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正直に言って…エクスタシーーッ!!!

閲覧感謝です!

貴重なお時間に見合いますように……

「皐月です。入ります」


 扉を開け入って来る皐月の姿を見て私は唖然とする。


 さっきまでは気合いの入ったオシャレな格好だった筈。それが今は、メイクを落とし服も遊び心なんて何もない超シンプルな格好に着替えられている。


 妹にとってここは家なんかじゃない。やりたい事も着たい服も着れず自由を許されない。


 刑務所となにも変わらなかったんだ。 俺はそう感じた。


 妹が部屋に入ると父親はようやく重い腰を上げて近づく。目の前に来た瞬間、父親の拳は妹の顔面を襲う。


 私はその瞬間、嫌な予感がして慌てて駆け寄った為顔面を襲う前に手を掴み止める事が出来た。


「やめてもらえます?この子には明日も仕事があるんです。大事な後輩の顔、傷つけさせるわけかにはいかないんですよ!」


 あっぶねぇーー。


 ちょっと噛んだけど……なんとか間に合ったからよかったとしよう。義理とはいえ娘の顔を本気で殴ろうとするか?普通はしないよね。しかも母親の時と違ってパーじゃなくてグーだし。この家族は相当ヤバい。


「………離せ」

「いいですけど、離した瞬間とかやめてくださいよ」


「分かっている。このままじゃお前の話を聞く事も出来んだろうが」

「いや、悪いですけど貴方を信じるのはまだ無理だ。話をするならこのまましましょう。ちょっと変でも無理じゃないですから」


「勝手にしろ…」


 私と父親の手が繋がった状態のまま時間が流れ始める。


「皐月」

「ハイ?」


「……お前じゃない。娘の方だ」


「あ、つい。どうぞ」


 ややこしい。つい答えちゃったけど最悪のタイミングだ。


「皐月」

「……はい」


「よく戻ってきた。お前にはお前のやるべき事がある。それは芸能の仕事なんかじゃない。本当は分かっているんだろう?」

「はい」


「そうだよなぁ。お前は賢いし一度受けた恩は忘れない。そういう子だ。なのにお前は夢を見てそれを叶えようとした。前に私は言った筈だ。夢は見るものでも叶えるものでもないと。だから私は悲しいんだ。それを忘れてしまったお前が。でも悪いのはお前じゃない。分かってる。悪いのは全部そんな夢を見せたこいつらだ。だから、全て忘れろ。そして今まで通り私の引いたレールを歩んでいればいい。そうすれば今までの事は全て水に流す。仕事も辞めて一からやり直すんだ」


 コイツ本気で言ってるのか?。


 言葉の圧力が皐月を襲い縛っている。


「……分かってます」

「そうか。お前なら分かってくれると思ってたよ。……おい、いい加減離せ。娘の話はたった今終わった。故にお前の話もこれで終わりだ」


「…………ッ」


 私は舌打ちして手を離す。


 もう終わった。皐月が直接こう言った以上私にはもうなにもできることは無い。


 これでいいのか、本当に?


 私は何も出来ずに手を強く握り堪える事しか出来なかった。いっその事正体明かして無理矢理にでも説得してみるか。でも、そんな事したってきっと結果は変わらない。


 なら俺はどうすれば後悔せずにいられる?


 そう思った瞬間だった。


 1人の声がこの不穏な流れを変えたのだ。


「さっきから黙って聞いていればなんなんですか!それっぽい事色々並べても結局考えてるのは自分の事ばっかり。自分の理想を勝手に娘に押しつけるなって話なんですよ!!」


「樹さん…」


 樹の一言は正に起死回生。周りの空気が一気に生まれ変わる。


「…お前、なんなんだ」

「私はアンタの娘の先輩だよ!」


 彩華、言うじゃないか。


「フンッ。ただの仕事仲間が口を出すな!そもそも私はお前みたいな者の口を聞くつもりは無い。黙ってなさい!」

「そんなんだからあの子はここからいなくなったのよ!このバカッ!クソ!ヘンタイ!」


「…………」


「…正直言っちゃえば私はアンタの言う通りあの子にはこの仕事を辞めるべきだと思ってた。だって嫌いだから!でもそれは才能がないからとかじゃない。寧ろその逆で私にはない才能をあの子は全部持ってる。そんなの羨ましいに決まってる。だからいなくなってくれた方がこっちとしても何かと都合がいいと思ったのよ。そうすれば姐さんの側もまた私のものだけになるし。

 でもそれじゃぁ、昔の私となにも変わらない。

 自分の保身に走って出来る奴だけを潰していく。だけどその先に未来なんか無い。それを私は身を持ってしってる。だから私は変わるって誓ったんだ。あの人が私を救って守ってくれたみたいに。仁科ちゃんの事は好きか嫌いかって言われたら嫌いだし、これから好きになれるかって言われても自信なんてない。だけど、あの子がピンチの時は先輩として見捨てたりはしないし、私は手を伸ばす。ついでに言えば、純粋にアンタみたいな男が嫌いで思い通りにさせたくないってだけなんだけど…」


 彩華。なんかちょっと私に似てきてる?気のせいか。


「で、どうするの?貴方はその手を掴もうとするのかしら?まあ、私はどっちでもいいんだけど」


 彩華って意外とツンデレだなぁ。


「私は……私がやりたい事は!父親の言いなりになって幸せになる事じゃないッ!!私はお二人の後輩として自分の手で幸せになってみせる!!」

「……なに?」


 妹は彩華の手を掴み立ち上がる。


 彼女はまだ諦めてなんかいなかったんだ。それにしても彩華に助けられるなんてな。私だけじゃあの子の僅かな気持ちを本気にさせる事は出来なかった。ほら。彩華も役に立ちました?って顔でこっちを見て来るし。でも本当に助かった。


 私は親指を上にたて感謝を伝える。感謝のサインが伝わったらしくさっきまで吠えてた奴とは思えない程顔が緩んでいる。


「お前、それを本気で言っているのか?」

「はい。私はもう貴方の言う通りになりません。好きな格好だってして自由に生きてみたいんです。今まで我慢してきたんです。そのくらい許してください」


 完全に流れはこっちのペース。なら、このまま。


「仁科!」

 私はバックに入ったメイク道具を取り出す。それを見て何をするのか分かったらしく、いい顔で私に頷く。


 私は一瞬で仁科に最高のメイクを施す。その時間僅か数秒。完成と同時に鏡を取り出しメイクの出来を確認させる。


「スゴッ。…ありがとうございます!」

「本当は服も変えたいところだけど、今回は取り敢えずこれで我慢してね。NEW仁科♪」

「相変わらず化け物みたいな速さでメイクしますよねー」


 一瞬の出来事にお姉さんも驚いた表情を見せる。


「皐月!」


 父親があいも変わらず怒鳴る。


「はい?」

「だからお前じゃない!!」


「あ、すみませんっ。つい、クセで」

「姐さん。そろそろなれないと」


「分かってるんだけど、なんか反応しちゃうんだよね…」


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