ろうとしているのだろう。


その決め方は1対1で魔法の実力を競う実戦形式の試合で決められる。


決め方が決め方なだけに怪我人が毎年多数出ていてそれなりに危険ではある。


去年も怪我人がかなり出て別の方法が無かったのかと言いたいほどだった。


ただ、実戦形式という決め方は生徒全員の競争意欲を湧きたてるには充分であり、その生徒の強さを図るにはシンプルで分かりやすいため1番適した方法であると考えられている。


そのため、この学園の歴史はそこそこ長いが1度も実戦形式から変わったことは無い。


危険ではあるものの本戦になれば、生徒だけでなく一般の人や名の知れた魔法士がよく見に来る為かなり人気のイベントでもある。


しかも魔法大会での結果が、そのまま成績にも反映されるから、生徒たちは皆張り切って参加している。


俺は面倒くさいし怪我もしたくない。

だから去年は予選の初戦で降参して難を逃れている。

これを難と呼ぶかどうかは少数派だとは個人的には思う。


俺が手を抜いて、降参したことを知ったシンヤはしばらく隣で

男なら勝負しろだのなんだのブチブチ言ってきてたな。


まぁ今年も去年同様初戦で降参する予定だが。


逆にシンヤは去年の大会でTOP30に入っているかなりの手練だ。


本戦で1回戦を勝ち抜き25位にランクインしている。

そんな彼に、


「俺は今年は頑張ろうかと思う。」


その場しのぎの意気込みを言ってみる。


「…絶対嘘だよね?」


俺の思惑をすぐに見抜いてくる。

流石に見え見えの嘘だったか。


「それはそうとシンヤ、お前はどうするんだ?

お前ならTOP30は確実だろう。」


と聞いてみる。


「僕はこの雷の魔法で今年はTOP10に入って見せるさ!

TOP30?

そんなんじゃ満足出来ないよ!」


暑苦しいほどのやる気に満ち溢れてる彼を俺はそっと遠くから見守ってやろうと思う。遠くから。


シンヤは雷の魔法を使う。


この世界では産まれた時点で1つ属性を持っている。


使える魔法属性は色々な種類があるが基本1つで

2つ以上の魔法属性を持っている人間はそうは居ない。


数ある魔法属性の中でも光属性と闇属性が最強とされている。

光属性が使える魔法士は国規模で優遇される。


ただし闇属性は違う。


闇属性魔法は魔族という種族で使われている魔法である。

長きに渡りこの世界では人間と魔族が争ってきた。

いや、今も争っている。


魔族はこの世界を支配するために


人間は生き残るために。


稀に人間にも闇属性魔法を使えるものが現れる。

だが闇属性魔法が使えるとわかった瞬間

その者はこの世界から抹消される。


何故か?


