ヒミツ荘201
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貴重なお時間に見合いますように……
そして翌日。
案の定、日が変わった直後からネットは大騒ぎ。
噂を聞きつけた多くのマスコミが既に私のマンションに集まっている。昔、スキャンダルを起こした芸能人が突然マスコミに囲まれて質問責めに合うところをワイドショーでよく見ていたがまさか自分が同じ目に遭うとは思わなかった。
まぁ、その様子をリアルタイムのテレビで見ている私が言えたセリフではないが。
実はこの事を予想していた俺は姫乃皐月のマンションではなく俺のアパートに一時的に避難していた。だからマンションに集まっている報道陣が私を今か今かと待ち侘びながら生放送でリポートをしている所を客観的にテレビで見ていられるのだ。
ここなら誰にもバレる心配はないから芸能人の隠れ家にするにはもってこいだ。誰もこんなおんぼろアパートにテレビに引っ張りだこのモデルがいるなんて夢にも思わない。思ったところで気づく事も無いだろう。
電話の着信が鳴り私は電話にでる。
「姫乃。今どこにいるの?マンションにいるなら取り敢えず私が迎えに行くまで外には出ないで。いい?知ってると思うけどマンションの周りはマスコミでいっぱいなんだから。分かった?」
「大丈夫です。私はそのマンションにはいないので」
「は?…それってどういう事?」
「とにかく私の言う所まで車を回してもらえませんか?詳しい話はその時にって事で」
「……分かったわ。詳しい話は後で聞くからね。必ず」
私は電話を切ると着替えを済ませアパートを出る。一応、アパートの住人や周りの視線に気を使うが誰かが見ている気配はない。多分。
私は駆け足でアパートから少し離れた待ち合わせ場所に行くと既に進藤さんが用意した車が私を待っていた。
「おはようございます、ってなんで彩華も一緒にいるのよ?」
「なんでって、この後の仕事一緒にドラマの撮影じゃないですか。だから姐さんの事が心配でついて来ちゃったんです!」
「ついて来ちゃったって……」
「それに色々と聞きたい事もありますし」
「そうね、私も色々聞きたいわ?」
「…進藤さん、もしかして怒ってます?」
「いいえ、怒ってないわよ。だって後で話してくれるって言ったでしょ。だから怒る必要なんて無いわ。ただ、それが嘘だったら話は別だけど…」
進藤さんの視線が私に鋭く突き刺さる。これ、間違いなく内心は怒ってる。
「じゃあ、そろそろその詳しい話をして貰いましょうか?」
「……はい。、実はこの近くに友達の家がありまして、訳を話して泊めてもらったんです」
「その友達って本当に信頼できるの?もしかしたら裏切られて売られるって事も…」
「それは大丈夫です。絶対にそれは有り得ませんから」
だってどんな他人よりも信頼できる自分なんですから。
「即答。…そんなにその子の事信頼してるって事ね」
「はい」
だって自分ですから。
「その子ってそんなに良い人なんですか?姐さんの側にいる私よりも…」
「良い人かどうかは別として……信頼はできるよ」
自分が一番知ってますから。
「へぇ……ちょっとジェラシーですぅ」
「大丈夫。彩華は彩華でちゃんと信頼してるから」
「本当ですか?」
「ええ、勿論」
自信をなくしていた彩華の顔に笑顔が戻る。
「一応聞いておくけど、その子の事は紹介しておいてはくれないのよね?」
「はい。……すみません」
「いいのよ。貴方の隠し事は今に始まった事じゃ無いから」
「進藤さん……」
「だからその事は貴方が全てを話してくれる時についでに聞くからその子も貴方も覚悟しておいてよ?」
「はい。分かりました」
ごめんなさい。それは既に出来てます。
「ならよろしい。じゃあ、このまま一緒に現場に向かうわよ。現場のスタッフさんには私から話は通してあるから大丈夫。あ、でも、もしかしたらマスコミが嗅ぎつけて近くに来るかもしれないからその時は上手くやり過ごしてね。今日のお昼頃には事務所の方からマスコミ向けに例の説明文を送る事になってるから」
「了解です……」
そして私はまたいつものように華麗に役を演じきりその日の仕事をまっとうした。




