不幸の手紙はゴミ箱へ
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貴重なお時間に見合いますように……
それから約1週間後。
報道当初はネットをはじめ、午後のワイドショーなどが頻繁に報じていたが例の説明文のお陰で一気に世間の声は静かになっていた。
そんなある日。私の住むマンションのポストに宛先が書かれていない派手な封筒に入った手紙が届いた。
私は最初、あまりの怪しさに色々と疑ったがそのまま考えていたって埒があかないので、思い切ってその手紙を読んでみる事に。
もしも内容が犯罪的なヤツやイタズラなヤツだったらその場で破りメモにでもしてやろうと思っていた。
だが、その中身は急いで部屋に帰り、即刻シュレッダーで処分しなければいけないような大変意味のある物だった。
私は周りを確認して、慌てながら駆け足で部屋に戻り写真を改めて確認する。
入っていた写真は2枚。
一枚は先日、俺の住んでいるアパートから私が出てくる瞬間を捉えた一枚。
そしてもう一枚は、とある場所で私が着替えている所を鮮明に捉えられている。
思い出してみると以前も似たような事があった。
その時は私がカツラを被るところを撮られたのだが、今回は私の着替えだ。
つまり、そういう事。
この写真を送った人物は私の正体を知っているという事だ。以前とは比べ物にならないほど決定的な瞬間を撮られてしまった……。一応、幸いな事に撮られたのは私の全裸ではなく下着姿なのだが。
でも、こんな写真を撮られてしまっては、生半可な言い訳じゃ信じてもらう事はできないだろう。
チッ。
普段の私は楽屋で着替える時も以前の反省を踏まえて、自らが納得のいくまで隅々を確認してから着替える事にしている。が、写真の時はそうはいかなかった。
原因の一つはその時とても急いでいたって事と、着替えた場所が楽屋ではなかったという事。
その場所は普段は絶対に着替えの場所には使わないが女にとって1番安全な場所。
写真を見ればその日がどんな日だったかよく分かる。
その日は私が妹と色々あった日。私がお昼の生放送にギリギリで登場する事になって急いで着替える為に入った女子トイレで撮られた写真だったのだ。
まさかの事態だ。
急いでたってのもあるがさすがにトイレまでは普段も確認してなかったし、こんな事が実際に起こるなんて考えが至らなかった。
落ち着いて考えてみれば確かに1番危ない場所でもある。私なら気を使って見られてもバレないように着替えられたはずなのに…。そんなの今から言ったってどうしようも無い。
でも、何が1番許せないってこの写真を撮った人物は私だけが目的じゃないってこと。
恐らくそこ以外にもカメラは沢山仕込まれていてあらゆる女性をターゲットに、それをこっそり見て楽しんでいたであろう品性のかけらもないド変態がいるのだから。
怒りは募るがどうしたものか……。
この写真を送ってきた犯人は私の事を全て知っている。俺のアパートでの写真も撮られている所をみると私の正体だけではなく俺の素性も全て知っていると考えていいだろう。
となると、急いで逃げるわけにもいかない。
俺の素性を知っている限り必ずそいつは何かの行動を起こしくるはず。だから、何処に逃げてもついて回るに決まってる。隠しカメラで人の事を観察するのが大好きな奴だから、さぞかし人を追い回すの得意だろうからね。
だから、奴が何か行動を起こす前にこっちから奴に対してアピールをして牽制したい所なのだが……。
正体が分からない限りそれも出来ない。私は奴が接触するまで怯えながら過ごすしかないのか?……。
と、思っていたが。そんな不安な日は数日で終わる事となる。
何もなかった顔で当たり前の様に仕事をこなしいつものようにマンションに帰ると私の部屋の前に男が1人立っている。
そいつは知らない奴じゃない。
私も世間も日本人ならきっと知っている。
少し前まで国民的俳優として超が付くほどの人気者だったのに、奴の全てが世間に明らかになった事で人気者はたちまち世論からのキツいバッシングを受け、地位も名誉も金も奥さんも全てを失った人物。
その名は冴島大貴。
この男もまた、私によって運命を変えられた1人。
でも、コイツの場合全部自業自得の気もするが。
「どうやってここに?」
「なんでもいいだろう。入れたから此処にいる。それだけの話だ。おかげさまで今の俺に失う物は何も無くなったからな、どんな方法でも厭わないのさ」
「……何の用?」
「何のって…それ、本気か?冗談なら笑えないぞ。勘のいいお前なら分かってるんだろう?どうして俺が今お前にこうして会いにきたのか。俺を陥れたお前なら!分かるはずだろうが!!」
その一言で全てが繋がった。隠し撮りをしたのもあの写真を送りつけてきたのも全部、冴島。
コイツなんだ。
でもまさか、ヤツの方から接触してくるなんてな。
「…………」
「…話は後だ。まずは俺を部屋に入れるべきなんじゃないか?ここで話して色々聞かれてまずいのはお前の方なんだから。それとも、お前がいいならここで話しても俺は一向に構わないが…」
「…ッ。分かったわよ。その代わり部屋の物は何も触るんじゃないわよ。いいわね?」
「分かってるよ。そもそもお前の事にもう興味はない。全部知っちまったからな。だから、お前の部屋にアレを仕掛けるつもりはないから安心してくれ。俺は今日冷静にお前と話をしに来たんだからな〜」




