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決着のリアクションはド派手にね

閲覧感謝です!

貴重なお時間に見合いますように……

そんなこんなであがった動画はみるみるうちに再生数は伸びていく。


 視聴者の感想も私達の予想通り私の男装を疑う声は一つもなく、あるのは、メチャクチャ男装が似合ってるとか、カッコイイとか、男にしか見えないとか賛辞の声で溢れかえってている。


 当たり前だ。だって男なんだから。


 カツラとって、メイク落としたスッピンの俺なんだから。


 まぁ、カッコいいって言われた事は一度もなかったけどな。これも姫乃皐月のギャップ萌えのおかげなのかもしれない。


 それとほぼ同じタイミングで上げられた冴島の流出動画も順調に再生数を伸ばしていく。が、これまた私たちの予想通り。視聴者は私達の動画を宣伝するための釣り動画だと思い、これきっかけで私達の動画も再生されていった。


「ね、また私に嵌められたでしょ?」

「ぐぅ……ッ」


「でも感謝もしてるわ。アンタのお陰で想像以上に再生回数も伸びてるんだから。ほら、見て?SNSの急上昇ワードにも「姫乃男装」がトレンド入りしてる。それもマイナスじゃなくてプラスな意味でね。アンタの想像じゃこんな筈じゃなかったと思うけど、私の中では予定通り。きっとこれきっかけで私の仕事も増えちゃうわよ。ほんと、嬉しい限り。そういう意味でもアンタには感謝ね。アリガト」


「…これだけで済むと思ってるのか」

「何が言いたいわけ?」


「俺が握ってるのは写真や動画だけじゃない。どうやってあの動画をお前達が手に入れたか知らないが、俺にはまだ切り札がある。お前も忘れたわけじゃないだろう。俺はお前が男だと証明する書類を持ってる。そんな物をネットに流出させれば大変な事になるのは分かってる。それこそ俺もただじゃ済まないだろうからな。俺だって自分の身が大切なんだ。本当ならこんな事はしたくない。だが、ここまできたら自分の事を心配するのは止めだ。俺と一緒に地獄に落ちよう!これで、正真正銘終わりだーッ!!」


 奴が再びスマホを操作しようとした瞬間、


「待ちなさい!」


 私は奴の手を力強く掴み、スマホの操作を中断させる。


「どうした?今さら怖気付いたのか?やっぱり怖いのか?怖いんだな!」

「そうじゃない。私はアンタの為に止めたのよ」


「は?…今さら意地はるなよ。そんな嘘、かえってみっともないぞ」

「ったく、アンタは本当に学習しないわね……。私が書類の事を忘れたと思ってるの?そんなわけないでしょ!アンタさ、本当に人として終わりたいわけ?」


「……言ったろ?お前を道連れに出来るなら俺はどうなってもいいと!」

「だから、そうはならないって言ってんの!!いい加減学習しなさいよ!あまりにも同じ事の繰り返しすぎて私、止めちゃったじゃない。こんなの予定ではなかったのに。…どうしてくれんのよ、このバカっ!」


「なんなんだよ…」

「はぁ……ほら、これ見なさいよ、ほら!」


「……これ、どういう事だ!?なんで姫乃皐月の本籍を示す書類や、お前名義の免許証まで存在するんだよ?これ、偽者だろうが!こんなのあるわけないんだ!…だって、お前はこの世に存在しない人間なんだから!!」

「…私も同じ風に驚いたわ。でもこれは紛れもない本物なのよ」


「んな、バカな。一体どうやって…」

「そんなの私に聞かれても。私はただ貰っただけだから。ただ知人によるとそれは、本物が非合法に作った偽物みたいな本物なんだってさ。意味わかんないわよね。でも紛れもない本物で事実。それは変わらない。疑いたいなら疑えばいいけど、調べれば調べるほど分かるのはこれが本物だって事だけよ。だから時間の無駄使いはオススメしないわよ」


「…………」

「あれ、驚きすぎて言葉も出ないの?もうちょっとリアクションしてくれたっていいんじゃない。これ、今日1番の見どころよ?」


「驚いてるんじゃない。呆れたんだ」

「呆れた?私に?なんで?」


「言っている事もやっている事もありえない事だらけ。そんな事をお前は簡単にやってのける。何しろお前には常識が通じない。こんな事が頻繁に起きて呆れずにいれるか」

「あら?今さらそんな事に気がついたの?」


「ああ。今さらだよ!!だから俺は負けたんだ…そもそも俺がお前を口説こうとした時点で俺は負けてたんだな。正体にも気付けぬまま、必要にお前の事を深追いした結果がこれだ。それに俺が相手にしてたのはお前1人じゃなかった。ありもしない人間の国籍を偽装?いや、本物か?どっちでもいい。そんな物を簡単に用意できる奴と繋がってるんだ。そんなの敵うわけない。お前達の動画に俺の隠し撮りした動画が映っていたのもソイツがやったのか。一体どうやって」