それは闇属性魔法を使える者の心は決まって悪に染まり悪事に働くことが多いからである。


人の命が奪われることが珍しくなく

過去には多くの人の命が奪わたこともあるため同じ過ちを繰り返さない為にこのような体制がひかれている。


そのため闇属性魔法を使える人間は居ないとされている。


国内での闇属性魔法のイメージは最悪で悪の象徴とされ良いイメージは

全く無い。


話がそれたが俺とシンヤで魔法大会の話をしてると


「シンヤ君!おはよぉ!」


と呼びながら近づいてくる女性が1人。


名前はアカリ。


その名の通り明るく茶髪でしかも美人でその上シンヤの彼女でもある。


使う魔法属性は氷だ。


…というか俺は無視か。


「おー!アカリ!おはよー!」


と、彼氏のシンヤも満面の笑みで応じ


それから2人で腕を組みながら仲良く話し始める。


あー見てられん。早く爆ぜないかな。


なんて事を考えていると

もう1人こちらにやってくる。

彼女の名前はマヤ。

アカリの親友でいつも一緒にいる。


黒髪長髪のこれもまた美人で性格はアカリとは反対で大人しい。 使う魔法属性は治癒魔法を使う。


治癒魔法も魔法の1種で読んで字のごとく

怪我や病気に対しての治癒を専門としている。


そして残念ながら俺の彼女ではない。


恥ずかしがり屋なのか俺と話していると

時折顔を赤くして俯いていまう時がある。


シンヤと話している時はない気もするんだが…。


「ジン君、シンヤ君おはよう!」


マヤはちゃんと俺も入れてくれる。


これは嬉しい。


「マヤちゃんおはよー!」


「あぁ、おはよう」


シンヤと俺もマヤの挨拶に応じる。


それから4人で学園に向かう。


「今なんの話をしてたの?」


とマヤが聞いてきた。


「魔法大会の話をしてたんだ。


シンヤならTOP30は確実だろうなってな」


と俺が言うと


「いーやTOP10だよ!」


と間髪入れずに訂正してくる。


「シンヤならTOP10は行けると思うけど

ジン、あんたは無理でしょ(笑)」


とアカリが笑いながら言ってくる。


語尾の(笑)付けなくて良いだろうに…。


「でもジン君は初戦で降参してるから

やる気が無いだけで実はすごい強かったりするのかも?」


とマヤがフォロー(?)するが


「ジンは水属性でしょ?

あたしの氷ならともかく、水属性なんて最弱の属性じゃない。

TOP30なんて夢のまた夢よ。」


…いい過ぎやしませんかね?


だがアカリの言う通りで俺は水属性魔法を使う。


水属性魔法は威力の高い魔法があまりなく殺傷能力にかけているため

最弱の魔法属性候補の1つとされている。


殺傷能力だけで強さが判断されるのもおかしな話だ。


最弱の属性を持っていると学園の中でのスクールカーストはずっと最下層だ。


最下層にいると


ドンッ!


突然何かにぶつかった。

と言うよりはぶつかってきた。


「あぁ?

いってーなー!ぶつかってきてんじゃねーよ!」


とこのように先輩から一方的に、しかも理不尽に絡まれる事が結構ある。

時には同級生からもあったりする。


ここは学園の校門に差し掛かった所でかなり人目に着く。


…がこの騒動に誰も首を突っ込むようなことはしない。


それどころか見て見ぬふりをしそのまま逃げるように校舎の中に入っていく生徒までいる。


「…すみません」


と謝る俺に


「戦力にもならんゴミが俺に触るんじゃねぇ!」


と怒鳴り散らしながぶつくさ言ってくる。


ぼんやりしながら聞いていると、


「お言葉ですが、ぶつかってきたのは

ダイチ先輩からのように見えましたが?」


とシンヤが間に入ってきた。


相変わらず正義感に満ち溢れてるな。


「お前は…シンヤか」


ダイチ先輩と呼ばれるその男は


背が高くかなり鍛えているのか、体ががっしりしているのが制服越しにも分かる。


「こんな奴の為に俺の間に入ってくるなんてな…。

いい度胸だ。」


相手を威圧するようなその目つきは


かなり怖い。


「僕の親友なんでね。」


中々肝が据わっているのか動じることなく言い返す。


「ふん…まぁいい。今日はこの辺にしておいてやる。

強いやつが友達にいて良かったな。出来損ないが。」


と俺に言い残し学園の中に入っていった。


制服に着いたゴミを払っていると


「ジン君大丈夫!?」


とかなり心配した様子でマヤが駆け寄ってきた。


「あぁ、大丈夫だ」


とほんとに大丈夫なのでそう答えてみせる。



少し遅れてアカリも寄ってきた。


その顔は苛立ちに満ちている。


「今の人、3年のダイチ先輩だよ。

地属性魔法を使う去年の大会で4位の人だよ」


とシンヤがダイチ先輩が立ち去った後を睨めつけながら言った。


道理で誰も止めに入ってこない訳だ。


この学園は実力が物を言う。


言うなれば弱肉強食の世界がこの学園にはある。


そのため校内でトップクラスの実力者を相手に出来るものはそういるはずもなく先程のように見て見ぬふりをする者がほとんどだ。


「あいつの柄の悪さは相変わらず噂通りね。

何なのあいつ。」


と呆れ顔でアカリが言う。


あのダイチっていう先輩は柄の悪さで有名なんだな。初めて知った。


「この学園の中ならしょうがないじゃないか?」


と俺が言うと


「君にはプライドが無いのかい?

