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4. 一年ぶりの日常

 貴族なら通うことが慣例になっている学院の制服に着替え終えた私は、朝食のために食堂に向かった。

 一年近く帰っていなかったけれど、案外造りは覚えているもので、迷わずに済んだ。


 ちなみに、私の家は王都に隣接する領地を持っていて、屋敷から王都にある王立学院までは馬車で二十分ほどで着くことが出来る。

 オズワルド様の家は領地が王都から離れているから、学院を卒業するまで貴族専用の寮で生活していた。


 リリア様も寮で暮らしているはずだ。



 そこまで情報を整理したところで、気付いてしまった。

 人目の少ない寮の中なら、バレずに簡単に浮気できてしまうわ……。


「サーシャおはよう」

「お兄様、おはようございます」

「お兄様、お姉様。おはようございます」

「パスカルもおはよう」

「おはよう、パスカル。寝癖立ってるわよ?」

「えっ?」


 パスカルにも侍女が付いているはずなのに、どうして寝癖がそのままなのかしら?

 不思議に思っていると、パスカル付きの侍女が口を開いた。


「やっぱり1人で出来ないじゃないですか。直しに行きますよ」

「いや、1人で出来る! もう子供じゃないんだから!」


 そういえば、パスカルは反抗期真っ只中だったわね。

 私が何かお願いしても、全部拒否されていたわ。


 ちなみに、学院には13歳になる年から通い始めて、16歳になる年の夏に卒業する。

 今の私は15歳でオズワルド様は16歳。


 あと1ヶ月で彼は学院を卒業して、私は自主退学することになっている。



 男性にとっての学院は、領主になるために必要な勉強をする場所だから卒業して領主になる権利を得る必要がある。

 けれども女性にとっては卒業しなくても問題はないから、ある程度の学を身に着けていれば婚約者の卒業に合わせて退学して、そのまま結婚するというのがよくある流れだ。


 私も例に漏れず、このまま婚約を続けていたら退学することになるのよね。


 ちなみに、お兄様も16歳だけれど、婚約者様が卒業を強く望んでいるそうで結婚は2年先を予定している。

 恋愛での婚約とはいえ、相手が公爵家のご令嬢だと逆らえないのよね。


 弟のパスカルは14歳。仲の良いご令嬢は居るみたいだから、そろそろ婚約すると思うのよね。

 でも、家との連絡が絶たれていたから、本当に婚約したのかは知らない。


「早くしないと遅れますよ?」

「俺だけで出来るから大丈夫だって!」

「パスカル、侍女を困らせないの!」

「はぁい」


 不満そうに口を尖らせるパスカルだけど、私達兄弟の仲は良い方だと思っている。

 性別が違っていても歳が近いから、話も合うのよね。


 お願い事は聞き入れてくれないけれど、少し強く言えば聞き入れてくれる。


「昨日俺が注意したときは無視されたんだけどな……。パスカル、もしかしてサーシャが好きなのか?」

「は? そんなんじゃないし!」

「まあまあ、姉弟仲が良いのは良いことだ。

 待っているから寝癖を直してきなさい。仲いい子に嫌われるぞ?」


 いつから居たのかしら? いつの間にか私の向かい側に腰掛けていたお父様がそんなことを口にする。

 その隣にはお母様も座っていた。


 本当にいつから居たの?

 ちなみに、お父様とお母様も仲が良くて、この歳になっても腕を絡めている。


 お母様がちょっとだけ羨ましいわ。

 一度目の時はこんなこと思わなかったのに……。


「そんな子居ないから!」

「はいはい、早くしなさい」


 それだけじゃない。

 久々に家族に囲まれて、美味しそうな食事が目の前にあって。


 これが普通だったはずなのに、すごく嬉しい。



「お待たせしました」

「よし。では、いただきます」

「「「いただきます」」」


 みんなで手を合わせてから、朝食を口に運ぶ私。

 一年ぶりに食べるマトモな食事は、今までに感じたことがないくらい美味しかった。

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