「ええ。アンタがその動画を念入りに様々な媒体で保存してくれてたお陰でね。保険としてどうしてもその動画のコピーが欲しくてね色々と探ってもらっちゃった」


「……まさか、クラウドか?」

「あら、ご名答。その通り、保存したクラウドを突き止めてそこをハッキングしてコピーしたのよ。多分ね。私はあくまでもそれを頼んだだけだからよく知らないの」


「ちなみになんで秋川は協力したんだ。いくらお前の後輩だからって簡単にできる事じゃないだろう。第一、アイツは他の奴と違って勘が鋭い。ドッキリだって言ってすんなりと騙される奴じゃない。俺はそれをよく知ってる」

「秋川さんにフラれた事あるものね?」


「ッ、なんでそれを…」

「この前全部話した時に教えて貰ったのよ」


「待て、全部って言ったか?」

「ええ」


「全部って何から何までなんだ?」

「全部は全部よ。今の私の全てを秋川さんは知ってるわ」


「それって、お前が男だって知ってるってことか!?」

「…………」


「おい、どうなんだ!答えろ!」

「…そうよ。さっきから言ってるじゃない」


「だったらなんで秋川はお前に協力したんだ?秋川ほどプロ意識の強い奴がお前みたいな奴を許す筈がない。なんで黙ってるんだ!?」

「さあ?…私に聞かれても困るわよ。でも、プロだからじゃないの?」


「プロ?お前がか?」

「そうなんじゃない?秋川さんが私に言ったのよ。嘘をついたなら吐き続けろ。どんなに苦しくても許されなくても一度ついた以上バレる事は許されない。だったら全部本物にしちゃえって。私はそう理解する事にした。プロならプロらしく突き詰めなきゃって。まあ、私が勝手にそう思ってるだけで本当は違う意味で言いたかったのかもしれないけど」


 言ってたことも微妙に私が脚色しちゃってるしね。


「プロならプロらしくか……アイツが言いそうなセリフだ」

「それに、アンタは知らなかっただろうけど、意外と私の正体を知っている人間は他にもいるのよ」


「だろうな。そうじゃなきゃこんな手の込んだことや遂げられる訳がない。良かったな。お前の秘密を知ってる人間が皆いい奴で」

「本当。こればっかりはツイてたってしか言えないわ」


「……それで俺の事どうするつもりなんだ」

「どうするって…どうして欲しいのよ?」


「秘密を知ってる俺を殺すとか、しなくていいのか?」

「バカ言ってんじゃないわよ!私がなんでアンタを殺さなきゃいけないのよ?仮にね、私が手を汚す時があったとしてもそれはアンタじゃないわよ」


「いいのか?俺は周りの奴と違っていい奴じゃないぞ。いつ俺がお前の秘密をバラすか分からないんだからな」

「やれるもんならやってみなさいよ。アンタの知ってる秘密には全部手を打ってある。だから何をされたって心配ない。アンタだって分かってるでしょ?もう、その秘密に意味はないって事ぐらい」


「フンッ。分かってるさ。でも、無意味と分かってても俺はやるぞ。俺は学習しないからな」

「なら好きにしなさいよ、そこまでバカならね」


「そんな事言うってことはお前は俺を信用してるのか?」

「バカねぇ~。するわけないでしょう?でも、アンタがどうしようもないくらいのバカならまた私の秘密をバカみたいに嗅ぎつけて脅してくるんでしょうねー。でも、その時はまた付き合ってあげるわ。イヤだけどアンタとは、もう腐れ縁な気がするから」


「俺はしつこいぞ」

「…自覚してるなら治しなさいよ。こっちからしたら迷惑なだけだわ」


「……もういい。分かった。今日は疲れたから帰る」

「それなら2度と来るんじゃないわよ!」


「…………」

「ちょっと、返事くらいしなさいよ!アンタ、また来る気じゃないでしょうね?やめてよ。本当に色々と迷惑なんだから」


「…………」

「だから、返事しなさいよ!このバカ!あ、ちょっとなに手に持ってるのよ?」

「お土産だ。言ったろ。話が済んだら酒を飲むと。だから持ち帰る」


「だからって勝手に瓶ごと持ち帰ろうとするんじゃないわよ。それにアレと今の話は別でしょう?ちょっと、待って、ソレ、めちゃくちゃ高いんだからねぇ~~!!」


 私の声は届かず奴は部屋から出ていった。


 さっきまで帰って欲しくて堪らなかったのに今は連れ戻したくてしょうがない。


 あのワインめちゃくちゃお気に入りだったのに……。


 なんでアイツの事でこんなに後悔しなきゃいけないんだ。


「……しかもなんでこんなオチみたいな流れの終わり方で今日を終えなきゃいけないのよーーーー」


 私の叫びは部屋中に響き、マンション中には響かなかった。

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