あれは怒ってもいい場面だったじゃないか!」


と何故かシンヤが悔しそうにしている。


「僕だったら魔法大会であいつに勝って見返してやるのに!

ジン!何がなんでもあいつに勝つんだ!」


と言ってきた。


おおい、無茶言うなよ。


それにその場ですぐにやり返さないのか。


と思ってしまった俺の心は汚れてるんだろうな。


まぁ真面目なシンヤは校則を破るような真似はしないだろうが。


学園内で魔法を使用する事は制限されている。


全く使えない訳では無いが人に対して攻撃魔法を放つ事は許可されていない。


当然と言えば当然か。


「いや俺は無理だろうな。」


と既に諦めモードの俺に


「ダメだよ!あいつに一矢報わないと!」


とブンブン俺の体を揺さぶりながら言うもんだから頭がクラクラする…。


だが相手はトップクラスの実力者だ。普通に戦って勝てるわけがない。


「いや、俺では無理だろう。」


「なら僕がジンの仇を取ってみせるよ!」


俺はまだ死んでないんだが?


「俺は頼んでないぞー」


「だからジン!

その代わりと言ったらなんだけど本戦に出て欲しいんだ!

君と真剣に戦ってみたい!

僕はジンが弱くない気がするんだよ。」


おおい、無茶言うな。(2回目)

話を聞かないな…。


だが本戦に出るだけなら可能性は無くは…ないか?


仮に出れたとしてもすぐ降参すればいいし

出る出れない関係なく出ようとする姿勢を見せれば問題ないか。


「…まぁそれくらいなら頑張ってみるよ。 一応な。」


シンヤがこんなに張り切っている以上無理とは言えなかった。


断ったらまたブチブチ言われるしな。


だからせめて本戦に出ようとするだけして

いい感じに戦ったら無理でしたと言って降参しよう。


「ほんと!やった!これで俄然やる気が出るぞー!」


純粋なシンヤは心から喜ぶ。


だがすまんなシンヤ。


シンヤと戦う事は無いだろう。


何故なら俺は降参するから!


「まぁ多分無理でしょうけど頑張ってね」


「ジン君なら出来るよ!頑張ってね!」


アカリとマヤが俺の思惑も知らずに応援し始める。


というかアカリのは応援には入らないと思う。


全然期待されてる感じがしない。


こんな感じで

半強制的に大会の本戦に出ることを約束させられた。


シンヤには何かとこんな感じで付き合わされるからな。


もう慣れた。


それにしても本戦に出るなんて面倒なことを引き受けてしまったなぁ。


予選勝たないとなぁ。


仮に本戦を目指すってなった場合

ほんとに俺の実力で本戦出れるのか?


