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クレイジーに対等に

閲覧感謝です!

貴重なお時間に見合いますように……

 渋々、冴島を部屋に入れる。


 私は冴島の動きに注意を払いながら奴を席に座らせる。私はその向かいに座り奴の顔を睨む。


「…おい、そんな顔するなって。言っただろう?今日は話をしに来ただけなんだ。そんなに警戒する必要ない」

「そんな事出来るわけないでしょう」


「ところでよ、俺は客だぞ?お客にお茶ぐらい出せないのか?こう、スーっとさ、上手いこと流れで出せないもんかね~」

「あのさ、勘違いしないでくれる?アンタは客じゃないんだからそんなの出すわけないでしょうが。それに、話は聞いてもお茶を飲ませるほど長居なんてさせるつもりこっちはないんだから」


「……分かったよ、それなら我慢するさ。こっちの話を聞いてくれるならそれでいい。…それにしても、その話し方は変えないんだな。こっちは正体を知ってんだから今更そんな事続けたってしょうがないだろう。俺は本当のお前と話をしたいんだが」

「正体が何だろうが私は私。この姿の時はこれが普通なの。それにあくまでもアンタと面識があるのは私であって彼じゃないの。一方的に彼の事を知ってるからって合わせるわけないでしょう?彼にとってアンタは見知らぬ迷惑な他人なんだから」


「…なるほどなぁ。思ったより設定はしっかりしてるって訳か」

「設定じゃない!ただの事実よ」


「わかった、わかったよ。俺もそれに合わせる事にするよ。さっきから言ってるが話が出来るなら俺はそれでいいんだ」

「じゃあ、さっさっとその話とやらをしていただける?こっちも色々と言いたい事はありますんで」


「……なら、本題に入ろうか。話ってのは分かっての通り例の写真についてだ。お前に送ったあの写真よく撮れてただろ?どうだった?」

「そんなの知らないわよ。それにあんな物とっくに処分してあるに決まってるでしょう。それに、アンタにとってもそっちの方が都合がいいんじゃなくって?あんな盗撮丸出しの写真残ってたら色々と困るでしょう?あんな目にあってもまだ、性懲りもなくこんな事を続けてるんだから。この前は、奇跡的に事件にはならなかったからいいものの、次見つかったら今度こそどうなるか分からないわよ」 


「なに当たり前のことを言ってる。バレる事なんて覚悟の上に決まってるだろ?お前があの写真を処分したって俺にはデータが残ってる。しかも俺はそれをいかなる場合でも処分する気は微塵もない!!俺はどうなってもいいし、今の俺にもう失う物なんて何もないんだからな。仮に俺がどうにかなっちまった時はお前も一緒に終わるんだよ。道は違えど同じ地獄に行くんだよ!」

「どんな状況であろうがアンタと一緒なんて御免よ」


「…言っとけ。その内分かるさ」

「……で、望みは何なのよ?ただ脅迫しに来たわけじゃないんでしょう?ただただ私の事を恨んでるだけなら、私に写真を送りつける前に世間に公表した方が圧倒的に効率的で都合がいい筈だから」


「流石だなぁ。パチパチ」


 手を叩き何故か私を称える冴島。


「その通り、俺がお前の事をただ恨んでるだけならその方が遥かに楽でお前に与えるダメージも大きかっただろうからな。では何でそれをしなかったのか?気になるか?気になるよなぁ?」

「…そんなのいいから、さっさっと言いなさいよ!」


「それは、お前の事を既に恨んでなんてないからだ」

「?…どういう事よ?」


「聞きたいか?そうだよなぁ。なら全部教えてやるよ。まず、なんで俺がお前の正体を知ってると思う?」

「ッ、それを教えてくれるんじゃないの?」


 妙に勿体ぶる冴島に私は少しずつイライラしてきてしまう。


「分かってるよ。それを教える為にまず聞いてるんだろう?で、どうなんだ?」

「…そんなの私に心当たりがあるわけないでしょう。あったらこんな気持ちになってない」


「だろうな。分かってた。確かにお前は常に完璧を演じていて隙なんか殆ど見つからない。だからこそ俺はお前の事が気になったんだ。そして見つけた、完璧の中にある僅かな隙と弱点をな。俺はあの後文字通り全てを失った。俳優としての人生もそれを支えていた妻も金と共にいなくなった。お前のせいでな。その時の俺はお前を酷く恨んでた。完璧な俺にも弱点があったみたいに必ずお前にも秘密や弱点があるはず。俺はそれを知る為に僅かに残された資金と金目になりそうな物を全て売り払って手に入れた金でお前を調べる事にしたのさ。お前の完璧を暴く為に」

