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8. 婚約解消に向けて①

「サーシャ様、大丈夫ですか!?」

「これくらい平気よ」


 騒ぎの輪から抜け出すと、様子を見ていたらしいダリアが駆け寄ってきた。

 肩は痛いけれど、耐えられない程ではないから、笑顔を浮かべて見せる。


「無理しないでくださいね?」

「骨が折れたくらいで死にはしないわ」


 そんな事を話していたら、後ろの方が少し騒がしくなった。


「離せ! 俺は伯爵の息子だぞ!」

「断る。俺は侯爵の息子だからな!」

「離しなさい! ねえ聞いてるの!?」

「サーシャ様の敵は私達の敵、お断りしますわ」


 どうやらオズワルドが取り押さえられているみたいで、リリア様と一緒に暴れている様子が見えた。

 学院内で暴力を振るったら、公爵家の方でも取り押さえられるのに……。


 本当に馬鹿な人達。そう思ってしまった。




 それからしばらくして、医務室に入った私は学院に常駐しているお医者様と向かい合っていた。

 今の私は制服のボタンを上の方だけ外して、肩だけ見えるようにしている。


「こりゃ酷い。よく耐えられましたね」

「これくらいの痛みなら耐えられますもの」

「触るまでもなく、明らかに骨折していると分かります。肩の骨なんて簡単に折れないはずなんですがね……」


 肩を見せただけでお医者様は骨折の診断を出してくれて、診断書も書いてもらえた。

 これで証拠は完璧だから、治癒の力を使って治した。


 逆行する直前は使えなくなっていたけれど、今は問題なく使えるのよね……。

 使えなくなっていた原因も探らなくちゃ。


「その力、本当に羨ましいわ」

「使える間ならいつでも貸すわよ?」

「もし怪我したら頼らせて貰うね」


 そんなやり取りをしながら医務室を後にすると、オズワルド様が反省室に入れられる様子が見えた。

 すっかり優しい男の仮面は剥がれたみたいで、文句を言う声が私達のところまで聞こえてきている。


 早く婚約解消したいわ……。


 そう思ってしまった私は何も悪くないと思う。




   ◇  ◇  ◇




 あれから二日。

 私とオズワルド様の婚約解消のための話し合いをする事になった。


 場所はオーフィリア子爵家の応接室で、オズワルド様の家──ブラフレア伯爵夫妻に来てもらう形になっている。

 婚約を結んだ時もブラフレア家からの申し出だったから、同じ形を取っていたのよね。


「この度は愚息がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」


 ちなみに、話し合いはもう始まっていて、ブラフレア伯爵様が頭を下げている。

 今回の話し合いには、私の両親とオズワルド様の両親、そしてオズワルド様本人が同席している。


 そのオズワルド様は悪びれる様子も無く、ただソファに座っているだけ。


「オズワルド! お前も頭を下げんか!」

「嫌ですよ。愛人を作ることの何が悪いんですか?」

「愛人を作って良いのは子供が出来なかった時だけだ! サーシャ嬢を馬鹿にするつもりか!?」


 そんな様子に怒りを覚えたのは私だけでは無かったみたいで、伯爵様が声を上げていた。

 けれどもオズワルド様の胸には響かなかったみたいで、彼の態度は変わらなかった。


「無事に子を産めるとも限らないですよ。念には念を、です」

「馬鹿なことを言うな! それが失礼だと言っている!」


 あの時は体力が無かったとはいえ、私が無事に子を産めなかったのは事実。

 オズワルド様の予想は当たっているのよね……。


 そう思うと、悔しかった。


「大体、無事に産めたとしてもこの胸じゃ無事に育つかも分からないですよ。顔が良いのは認めますよ。太ってないのも良いです」


 身体のことを言われたら何も言い返せなくて、悔しさで涙が溢れてしまった。

 体格なんて努力でもどうにもならないから……。


「お前と言う奴は……! お前が誰に育てられたのか分かっているのか!? お前の母親よりもサーシャ嬢の方があるだろう!」

「関係無いですよ。サーシャではリリアには勝てませんから」

「もう黙ってろ!」

「ギャッ!?」


 ドスッという鈍い音に続けて、オズワルド様の悲鳴が聞こえた。

 でも、涙はなかなか止まってくれなくて、落ち着くまで別の部屋に移動させてもらう事になった。

「リリア許せない」「オズワルド許せない」「サーシャ頑張って」など思って頂けましたら、ぜひ下の☆☆☆☆☆やブックマークから応援お願いします!

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