……お先真っ暗な未来しか見えんのだが。





朝の騒動からしばらく時間がたち俺たち4人は教室に着いた。


俺達が教室に入っても特に声をけられることは無く各々が俺たちと

話すのを避けているようにそれぞれが話続けているように感じる。


まぁ、これが初めてではないから慣れている。


決してクラスのみんなの反応がおかしいわけではなく自己防衛からなるごく自然の行動だと俺は思う。


他の3人は若干このクラスの反応にピリついてる感じがした。

だが決して俺たちクラスの仲が悪いわけではない。


俺たち4人は席はバラバラなので各々の席につく。


自己防衛に走っている人がほとんどの中


「あ、あの…、」


と声をかけてくる猛者が1人。


「あぁ、ミナミか、おはよう。」



「うん、おはよう、」


と白銀の髪に深い蒼の瞳をしているその美少女。


ミナミはいつもの様に俺に声をかけてくる。


ミナミは俺の隣の席で俺と同じ水属性魔法使いであるということもあり、気が合い仲良くしている。


授業を一緒にサボったり、昼休みたまに一緒に昼寝したりもする。


おっとりしてる性格だからか俺と気が合う。


忘れ物をしたら貸してくれたりするしお願いも色々聞いてくれる。


そんな優しい彼女がスクールカースト被害者である事が悔やまれるが…。


「今朝は大丈夫だった、?」


とミナミが聞いてくる。


ミナミも見ていたようだ。


「あぁあれくらいならまだマシなほうさ。

ミナミも気をつけてな。」


「うん、ありがとう、

っていやいやそうじゃなくて…」


心配したつもりが逆に心配されて調子が狂ってあたふたしている。

その様子は見ていて可愛らしい。


「怪我とかしてない、?」


しばらくあたふたしてる様子を見てたら

調子を取り戻したミナミが気を取り直して聞いてきた。


「あぁなんでもない。」


「そっか、良かったぁ、」


なんともなさそうな俺の様子を見て安心した表情を見せた。


気を使わせるのも悪いので、


「ミナミは今年の魔法大会どうするんだ?」


話を変えて魔法大会について聞いてみる。


実際今このクラスの話題は魔法大会についてが大半を占めている。


「今年は去年より上を目指せるよう頑張ってみるつもりだよ、!

水属性だけど、きっと使い方によったら弱くなはないと思うから、!」


と張り切った様子で答えるミナミ。


去年の大会でミナミは予選落ちだが1回戦は勝ち抜いていたな。


「そうか。ミナミなら上まで行けそうな気がすルな。」


「いやぁ、行けないよー、!」


と俺が言うも即否定してくる。


…自信はないんだな。


などと何気ない会話に華を咲かせていると学園のチャイムが鳴り担任の教師が入ってくる。


それからはいつもと変わらない1日が

過ぎ去っていった。


授業としては魔法に関しての基礎的知識を身につけたり、時には数学や歴史といった普通の授業もある。


まぁ一般的な教養は必要だから当然と言えば当然だ。


しかし数学など普通授業はウケが悪いことこの上ない。


皆頭は使いたくないらしい。


ちゃんと勉強しないといけないというのにな。


そういう俺もミナミと絵しりとりなんかしたりして聞いてないが。


絵しりとりは、真面目に授業を受けているように見えるから中々に使える遊びだ。


悪知恵は働くらしい、俺の頭は。


いつもの様にやる気なくダラダラ一日の授業が終わり

放課後のホームルームが終わると朝の登校の時と同じメンツで帰る。


魔法大会が近いのもあり皆足早に帰っていく。

魔法の練習でもするんだろう。


俺たち4人も同じように帰っていると


「ねぇシンヤ〜魔法の練習付き合ってよ」


とアカリがシンヤにそう頼む。


「魔法の練習?じゃあまずは基礎的知識からだね学校でも習ったと思うけど魔法を扱うには魔力が必要だけどその量は個人差がある事は知ってるね自分の魔力量を把握しているかいないかでは実戦での実力に天と地ほどの差があるんだ体を鍛えるのとは違い自分の魔力にあった練習をしないと練習の意味を全くなさないんだよ例えば……」


おーおー句読点を付けんか、そして長い。


改行もしてないから読みにくいことこの上ない。


隣で聞いてるアカリがぽかんとしてるぞ。


マヤは…若干引いてるな。


魔法が大好きなシンヤは魔法の話になるとこんな感じに止まらなくなる。


「ど…どうしよう」


とアカリが何故か俺に助けを乞うてくる。


自分で蒔いた種だろうに。


しょうがないので


「あー…シンヤ、そろそろその辺にしたらどうだ。

そういうのは教えてやる時にした方が効果的だと思うぞ?」


とその場しのぎの助け舟を出してやる。


「え?あぁ、そうだね後でいっか!じゃあアカリこの話はまた後で!」


とシンヤが一旦話を終わらせる。


アカリは後でまたこのマシンガントークをくらうことになるだろう。


その時は俺はいないし、まぁ……良いか。


またあのマシンガントークをされても困るので


「シンヤ達は何か大会に向けてしてるのか?」


と聞いてみる。


「え?僕かい?