「……で、何か分かったわけ?…」


「まぁ、焦るなって。ちゃんと順を追って話してやるから。まず最初に俺はお前の事をちゃんと知ろうと思った。よく考えたらお前の事を俺は何も知らないからな。ネットを使って手当たり次第調べて見たが出てくるのはお前の年齢と性別だけ。出身地どころかお前の過去を示すめぼしいものは全く見つからなかった。全くだぞ!そんなのちょっと変だろ?今のご時世、どんな事でも調べられる時代だ。それなのに、見つかるのは明らかにデマだと分かる情報ばかり。何一つ真実を語る情報は存在していなかった。だから、今度はネットじゃなくて人を頼る事にした。俺くらいになるとな週刊誌の記者や探偵とか人の事を探るのが大好きな奴と関係があるんだよ。いざって時の為にな」

「そんなツテがあっても肝心の自分のいざって時には一切役に立たなかったようね」


「うるさいなぁ。結果的に今回は役にだったんだからそれでいいんだよ。そのおかげでお前の素性を知る事が出来たんだ。でも、俺が思ってた内容とは全く違ったんだけどな。だっていくら調べてもお前の事は何1つ出てこなかった。子供の頃から今のお前まで調べられる限り調べてもチリ一つ出てきやしねぇ。裏の手段を使って国籍まで調べさせたが姫乃皐月という人間は存在していなかった。最初は姫乃皐月が偽名だからだと思ったがそれも違った。今思えばそんなの当たり前だよなぁ?だって偽名どころか存在自体が嘘なんだから。偽名どころじゃねぇんだ。そりゃあ、いくら調べても出てこないわな!」


「だったら、どこでわかったの?私の正体を」


「マンションだよ」

「マンション?」


「そう。お前が今住んでるこのマンションの事だよ。流石のお前もマンションを借りる時は今の姿って訳には行かなかったみたいだな?」

「…まさか!」


「ああ…。俺は気になったんだよ。国籍も見つからない奴がどうやってマンションを借りたのかって。契約時には必ず本人確認が必要だろ?その時の内容を調べればお前に関する何かが分かると思ったのさ」

「…ッ、そんなのどうやって調べたのよ?ああいうのは普通、個人情報だから簡単に調べられるものじゃないでしょう」


「普通はな。でも、考えてみろよ。普通知る事の出来ない他人の国籍を調べる事が出来た奴なんだぞ?国籍を調べるのと比べればこんな事朝飯まえに決まってるだろ?お前のマンションの事を調べて、契約を担当した奴にちょっと金を渡したらすぐなんだから」

「どうなってんのよ…日本のセキュリティー………」


「現代日本なんて所詮こんなものさ。金に困ってるのはみんな一緒だし何より金が好きだ。それにしても、驚いたよ。契約者の名前は女どころか男の名前なんだからよ」

「……」


「ここからは本当に簡単だった。今度はその名前の人物を調べればいいんだからな。そしたら今までが嘘の様に情報が簡単に出てくるもんだから驚いたよ。お前が借りているもう一つの家の事も、姫乃皐月になる前にお前が結婚詐欺にあって全てを失った事もな!最初はそれがきっかけだったんだろ?俺も気持ちは分かるよ。似たような事で俺も全財産を失ったからな。人間ってのは落ちる所まで落ちると何をするか分かったもんじゃない。そうじゃなきゃ普通はこんな事やらない。それに気がついた時には辞めようと思っても取り返しのつかない所まで来ちまってた。そうなったら自分の身を守るためにもやるしかなくなった。違うか?」


「いいや。でも、後悔はしてないしこれが間違いだとも今は思ってない」

「それだよ!その言葉が普通は出てこないんだよ!お前は自分が普通じゃない事をわかって認めてる。それに自分の過ちを堂々と認めたうえでそれを間違ってないって自信満々に言っちゃうところが凄いんだろ?」


「…なにそれ、私の事褒めてるわけ?」

「ああ!当然だ!褒めてる!そうじゃなかったらどんな意味があるんだ。これでも俺は今でもお前の才能を認めてるんだぞ。あんな事思いついたって普通の奴は誰も実際にやろうとなんて思わないし、それをやり遂げちまう奴は今後もお前くらいだろうからな」


「アンタのやってること全て、そんなに私の事をかってくれてる人の行動とはとても思えないけどね」

「だからだよ。俺はお前と取引をしたいんだ。それも対等にな…」

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