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第七話  坊っちゃまの真実愛する人

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「坊っちゃま・・今の発言は問題だったと思いますけど?」


 ハインツ・バッテンベルグの侍従であるコルネリウスが銀縁のメガネを人差し指で押し上げながら問いかけると、ハインツは呆然とした様子で口を開いた。


「コルネリウス、私は今、一体何を言っていた?」

「リン様に対して、自ら壺詰めにしてやると仰っておりましたが?」

「あー〜!」


 イヴァンナの想像している通り、バッテンベルグ家の次期当主であるハインツ・バッテンベルグは完全なる拗らせボーイだった。


「嘘だろ、嘘だろ、まさか、私自らがリンを壺詰めになど」

「言っていました、絶対に言っていました」

「あー〜!」


 ハインツが初めてヴィトリアと顔を合わせたのはシュベーリン貴族学校であり、三年間をクラスメイトとして、初恋の人となったリンを自分なりに守ってきたつもりではあるのだが、相手は全くそんな風には感じていないということを侍従のコルネリウスは知っている。


「父が・・父が珍しく私の意向を重んじて、リンとの結婚を進めてくれているというのに、私は何故、壺詰めなどと・・」


「いつものことじゃないですか、『夜の女神』と頭の中で称えながら、口では『ゴキブリ』と呼び、心の底から希少民族でもある黒の一族を尊敬しながら、『家すら持たぬ下賤な一族よ』などと言ってしまう坊っちゃまですもの。そもそも、ご当主様は坊っちゃまの結婚相手としてリン様をお決めになった訳じゃありませんよ?保護しろと言っただけですからね?」


「保護しろ、つまりは、私のものにしろと同義であろう?」

「何故そうなるんですかね?」


 コルネリウスは大きなため息を吐き出しながら、自分の主人のやたらと整った顔を呆れた顔で見つめたのだった。


 ハインツ・バッテンベルグはとにかく顔が良い、西方地区のこの年代の貴族たちを一堂に集めてみても、一番と言って良いくらい顔が良い。シューベリン貴族学校に入学した時は、女子生徒が四重や五重の輪となって取り囲み、一時期、パニック状態になるほどのモテぶりを発揮していたのだが、一切、自分に興味を持たない二つ年下の少女を好きになってしまったのは青春の一コマみたいなものだったのかもしれない。


 学生時代、有象無象の女子生徒たちを跳ね除け、ハインツの隣の席を勝ち取ったのは男爵家の娘であるドロテア・ベルツだったのだが、ハインツの好意は一直線にリンへと向き続けていたのは間違いない。


 確かに女性避けとしてドロテアを利用しているところはあったけれど、ドロテアは所詮男爵家の娘となる。学校卒業後は王都の貴族学校に通っていた伯爵令嬢と結婚し、その後、二人の子供に恵まれた後、ハインツの妻は愛人と共に駆け落ちした。


 寄子である男爵の仕事を手伝うドロテアとハインツが、学校を卒業後、顔を合わせるなんてこともたまにはあったのだが、いつの間にか、学園時代に恋人同士だったドロテアとハインツが復縁したなどという噂が広がり出していったわけだ。


 その噂を信じたハインツの妻は、当てつけのように浮気をして家を出た訳だけれど、ハインツは愛人のドロテアを放り投げてでも、愛する妻を追いかけて来るだろうと考えていたのに違いない。


 実際のところ、ハインツの心にずっと残り続けていたのがリン・ヴィトリア・アヴィスただ一人だったので、ハインツは駆け落ちした妻を追いかけることはせず、妻の実家に即時相談。両家の話し合いの結果、双方の家の名を守るために、駆け落ちした妻は病死扱いとして中央の記録院に届けることにしたのだった。


 ハインツの愛人だと主張するドロテアだけれども、一度としてハインツと深い関係になったことなどないのだから狂言にも程がある。今、現在、腹の中にいる子供は、おそらく不定期で遊んでいる複数人の男の中の誰かの子供なのだろう。


 親子関係の証明はプレートさえあれば三秒で出来るものなので、ドロテアが子供を産んだ後も、ハインツの子供だと主張するようなことがあれば、即座に遺伝子による証明をするつもりでいる。


 顔が良すぎるコルネリウスの主人は、女運が悪く、更には想像を絶するほどの不器用さを好きな人相手に見せる男なのだ。


 本来ならキャンプなど行かずに屋敷で保護すれば良いところを、

「まずは交流を持つところから始めないと・・」

 などと言ってほくほく顔をしているところを見ているだけで、胃が痛くなってくる。


 ただでさえ、学生時代の挨拶が、

「おい!ゴキブリ!」

 だったのだ。


 女性には柔和で優しいハインツから、唯一塩対応される年下の黒髪の少女は、

「まあ、可哀想!あのお優しいハインツ様が、あんな態度を取るなんてよっぽどよ!」

「本当に、哀れな存在ってこういうことを言うのね!」

 と、周囲の女子生徒からは言われ、最下位認定を受けたことによって空気のように無視されるようになったのだ。


 可愛らしいリンにちょっかいを出そうとする男子が、それは沢山いたのだが、

「うちの領民に何をする?」

 と言って、ハインツが常にボコボコにして歩いていた為、誰もリンには近づかないようになったのは間違いない。


 貴族学校の中で、希少民族とはいえ、平民身分のリンが浮いた存在だったのは間違いない。他の貴族令嬢にはない凛とした美しさを持つ黒眼黒髪という異色の少女が、卒業をするまで陰口を叩かれる程度で済んだのは、ハインツのお陰であるのは間違いない。


 ただ、感謝されるような守り方ではなかったのは間違いないのだけれど。


「坊っちゃまが、愛する人を壺詰めにはしないために中央に対して働きかけていたのは知っていますよ?坊っちゃまが、黒の民の希少価値を示し続けていたのも知っています」


 黒の一族は遥か昔、大陸の東から移動してきた部族ということになる。

 水脈を探すのに特化した一族であり、彼らが辺境で定住せずに生活を続けているのも、水脈を探し、井戸を作って歩いているからに他ならない。


 黒の一族の族長の娘が王家に嫁ぐことが盟約で定められているのも、水脈を探る貴重な一族を王家に取り込む為に他ならない。


 フィルデルン王家は確かに、黒の民の価値を理解し、彼らの存在を尊いものとして大事に守って来たのではあるが、いつの時代からか、黒の民を蔑視し、異民族ゆえに奴婢や奴隷として扱っても問題ないと考えるようになり、結果、王家に嫁いだ黒の姫が、壺詰めにされた上で返却されることになったのだ。


 王家の対応に抗議をしたバッテンベルグの先代当主は王家の怒りを買い、爵位を無能の息子に譲ることを強制されることになった。そうなって以降、誰も彼もが、ハインツに早く爵位を継いでもらいたいと考えている。


 ハインツにはすでに二人の息子がいるし、彼自身とても有能であるのは間違いない。

 黒の一族の重要性も彼は十分に理解をしている。

 好きな人を相手にした時の、どうしようもない暴挙を除けば、かなり優秀な人なのは間違い無いのだけれど・・


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