僕は大会に向けて毎日使える魔法を一通り使って使い慣れるように しているよ!」


「え?どうして?」


とシンヤの答えにマヤが質問する。


「魔法に使い慣れていないと必要な魔力よりも多くの魔力を消費してしまうからだよ。


必要な魔力だけを使えれば長期戦にも備えれるし、

魔法その物の威力も規模も上がる。


だから使い慣れることが魔法を使う時に結構重要だったりするんだよね。」


シンヤの言う通り魔法にも慣れというものがある。


慣れれば慣れるほど高い火力を出せ余計な魔力を使わずに済む。


このことを知っている人は意外に少なかったりする。


ただ強い魔法を覚えればいいというほど魔法は単純なものではないのだ。


女子2人は知らなかったらしく


「えぇ!?そうなんだ!」


「ほぇ〜!やっぱりシンヤ君は物知りだね」


とかなり驚いている様子だ。


「今日の練習は今使える魔法にもっと慣れていけるような内容にしようか」


とシンヤが今日の練習内容をアカリに伝える。


「うん分かった!」


と嬉しそうに返事をした。


一緒に居られて良かったな。


しばらく話をしていると


「じゃあ今日はこの辺で!」


「バイバイ〜!」


「明日な」


「また明日ね〜」


とシンヤとアカリ、俺とマヤがそれぞれ

別々の方向に向かっていく。


シンヤとアカリはこれから練習か。


俺はどうしようかな。


とそんな事を考えていると


「あの、ジン君…」


「ん?」


突然マヤが俯きがちに俺を呼ぶ。


よく見ると顔が赤くなっている。


「今から少しだけ付き合って欲しいの…。」


とかなり心臓に悪い頼み事をしてきた。


「あ、あぁ大丈夫だ」


なるべく動揺してるのをばれないように冷静を装い快諾した。


もちろん快諾だ。


「やった!じゃあ、行こ?」


と可愛らしい仕草で振り向いたマヤに


ドキッとしたのはここだけの話だ。


それはそうと連れてこられたのは街の商店街だ。


ここにはかなりの人が集まる。


魔法士に関する道具から普通の服、食材等様々だ。

大抵の物はここで揃う。


「ここ!」


と着いた先はアクセサリー屋だった。


「何か欲しいものがあるのか?」


と聞くと


「ううん欲しいものがある訳じゃなくてここに来たわけじゃないの」


と変なことを言うマヤ。


「じゃあどうしてここに…」


と俺が、言い切るより前に


「店員さんこれを1つ!」


と即決で何かを1つ買っていた。早いな。


どうやら最初からそれを買うために来たみたいだが、

マヤが欲しい訳では無い。


ん???どういうことだ?


よく分からず混乱している俺にマヤが近づいて来て


「はい!これ!ジンくんに!」


とさっき買ったアクセサリーを渡してきた。


「これはミサンガか?」


腕に付けるタイプのよく見る物だが。


ちなみにこんな感じで俺の世界にもミサンガはある。

最近ミサンガと言う名前は聞かないが。


「そう!大会で勝てますようにってお願いしたの!」


「わざわざ俺のために、ありがとうなマヤ。」


「えへへ」


「俺もあいつらみたいに負けてられない な。」


「頑張ってね!私は治癒魔法だから大会中 は怪我の手当をしてるから観るだけしか出来ないけど、ジン君の事応援してるからね」


マヤはほんとに応援してくれてるみたいだな。


これでほんとに負けられなくなってしまった。


今年頑張ったら来年は絶対にサボろう。


今日はこのまま解散しても良いがせっかくマヤからプレゼントを貰えたわけだし何かお礼しないとな。


そう思った俺は


「マヤ、何処か寄ろうか。お礼に俺が奢るよ。」


と言ってみる。


「え?いいよー!大丈夫!」


とマヤは遠慮するが


「俺がお礼したいんだ。遠慮しなくてもいいから。」


と食い下がる。


俺の態度が珍しいのか、しばらくちょっと驚いた様子だったがすぐに満面の笑みを浮かべ


「じゃあ甘えるね。」


と了承してくれた。


特に何か考えているわけでも無かった為


俺がよく行く喫茶店に寄ってゆっくりしていくことにした。


俺はコーヒーで

マヤは…


マヤもコーヒーか!


