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第十九話  激しく後悔しています

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

私には前世の記憶があるわけですよ。生まれ変わる前は、日本という国で生活をしていたし、会社員として働いていた。自分の名前とか、家族構成とか覚えていないんだけど、結婚はしていなかったかな。


 前世も派手な交際をするようなタイプではなくて、真面目に付き合って、なんとなく別れる。交際人数は一人とか・・二人とか・・よく覚えていないんだけどね。


「リン、とりあえず君に謝罪をさせてくれ」


 バッテンベルグ家の跡継ぎ息子であるハインツは、私がキャンプポイントに現れるなり、九十度くらいに頭を下げて謝って来たってわけ。


 側近のコルネリウスさんが人払いをしているので、キャンプ用具一式が完璧に用意されたB23ポイントには、ハインツと二人の子供たちしかいないような状態です。


「貴族学校に通っている間、君のことを『ゴキブリ』と呼んだことも謝る。先日は君を壺詰めにすると言ったことも謝る」


「パパがごめんちゃ〜です」

「パパが迷惑かけました、ごめんなさい」

「いやいやいやいやいやいや」


 こちらの貴族は結婚するのが早いんだよね。中央貴族である伯爵家の令嬢と結婚したハインツは、私よりも二歳だけ年上だっていうのに、二歳と四歳の息子が居るのです。二人揃って頭を下げている姿が身悶えするほど可愛らしい。その可愛らしい坊やたちに頭を下げられている私、悪者みたいじゃないですか。


「全然!全然大丈夫です!」

「それじゃあ、許してくれるだろうか?」

「許ちてくれうの?」

「辛かったら許さなくてもいいんですよ?」 


 領主の息子様であるハインツはね、顔がいい、とにかく顔がいい。西方貴族の中では飛び抜けた美男子と言われていることも知っている。金髪碧眼の、王子様らしい美しい顔立ちの父親によく似た子供たちは天使のよう。すごい!顔が美しいのって遺伝をするのね!


「許します!許します!だから頭を上げてください!」


 学生時代の三年間は長い。蟠りは色々とあるけれど、天使を前にしたら何でも許せてしまうのは何故だろう?


「それじゃあ、僕らと一緒にキャンプをしてくれますか?」

 長男のエッカルトはまだ四歳だというのに、しっかりしているなぁ。

「キャンプちてくれましゅか?」

 次男のカールは二歳、言葉ったらずが可愛すぎる。


「する!する!みんなでキャンプを楽しもう!」

「本当に?」

「やったー!」


 はしゃぐ子供たちを見つめるハインツの顔はお父さんという感じで、慈愛を含んだ眼差しを子供たちから私の方へ向けると、

「ずっと君のことが好きだったんだ。だから、こんな時間を取れることが何よりも嬉しいよ」

と、紺碧の瞳を細めながら言い出したのだった。


「いや・・いや・・いやいやいやいや、好きだったとかないでしょう?貴方、私を嫌っていたじゃないですか?」

「嫌ってないよ、本当に、始めて会った時から好きだった」


 胃が痛い、物凄く胃が痛い。


「君たち部族に対する王家の対応もどうかと思ったし、君が、叔母上のような悲惨な状況にならないように、中央への働きかけも行なっていた。それが、こんな結果になるとは思わなかったんだけど・・・」


 ハインツは私の頬を軽く指で撫でながら言い出した。

「僕のことは嫌いなままでいい。だけど、僕は君を守りたい。君と、二人の子供は僕にとって宝も同じで、それは死んでも守りたいと思うほど大切なものなんだ」


「パパ!虫さんいたよ!」

「こらっ、パパはお話をしているんだよ」


 はしゃいだ声をあげる弟のカールの口を塞ぐエッカルトが可愛すぎる。確かに子供たちが宝だというのは分かるけど、私まで一緒にするのはどうなんだろう?


「今だけは、子供達と一緒に楽しんでくれないかな?君と、子供達と、僕で、幸せな時を作りたいんだ」

「ええーっとええーっと」


 切実な眼差しで、子供達と一緒にキャンプを楽しもうと言われているわけだけれども、何故だろう、何故なんだろう、なんでこんなに罪悪感が湧き出てくるの?


 さっきまで、よく知らない男にアーンをされていたから?

 美味い酒と酔った勢いで、よく知らない男を家に連れ込んでいたから?

 ついさっきまで、よく知らない男とイチャコラしていた女が、こんなに切実な眼差しを向けられて、愛を語られている状況は、私的にはどうかと思います。


 罪悪感で胃が痛いんです!胃が痛いんです!


「と・・と・・とにかく・・遊牧民族出身なんで、キャンプは得意なんです!日頃、忙しくて子供達との時間が取れなかったりと色々ありますもんね!だったら、今を楽しまなくて、いつ楽しむんだって感じですよね!」


 キャンプは得意、私!キャンプは得意です。

 キャンプ中はハインツのお付きの者たちや、護衛、側近のコルネリウスさんも居ないようで、家族団欒のキャンプという感じで時間が過ぎていくことになったわけ。


 特製タレに漬けた魔物の肉を串に刺して焼いて食べたり、パンにジャムやバターを塗って食べたり、集合したのが夕暮れ時だったから、子供たちを連れて渓谷に沈む夕日を眺めに行ったり、日が沈んだら手持ち花火のようなもので子供たちを楽しませたりして、まるで前世のキャンプと同じような感覚で楽しむことになったわけです。



 遊んで疲れ切った子供たちが先に眠ってしまったので、私とハインツは焚き火を見ながらしばらく話をすることになったんだけど、

「貴族は政略結婚が当たり前なんだけど、僕は妻を愛してはいなかったんだ」

 そう言ってこちらを見つめられたら、また、忘れていた罪悪感が噴水のように噴き出して来ましたよ。


「妻は僕と男爵の娘であるドロテア嬢との関係を疑っているようだったけど、僕の心の中にあったのはいつでも君だった」


 罪悪感がひどいです。

 なんで酒の勢いに呑まれちゃったかな〜、あそこで、よく知らない男と深い関係になっていなければ、こんな思いもしなかったのかなぁ。


 紺碧の髪の毛、菫色の瞳、あっちもあっちで、メチャクチャイケメンで、なんかこう、なんていうの?ハインツクソ野郎が、私を壺詰にするなんて言っていたし、自暴自棄になっていたのもあって、ヤケクソ行為に出ちゃったのは間違いないのよ。


 あそこでウィルさんを自分の家に引っ張り込んでいなければ、もっと、きちんと、罪悪感なしの状態で、この人の話をきちんと聞けたのかもしれないけれど。


正直に言って、激しく後悔しています。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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