表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/46

9. 婚約解消に向けて②

「サーシャ様。あんな男の言葉、無視して良いのですよ」

「良いのよ。私が無事に子供を産めないのは事実だから……」


 身体つきのことはどう言われても気にしない。


 胸の大きさが私と同じくらいの大きさのお母様は、私達兄妹を無事に育ててくれた。だから反論出来る。

 身体が細いことを言われても、私より細身で母親になれた人は何人も居るから気にならない。


 けれども、私が無事に子を授かれないのは決まっていること。


 だから何も言い返せなくて。

 悔しくて。


 涙を堪えられなかったのよね……。


「出産は体力が無いと難しいそうですよ? 食事を抜かれていたら、無事に産める方が奇跡だと思います」

「その知識はどこから来てるの……?」

「奥様とお話しした時に聞いたのです。出産は体力勝負だと」

「そうだったのね」


 伯爵家なら、普通はお医者様や使用人からの助けがあるけれど、ダリアの男爵家だとお財布事情から難しくなるかもしれない。

 だからダリアには先に教えていたのだと思う。


 私も子供を産むのは命懸けということは聞いていたけれど、細かい知識は無かった。


「それと、いざという時のために医学書も読んでいますから」

「もう読んでいたのね?」

「最近読み始めたばかりですよ?」

「そ、そうだったのね」


 なんとも言えない空気になってしまったけれど、お陰で落ち着くことは出来た。

 だから、話し合いをしていた部屋に戻る私。


「席を外してしまって申し訳ありません」

「こちらこそ、息子が失礼なことを言ってしまって申し訳ありませんでした」


 部屋に入ると、すぐにブラフレア伯爵様から頭を下げられて、戸惑ってしまう。

 この方は、前回の人生ではオズワルド様に領地を追い出されていたから助けてもらえなかった。もしも領地に居たら、違った人生だったのかもしれない。


 ……なんて思ったけれど、グリグリと頭をテーブルに押さえつけられジタバタと暴れているオズワルド様を見たら、そんな希望はどこかへ吹き飛んでしまった。


「オズワルド! お前も謝りなさい!」

「割れる、頭が割れる! 跡継ぎの大事な頭割れちゃっていいのですか!?」

「そんな腐った頭、一度割った方が良いわ! 分かったらさっさと謝れ!」

「あの、ブラフレア伯爵様……。

 大変言いにくいのですが、この机は安物ですので本当に割れてしまいます」

「そうか、それは失礼した」

「はあ、死ぬかと思った」


 拘束が解けて頭を上げたオズワルド様は悪びれた様子も無く、不貞腐れた様子でソファに身を投げた。

 伯爵様の方は、見習いたくなるような姿勢を貫いているというのに、どうしてこんな出来損ないになってしまったのかしら?


 演技だけは得意なオズワルド様のことだから、教育も演技で切り抜けたのかしら?


 ちなみに、私は伯爵夫人になる前の教育などはされなかったから伯爵家の教育事情は分かっていない。

 私の家のマナーや作法に関する教育が公爵家並に厳しいことは分かっているのだけど……。


 厳しい原因は、元王女様だったお母様に恥をかかせないため。

 お陰で高位の家の方のパーティーに参加しても恥をかくような事は無いけれど、婚約期間がたったの1ヶ月になってしまった。


「証拠には全て目を通しました。全てこちらの有責で受け入れます。

 慰謝料は今月中にお渡しします」

「ご理解頂けたようで何よりです。

 婚約はこのような形となってしまいましたが、物の取引はお互いの領民の命がかかっていますので、今まで通り行いましょう。

 サーシャ、これでも良いかな?」

「はい。私としてはオズワルド様との結婚が無くなれば良いですから」


 そう口にして、婚約解消の書類にサインをする私。

 オズワルド様のサインはというと……。


「書け」

「嫌です」

「書け」

「……」


 ……伯爵様の圧に負けて、渋々書いていた。

 散々馬鹿にした私との婚約解消を嫌がるだなんて、何か理由があるのかしら?


 気のせいだと良いのだけど……。

「続きが気になる」「面白い」と思っていただけましたら、是非ブックマークや下の☆☆☆☆☆で応援して頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水空 葵さんの新着小説
あらすじ  お互いに好きになって、私達は婚約したはずだった。それなのに、王女殿下が私の婚約者のトーマス様を奪おうとしている。 でも、トーマス様は貴女のことがお嫌いのようですよ? どんな理由があっても、大切な婚約者様は絶対に渡しませんから!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