これは意外だったな。


てっきり今流行りの飲み物を頼むのかと思っていた。


何だったかな…名前忘れたな。


最近この国で流行っている飲み物の名前を思い出そうとしていると


「ジンくんはシンヤくんみたいに大会に向けて何かしてる?」


と聞いてきた。


「タ」まで思いついたところで一旦思考をやめマヤとの会話に専念することにした。


「あんまりしてないな。

でも毎日自分の魔力を使い果たしてから寝るようにはしているな」


「え!どうして?」


「急激に魔力を消耗すると身体への負担が大きすぎて気を失ったりしてしまうからな。

簡単な例が運動してない人が急激な運動をして体調が悪くなるっていう感じによく似ている。

シンヤの習慣も慣れる事に重きを置いているからな。

魔法に慣れるというのは戦闘において重要な事だ。」


「あー言われてみればそうかも!

いざってときに本調子じゃないと負けちゃったりするもんね!」


「そんな感じだな。

ただ運動の例と大きく違うのは自分の魔力が尽きた時や

急激に大きな魔力を使うと身体が持たず最悪の場合

死に至るケースも珍しくない。

そうならないようにって言うのが主な理由だ。」


俺のちょっとした説明も真剣に聞いてくれるマヤ。


それからしばらく


魔法大会で誰が優勝するのか〜


とか誰が何位になりそうだ〜


など魔法大会の話をして盛り上がっていた。


ふとマヤが、暗い表情をする。


「どうかしたか?」


俺が訊ねると



「ジン君はあの人と当たったらどうするの…?」



と聞いてきた。


あの人?あの人とは多分


「ヒカルの事か?」


「…うん」


ヒカルという名前を出すとすこし複雑な表情をするマヤ。


ヒカルというのは俺と同じ同級生にして最強と呼ばれる魔法属性の1つである光属性を使う。


その実力は圧倒的で今まで負け知らずだ。


去年の大会は1年生ながらにして1位の座に君臨するほど。


実力主義のこの世界では彼はこの学園の天下を取っているという事になる。


今の俺では到底かなわないだろう。


「まぁ勝てないだろうから大人しく降参しようと思うが。」


俺はあんまり勝てない戦いはしたくないのだ。


「そっか、今朝は頑張ってねって言ったし

頑張ろうとしてるジンくんにこんな事言うのは失礼だとは分かってはいるけど……。」


そういうとマヤは口を噤む。


あ、俺は別に頑張ろうとは思ってない。


「…………。」


マヤが話すのを待つ。


「ヒカル君と当たったら降参して欲しいって思ってる…。」


マヤは先程からかなり暗い顔をしている。


「ヒカルと何かあったのか?」


と妙に感じた俺はマヤに聞く。


「ヒカル君と直接あった訳じゃないんだけど

去年の大会で私の友達がヒカル君と当たったんだけど

もう勝負はついてるはずなのに必要以上に攻撃して…

痛みつけて……。

大怪我させて……。

見てるのも辛いくらいだった…。

ジン君のそんな姿見たくない。」


なるほどな。絶対降参しよう。


「あぁ、なるべくマヤに心配かけさせないようにするよ。」


俺はマヤを安心させるためにそういった。


「約束だからね…。

……ジン君のこ………だから…」


夕方の太陽の光に照らされて

髪を耳までかきあげ 顔を赤くして言うマヤ。


彼女に敵う美貌はあるのだろうか。


そう思わせるほど綺麗で何処か儚い印象を俺に与えた。


あまりの美貌に見とれてしまっていた俺は最後マヤが言った言葉が聞き取れず


「ん?最後聞き取れなかった。すまない。

もう一度言ってくれるか?」


と聞き返すも


