スターの思惑は空に散る
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貴重なお時間に見合いますように……
「「だから、アンタの駒になるのは私達、俺達だけでいいって言ってんだよ!いい加減気付きやがれバカ親父!!」」
2人の言葉を思わずハモられる事になった。2人の思いは同じだった。ハモった事が恥ずかしかったのか、それとも考えていたことが同じだったからなのか2人の顔は少しだけ赤くなっている様にも見えた。
「バカ親父……」
動揺しているのはどうやらこの人も同じようで、恐らく今までこんな風に言われた事も本音で会話した事も一度もなかったのだろう。
「そろそろ皐月の事自由にしてあげてよ。お父さん。私達が出来るのはこのくらいしかないんだからさ」
「俺からも頼みます。父さんにまだ父親としての誇りがあるのなら少しぐらい娘の事を考えてあげてください。俺達と血の繋がりはなくても、どんな理由があったとしても、この家に来た時点で家族である事は変わりないんですから」
「……私が、いままで……」
子供達の言葉が響いたのかそれともあの人も何か思う事もあったのかもしれない。そう思おう。
父親はその場で沈み込んだまま動くことはかった。
微かに音は聞こえるのでいきなり死んだわけではないみたいなので一安心。
という事でってのも変な感じだが、私達は帰る事になった。
言いたい事は言えたし、ご兄弟のお陰で妹の事もなんとかなりそうだからね。私が出来ることはもう無いし、後は2人がなんとかしてくれるだろう。
私達が家を後にしようとした時、背後から声が聞こえる。
「皐月!」
流石にもう慣れた。この皐月は私じゃなくて本物の方だ。
振り返るとそこにはご兄弟2人が駆け寄って来る。お姉さんのお子さんも一緒みたいだ。
「皐月、今までごめんね。一度もお姉ちゃんらしい事出来なくて。こうなったのも全部私のせいだと思う」
「そんな事ないよ」
「だって私のせいでお父さん達に皐月の事知られちゃったんだから。私が最初、SNSで姫乃さんの写真を見てた時に、たまたまお父さんが私のスマホを覗いてたみたいで、それで皐月の事バレちゃったみたいなの。正直、私はあの写真を見て貴方だって気づけなかったんだ…でも、お父さんは一瞬で貴方の事に気づいたから」
「それって……」
「あの人が何を考えてるかなんて私には分からないわ。でも、皐月の事を考えてたのは本当だと思う」
「だとしてもお姉ちゃんは何も悪くないよ。それに、お父さんに思ってる事言ってくれてちょっとスッキリしたから」
「それは皐月がいてくれたから。皐月のお陰で私達も初めて本音でぶつかる事ができたんだから。そうだよね、兄貴」
「ああ。俺達はお前に感謝してる。皐月がいなかったらこんなに思いっきり父さんと言い合う事なんてなかったと思う。だからありがとう、皐月」
「お兄ちゃん…」
ちょっとだけあの兄貴が羨ましい。
ちょっとだけ……
「姫乃さん。妹の事宜しくお願いします。私達が出来る事は応援してあげる事くらいしかできませんけど」
「大丈夫です。私の想いもお二人と一緒ですから。この子なら必ずスターになれる。私が言うんですから間違いありません」
「そうですね。期待してます」
あれ、なんか信用されてない?気のせいかな?
「そうだ、皐月。これからお前が成人するまでの少しの間、保護者のサインが必要な時は俺達を頼ってくれて構わない」
「え?でも……」
「いいのいいの。お父さんはあんな調子だし、お母さんも難しいと思うからさ。さっきも言ったけど私達が出来る事はこれくらいしかないの、このくらいやらせてよ。お願い」
「……ありがとう。お姉ちゃん、後お兄ちゃんも」
「後かよ。でも応援してる」
「うん。私もこの子達も一緒に見てるからねー」
2人のお子さんも一緒に手を振ってくる。
「うん」
皐月の笑顔は裏切らない。それを俺は一番知ってる。こんなにっこりした笑顔に偽りは無い。だから、大丈夫だ。
こうして私の今日の目的は無事終えることが出来た。それと同時に私の久々の休みも終わった。
正直言うと、少しくらい遊びたかった気がしないでもなかったのはここだけの話だ。




