シンデレラの運命は一直線
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貴重なお時間に見合いますように……
それから数ヶ月後。
姫乃皐月が誕生してから一年以上が経ったある日。
秋川さんとのコラボ動画は数日で数100万回を超える再生回数を叩き出し、とてもバズった。そのお陰もあって秋川さんのチャンネル登録者数は倍に増えた。ちなみに私のチャンネルもコラボ効果も相まって無事100万人を達成する事が出来た。
そして私にもうひとつ目標が出来た。
それは秋川さんのチャンネル登録者数を優に超える事。結構先の話になりそうだけど…。
因みにあれからというもの冴島からの接触やちょっかいは目にしなくなった。いい加減学習して懲りたのか、それともまだ何か企んでいて様子を見ているだけなのか。正直な所奴が何を企んでいようとどちらでも良い。私はいつでも受けて立つし奴の言いなりになるつもりもない。今までみたいにね。
それから想像通り、私の男装での仕事が増えた。一応、ありのままの姿で表に出ると、本来の自分を知っている人から噂が立ちボロが出る危険性もあるので姫乃の時同様メイクをして出演している。なのでその姿は素の自分とは程遠いぐらいイケメンに仕上がっている。因みにメイクのイメージには姫乃皐月に初めて声をかけて来たあのナンパ男を勝手に参考にさせてもらった。あんなでも結構イケメンだったから。
案の定、顔の良さもあって人気が出てくれた。本来の男の姿すら偽るようになったせいでもはやどっちが本当の姿なのか分からなくなるほど。少し仕事のしすぎなのかも。
それでも私は姫乃皐月として生き続けるしかないのだ。
それが覚悟をしたという事だと自分で言い聞かせて。
「姐さん…姐さんったら!」
私の肩を強く揺らす樹。
「うん?」
「うん?じゃないですよ!なにぼーっとしてるんですかー」
「いやさ、そろそろ終盤だな~って」
「何言ってるんですか…姐さん働き過ぎなんですよ。それとも働き過ぎで欲求不満とか?私で良ければいつでもお相手しますよ」
「結構。遠慮しておくわ…」
「相変わらずの塩対応。もう、姐さんったら……ホント照れ屋さんなんだから!」
そんな様子でいつものようなやり取りをする私達。
「彩華も相変わらずよね。こんな場所でも変わらず同じやり取りが出来るんだから…」
「だって姐さんがぼーっとしてるからじゃないですか~。それにこんな場所だからこそいつもみたいなやり取りをして落ち着こうとしてるんですよー。…実は私だって結構緊張してるんですから」
「あら、そうなの?」
「当たり前じゃないですかー!だって今、私達はあのレッドカーペットを歩いてるんですよ。緊張しないわけないじゃないですかー!」
「でも驚きよね。私達のドラマが映画になって、日本ではそこそこの評価だったのに、海外で公開されたら大ヒットしてとんでもないくらい人気になっちゃったんだから。海外パワーって恐ろしいわよね…」
「本当ですよ。まさか私がここを歩くける事になるとは思ってもいませんでしたから…でも姐さんに感謝です。姐さんと出会ってなかったらこうはなってなかったと思います。本当にありがとうございます」
「いいのよ。別に…」
「あれ、もしかして本気で照れてます?」
「バッ、んな、わけないでしょう!?…な、なに言ってんのよ?」
「キスします?」
「え、ほんとに……ってするわけないでしょうがぁ!!なんでそうなるのよー!」
私は彩華の頭を持ってたカバンで叩く。
「イタっ!何するんですかー?!いいじゃないですかー!ちょっとぐらい!減る物じゃないんですからー!」
「そういう事じゃないのよー!あ、ちょっと待ちなさい!」
逃げ出す樹を必死に追いかける私。その様子はまるで若いカップル同士の鬼ごっこ。
一応言っておくが、ここはレッドカーペットの上だ。昔もこれから先もこのマットの上でこんなやり取りをしながら歩いた人間は私達しかいないだろう。
そんな無礼な行いをしていると人にはバチが当たる。
私はマットにつまづき姿勢を崩して転んでしまう。
「姐さん!?」
「大丈夫、大丈夫。流石にちょっと調子乗り過ぎたわね……」
立ちあがろうとした瞬間、一本の手が差し伸べられる。
「大丈夫ですか?お転婆なお嬢さん?」
「あ、はい。すみません…」
私はその手を掴み立ち上がる。
立ちあがろうとした瞬間、その人の顔を見上げる。
その容姿はまるで絵本から出てきた王子様の様だった。普段は何をされても動じない私だが、今回だけは違った。目が合った瞬間、私はその目を逸らし思わずそっぽを向いてしまう。それからもまじまじと顔を見る事は出来ず、自分でもよく分かっていない。
「ありがとうございました。助かりました。すみません、し、失礼しますっ!!」
取り敢えずお礼だけ済ませると私は逃げるようにここを離れる。
「彩華、行くわよ!」
「あ、姐さん?!」
私は彩華を強引に連れて予定通りマットの先へ進んでいく。決して後ろは振り返らない。
振り返ってしまったら自分の中の禁断の扉が開いてしまう気がして。
「ちょっと待って!」
私は後ろから聞こえる声にも聞く耳を持たず前へ進もうとする。が、
「待てって!」
ガッと後ろから強引に私の手を掴まれる。
私は仕方なく後ろを振り向く。
「お忘れ物ですよ。お嬢さん」
「え?」
私は身の回りの物を改めて確認するとその存在にようやく気づく。
靴を片方履き忘れてしまっていた。それもめちゃくちゃ高いヒール履。恐らく転んだ時に脱げてしまったのだろう。
でもなんで今まで気づかなかったんだ…
いくら焦ってたからってヒールの高い履を履いていなければ気づくに決まっている。歩きづらかったはずなのに私は気づいていなかった。今まで。
「コレってなんかアレみたいですね」
「アレって?」
「だってよりにもよってガラスの靴を履き忘れるなんて、まるでシンデレラみたいだ」
言われてみるとそうだ。
式典だからって気合い入れようと思ってネットで見かけた珍しいガラスの靴を履いてきただけなのに。
こんなつもりは全くないのに?!
「良かったら」
そういうとガラスの靴を私の足元に近づける。
私はそれに応えるように仕方なくガラスの靴を履く。
するとその様子を見守っていた観客や大勢のマスコミが一斉に感激の声を挙げ始め大量のフラッシュが私達を襲う。
「え?」
「なんかすごい事になっちゃいましたね…」
王子は私に微笑みかける。
そして私も何故か微笑み返す。
シンデレラの運命にはどうやら抗えないらしい。
この童話のような嘘みたいな出会いがきっかけで2人は結ばれ、そして末永く幸せに暮らす事になるのですが詳しい話はまた今度。
取り敢えず今だけはめでたし、めでたしってことで。
完
パタリ。 バサっ。
一応、まだ続きますのでもう少しだけお付き合いいただけたら嬉しいです。
と言っても次回がついに最終回なんですけどね…




