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テコ入れみたいなデコレーション

閲覧感謝です!

貴重なお時間に見合いますように……

「それではいきなり本番!ヨーイッ、アクション!!」


 合図と共に撮影が始まる。


その瞬間だった。


突如私は不思議な空間に巻き込まれる。


なに言ってるか分からないのは分かってる。でも、おかしいんだ。合図が鳴った途端周りの動きは完璧に止まり時間の感覚すらなくなっているような。明らかに動いているのは私達演者だけ。一体どうなってる?


 頭の中では疑問でいっぱいだがそのせいで撮影を止める訳にもいかないので私は何事もなかったかのように演技を続ける。


そう見えてるだけで気のせいって可能性もあるしね。……でも、どう考えたって気のせいじゃないよなー、コレ。


「カット!オッケーです。確認します」


 一つ目のシーンにカットがかかると周りの空気は元に戻りまるで止まっていた時間が動き始めたようだった。


「ねぇ、やっぱ気づいた?」

「はい?気づいたってなにをですか?……」


「そういうの今はいいから。こうやって話せるのも確認してる少しの間しか時間はないんだからさ、正直に言って?」

「……多分ですけど、撮影してた時のあの感じの事であってます?」


「そう!大正解!!やっぱり分かったんだねー!貴方ならもしかしてって思ったけど本当に分かるなんてビックリだよ!今までこの事に気が付いた人は誰もいないんだから」


 どうなっちゃってるんだよ!いきなり現実離れした事が起きるなんて。こんなのあり得ない。


「あの……指摘するべき点は分かったんですけど、何が起こってるのかはさっぱり分からないんですけど」

「そうだよね。いきなりごめんなさい。こんなの初めてだったからちょっと興奮しちゃって…。実は私、撮影してる時だけ周りの時間を歪められるみたいなんだよね」


「は?なんですか、それ?新しく加わったドラマの設定かなにかですか?」

「だから、時間ないんだって!分かってるでしょう?!さっき貴方が体験した事は演出でも夢でもないって事は」


「今の説明で納得はできても理解が追いつかないんですよ…。それって漫画とかでよくある特殊能力みたいな事ですよね?」

「能力かどうかは私には分からない。特殊な現象には変わりはないんだろうけど。正直、未だに自分でもコレがどういう原理で起こってるのか分からないんだよね。自由にコントロールして好きな時に使えるって訳でもないからあくまでもドラマ撮影の時にしかこの力?発動しないの。しかも今までこの力を使っても誰も時間の違和感に気づかないのよ。だから、誰かに相談する訳にもいかないから自分なりにしかこの現象の事は分からない」


「じゃあなんで私はこの事に気づけたんでしょうか?」

「それは……ただの直感!」


「ですよねー……」

「でも強いて言うなら私と似てるからかな?」


「似てる?私が?秋川さんに?」

「そんな動揺する事じゃないでしょ。とにかく詳しい話は後にして撮影再会するわよ。私と一緒なら途中でミスしても時間は進まないから安心してやりなさい」


「もう、無茶苦茶ですね」

「だって私はスターだから。無茶苦茶くらいじゃなきゃスターは成り立たないのよ」


 こういうところか?私も何か聞かれて困ったら同じ事を言いそうだから。ただ言われてみると似てるのも当然なんだよな。


だって姫乃皐月は秋川朱音を参考にして生まれたと言っても過言じゃないんだから。彼女の出演したドラマや番組は基、メイクの仕方や雑誌に掲載されたインタビューまで全てを熟読し研究した。それらの集大成が現在の姫乃皐月だ。それだけ彼女の事を知っていれば私の発言が似るのも無理はない。


 私は様々な疑問を抱きながら撮影に再び臨んだ。


 撮影時だけは先程と同様、私達演者以外は時間が止まっているように感じた。最初はやはりこの事についていけず多少動揺も感じたが、恐ろしいもので半分程撮影を終える頃には既に慣れてしまっていたから驚きだ。


 こうして普通に生きていたら絶対に味わえないであろう体験と共に撮影は全て終わった。


最後のシーンにカットがかかり時刻を見るとキッチリ終了予定時刻に終わっていた。体感では撮影にかかった時間は2時間程だと思う。それが15分そこらで終わっているのだからそれこそあり得ない。その事に疑問を持たない監督さんやスタッフさん達もありえないと思う。でも終わった事には変わりないのだからそれでいいのだろう。多分。きっとコレは細かいことを考えだしたら終わりだと思う。全てはありえないで片付けよう。


 それで一件落着なのだから。

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