「ううん!なんでもない!」


と顔を赤くしながら残ったコーヒーを飲み


干すのだった。







マヤと別れ自宅に戻った俺は、いつもの様に夕食をとる。


そして俺はいつもの習慣として魔力をぎりぎりまで消費してから風呂に入り寝る事にした。


これはマヤと話している時にも話したが急激な魔力消費は身体にかかる負担が大きく上手く魔法を使えなくなったり気を失ったりしてしまう。


そうならないためにこうして毎日欠かさず習慣としてやっている。


……理由はそれだけでは無いんだが。


━━━━━━━━空よ、風よ━━━━━━━━━


━━━━━━今一度我に世界の理に抗う ━━━━━━


━━━━━━━━翼を授けよ…━━━━━━━━


━━━━━━フィクショナルウィング━━━━━━━


そう呟くと床に大きな青色の魔法陣が現れ俺の体は宙に浮く。


魔法は基本、詠唱+使う魔法の名前をセットで言う事で発動する。


しかし無詠唱で発動することも出来る。


今回は詠唱も行ったが、俺は実践で魔法を使う際は無詠唱だ。


無詠唱は威力は落ちるが発動までの時間を大幅に短縮されるため相手に隙を与えずに済む。


それと魔法を使う際は魔力を込める目的地のようなものが必要になる。


そのため皆それぞれ魔法具と呼ばれるものを用意している。


一般的なものは杖や剣だが大半がこの2パターンだ。


シンプルだが1番使い易く実践向きだから使う人は多い。


俺は僧侶が使うような錫杖を魔法具としていつも使っている。


その錫杖の中には仕込み刀を忍ばせてある特注品だ。


俺は魔法だけでなく剣術もできるため

杖と剣の両方を扱えるようにしているのだ。


わざわざ仕込み刀にしたのは相手に手の内を知られないようにするためだ。


魔法と武術を組み合わせられる事は特別なことではないので校内でも魔法と武術を組み合わせる人はよく見られる。


この錫杖は親の形見でもあるため結構大事にしている。


しばらく宙に浮き続けていると俺の魔力が無くなりかけてくる。


そろそろか……


しばらくして


ザワザワ…


と俺の体がざわつき始める。


体中の血液が沸騰したように熱くなり気を引き締めないと理性を失いそうになる。


(くっ!やはり来るか)


ザワザワ……。


ざわつきは収まることなくむしろ酷くなっていき

俺の魔力の質が変わっていくのを感じる。


(憎い…憎い…誰でもいい…殺したい…)


俺では無い何かが俺の体の中に語りかけてくる。


(お前も憎いだろう…さぁ…この世界に絶望を……!)


「…そんな事させるかよ…!」


と俺は荒ぶる魔力を抑えようと錫杖を前に立て自分の魔力に集中する。


シャリンと錫杖が音を立てる。


すると先程のような青色の魔法陣ではなく

禍々しい紫色の魔法陣が浮かび上がる。


「うぉぉ…!」


と俺は暴走する魔力を抑えにかかる。


……。


………。



………2~30分は経っただろうか



俺の心を闇に染めようとする声は無くなり、ざわつきも収まっていた。


俺がなぜ習慣として魔力を使い果たしているのか。


前述の通りでもあるのだが、本当の理由。


それは俺は闇属性魔法が使えてしまうからであり

闇属性魔法その物を克服するためでもある。


物心ついた時から俺は闇属性魔法を使っていた。


それは俺だけでなく俺の親

つまり母親も俺と同じように使えていた。


だがある時どのようにして知ったのかは知らないが母親がそれを使える事を知った国は母親を捕らえその場で殺した。


「ジン!早く…早く逃げるのよ! 振り返らないで!

