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兄貴にオマカセッ!!

閲覧感謝です!

貴重なお時間に見合いますように……

シンデレラ。


 それは、誰もが知ってるプリンセスストーリー。


 魔法にかけられたシンデレラは王子様と出会い共に甘い恋に落ちる。

 

 しかしその魔法は12時になると解けて戻ってしまう。


 そして、魔法が解けたシンデレラは元の生活に戻るのだが運命が2人を引き合わせ、彼女は再び王子様と出会いそして2人は結ばれる。


 めでたし、めでたし。


 しかしこんな物語は一つでは無い。


 シンデレラという物語は様々な人間が描き続けて来ていて、登場人物の姿も十人十色で描かれた。その数だけシンデレラは存在している。物語も様々な解釈や演出によって変わってきた。だがどんなに作品が増えようとも必ず変わらない事がある。


 それは、かけられた魔法は必ず12時になれば解けてしまうという事。


 そして2人は結局結ばれてハッピーエンドで終わること。


 それがどんなに強力な魔法であろうと多大な犠牲を払っていたとしてもそれは決して変えられない。それこそが物語の根幹でありそれが無ければシンデレラの物語は完成しないからだ。


 ここに魔法にかけられた1人の男女がいる。


 その人物は自分と同じ苦しみを他人に味あわせたいという醜い願いを叶える為自らに女装という魔法をかけ呪われた。


 その魔法は男に新たな人格を生み出しその男の人生を変えた。


 結果的にそれは自分の人生を狂わせ他人の人生をも狂わせる事となった。

 

 次第にその魔法は自分の過去や因縁と出会わせ、向き合わせて来た。良くも悪くもそれはその人物にとって呪いを解くきっかけとなった事は間違いないだろう。


 時計の針は進み続けやがて終演の時刻を知らせる。


 ついに自分にかけた魔法も解けてしまう時がきたらしい。


 どんな物にも寿命があるように、きっとそれは変えられない。きっと…


 そして現在。


 私は進藤さんの連絡を受け事務所に来ていた。


「これ、明日発売の週刊誌に独占で載るんですって……」


 見本の週刊誌を私に見せる。


 そこには私の熱愛をスクープする写真と記事が大きく載っている。記事の内容は私の住むマンションにとある一般男性と半同棲を報じるような内容であっされている写真だ。写真には私の住むマンションに男が出入りする瞬間が映っているのだが……。


 当然この記事になっている事は全てデタラメだ。


 だって私の正体は知っての通りですし、その写真に写っている男も私なんですから。この場合俺と表現する方がただしいのでしょうね。


 それにしてもやらかしたよ。


 恐らくこの写真は俺が親父と12年ぶりに会った後に撮られたものだ。


 普段は俺のままであのマンションに帰る事は絶対に無い。だがあの日はイライラしてたしストレスも溜まっていて色々と面倒くさくなってしまっていた。それでも一応、周りの目も確認したしあまり目立つような格好もしていなかったと思う。


 そもそも俺の姿でマンションに入れば疑われる事なんて無いとその日はたかをくぐっていたからな。いつもなら最悪な事態も考え部屋に入るまでは私の姿でいるのだけどまさか、俺の姿で部屋に入る所を撮られるなんて……。


 普段しない事はどれだけイラつこうが疲れていようがするもんじゃ無いって事が本当に勉強になった。


 もう、本当に。


 本当……最悪だ。


「で、ここに書いてある事は事実なの?」

「いいえ。全くの事実無根です」


「本当に?」

「はい。もちろんです」


「じゃあ、その写真に載っている男とアナタがどういう関係なのか教えてくれるかしら?」

「それは……」


 それなんだよ…。どうやって自分の正体を隠しながら、無実を証明すればいいんだ?


 急げ、時間が無い!


 時間をかけてたら余計に怪しまれる。何でもいい。とにかくなにか言うしかない!


「それは………実は兄なんですっ!」

「お兄さん?……」


 しまった…。つい、追い込まれて1番分かりやすい嘘をついてしまったかも。


 こんな言い訳、すぐにバレるに決まっている。


 これを誤魔化すための言い訳なんて少しも思いつかないし、兄弟である証明なんか出来るわけない。だけどきっとその男と私の血は繋がっているだろうけどね。


「そう…初耳ね。貴方にお兄さんがいるなんて全く知らなかったわ」

「いやぁ、今まで聞かれなかったので…」


「そういえば私、貴方の家族の事も貴方自身の事も私は何も知らないのね」

「そうですか……?そんな事ないと思いますけどね」


「いや、知らないわ。だって貴方そういう事なにも話してくれないじゃない。自分の過去や秘話を語るドキュメンタリー的な番組のオファーも全て断ってるでしょ?」

「……それは、私なんかの過去なんて面白くないから断ってる。それだけですよ」


 出れるわけなんかない。だって私が生まれたのは約1年前だぞ。話になるエピソードなんて何もないし、そもそも流せるわけがないのだから。


「……まぁ、今回はそういう事にしといてあげるわ」

「本当ですか…」


「うん。その代わりこの事態がおさまったらでいいから、私にだけは姫乃皐月の全てを教えてくれない?」

「……分かりました…」


「なら、そういう事にしましょう!幸い、ツーショットを撮られたわけじゃないからどうとでもなるわ。それにスキャンダルとは言っても悪い事ですっぱ抜かれたわけじゃない。貴方の言うとおり相手の事はお兄さんだって事にしておけば騒いでた世間も少しすれば静かになるでしょう。でも、」

「マスコミはそういかない……」


「そういう事。しばらくはソレで時間が稼げると思うけど、あっちがまた色々言い出す前になんとかしておかないと。だから、さっきの約束は必ず守ってよね。出来るだけ早くだと嬉しいかな」

「……」


 都合の良い言い訳も全てを話す覚悟も何もない。


 そのままその日はいつものように与えられた仕事を何もなかったかのように完璧にこなし一日を終えた。

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