そして…強く真っ直ぐ生きなさい。

愛してるわ…ジン…」


あの時の母親の最後の言葉は今でも脳に深く刻み込まれている。


俺の母親は闇属性魔法を、完璧に克服してはいなかった。

最後の最後で俺を守るべくその者らと戦い殺された。


魔法属性は遺伝により決められることが多いため息子の俺にも疑いがかかる事は言うまでもない。


事実俺は闇属性魔法を使えてしまうのだから。


だから俺は母親が命を賭して時間を稼いでいる間にとにかく遠い所まで

全力で走り逃げて難を逃れた。


しかしその時に一度だけ振り返って母親を見た。


いや、見てしまった。


その時見た光景は…母親が殺された後だった。


それは衝撃的で何も考えられなくなってしまい走っている時どこを走っているのか分からなくなったが無我夢中で走り続けた。


当時は母親のあの言葉をただ聞いてただ逃げるしかなかった。


…そうするしか自分が助かる道はなかったから。


今思えば俺も母親も助かる道があったのかもしれない。


だが今考えてももうあの時には戻れない。


あの時もっと力があれば…。


あの時こういう風に行動していれば…。

等と考えているとやるせない気持ちになる。


このやるせなさを何処にぶつけていいのかも分からずに…。


今はなんとか誤魔化してこの国で生き長らえている。


闇属性魔法を使える。


ただそれたけの事で俺達の生きる道は閉ざされてしまう。


だから俺は水属性魔法を使えるようにして

この国の掟を掻い潜っている。


俺は最弱の魔法属性である水と


最強の魔法属性である闇の2つを使えるのだ。


都合のいいことに複数の属性を使うことは

困難とされ国内でもそう居ないため掻い潜りやすかった。


闇属性魔法を使えるものは悪だ。


とこの国の人間たちは口を揃えて言う。


浅はかな考えだ。俺も同じ人間だ。


魔族ではない。


だが俺一人で国相手にどうこうできるはずもなく

この国の掟に従うしかない。


前にも話したがこの国で闇属性魔法が使える事を知られると国内でも精鋭の魔法士がその者を捕らえにくる。


その魔法士は王宮魔法士と呼ばれこの国の王直属の部下であり

最強の魔法士であることに間違いないだろう。


しかもそれが7人いる訳だからその人達から逃れることはほぼ不可能だ。


捕らえられたら最後、その者の命はない。


問答無用で処刑されてしまう。


理不尽な話だ。そう思うがしかし納得出来てしまうところもある。


闇属性魔法の特徴として先程のような人の心を闇に染めてしまうという特徴がある。


俺はこれを勝手に悪魔の囁きと呼んでいる。


この囁きに1度でも染まってしまうと

人を殺したくなり人を殺すことに快感を覚えてしまう。


そうなってしまったら何人もの尊い命が失われてしまうだろう。


そうならないようにこの国では闇属性魔法を使える者を根絶やしにしようとしている。


この闇属性魔法その物を克服しない限り俺に生きる未来は無い。


そのためにあえて毎日自分の魔力を使いきり囁きと戦っているのだ。


この囁きに負けない限り心が悪に染まることは無い。


最近では相変わらず大変ではあるものの

心を落ち着かせ魔力を集中させれば抑えられるようになってきた。


俺はまだ殺される訳には行かない。


まだやらなければならないことがある。


その日まで必ず生き抜いてやる。


魔法大会まであと数日。


無事に終わればいいが、、。


魔力が無くなりふらふらするので急いで風呂に入り寝ることにした。


あぁそうだ。


マヤといる時思いだせなかった今流行りの飲み物の名前思い出したぞ。


タピオカだ。


まだまだ俺は現代人だ。


ちゃんとついていけてるな。


と安心した俺は深い眠りについた。



いかがでしたでしょうか?

少しでもこの世界線が気に入って頂けましたら、次回作にもご期待いただけると嬉しいです!

魔法とかそのた諸々のネーミングセンスは大目に見てくださると嬉しいです(笑)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 設定が面白いです [気になる点] ちょっと冒頭にもあったけど、やっぱりちょっと変… 例えばこことか やけにうるさい目覚まし時計で目が覚めた俺はいつものように支度を し朝食を適当に済ませ…
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