キミを見ている道化師
閲覧感謝です!
貴重なお時間に見合いますように……
「……今日のタクシーは大丈夫ですよね。いきなりスピード出して変なところに連れてかれたりしませんよね」
「うん。多分大丈夫じゃないかな?多分ね…」
「姐さん~。そろそろどこ行くか教えてくださいよ~」
「まあまあ。きっともうすぐ着くから、ね」
「アレ?この道って……」
お?分かっちゃったか?って
「何で彩華がこの道に心当たりがあるのよ。そんな訳ないでしょうが!」
「いや、間違いないですよ。コレって」
え?もしかして本当に知ってる感じ?
嘘だろ?そんな事って…
「この道って、隠れ家的にあるホテルに続く道ですよね!もう~姐さんったら!それならそうと言ってくれればいいのに。2人だけだと恥ずかしいからって仁科ちゃんも一緒になんて、本ッ当に姐さんの欲張り屋さん!」
「…ッんな訳あるか。彩華お前って奴は……」
先程より強めに頭を叩く。さっきのやりとりにホッとした自分が馬鹿みたいじゃないか。
樹に対して呆れた表情を見せる。
「ごめんなさい~。もうふざけませんから、許してください~。私、久しぶりに姐さんに構ってもらえてちょっと興奮してるだけなんです。だからどうか、御慈悲を~」
「彩華。その調子だとこの先、何かと大変だと思うわよ」
「あ、あの」
「ん?」
「この道多分ですけど私は知ってます」
ようやくか。
「あれ?仁科ちゃんもボケる感じ?ごめんね。私がしたからって別に仁科ちゃんまでしなくたって……」
「いや、そうじゃなくて。本当に知ってるんですってこの道。あ、ほら、ここの道も通った事ありますし。アレ、でもこの道順って……え?まさか、姫乃さん?」
「そう。このタクシーは仁科の実家に向かってるのよ」
「ですよね……っていや、なんで私の家の事知ってるんですか?そしてなんで勝手に私の実家に来るんですかー!?」
「家の場所は進藤さんに聞いて調べて貰ったわ」
「それで進藤さん教えちゃったんですか?いきなり聞いて不審がれたりしなかったんですか」
「全然」
「きっと進藤さんも姐さんに無茶頼まれるのも慣れちゃったんですね……」
「でも進藤さんや事務所には私の実家の住所とかは一切教えてないですよ。オーディションの時に書いた住所だって友達の家の住所を勝手に書いた奴ですし」
「あれ、知らないの?進藤さんには知らない事もわからない事もこの世には存在しないのよ。(私の事は除いてね)きっと貴方の秘密の事もなんとなく分かってたんじゃない?だから、私の頼みも聞いてくれたのよ」
「どうなってるんですかそれ。……って、私の家に行ってどうするつもりなんですかー!…姫乃さんにはお話ししましたよね?私がこの世界で働いている事は家族には内緒にして欲しいって。姫乃さん、暫く黙ってくれてるて仰ったじゃないですか。それ、忘れちゃったんですか?」
「忘れてないわよ。だから、今まで誰にも言わずに黙ってきたんでしょう?」
「じゃあ、これからも黙っていてくださいよ。もう少ししたら両親に私の方から必ず話します。だから、もう少しだけ、もう少しだけこの事秘密にしてもらえませんか?樹さんもお願いします」
「私は別にいいけど、姐さんは……」
「いや、今日でそれは終わりよ」
「そこをなんとか……」
「だって、もう貴方がこの仕事をしている事はご両親にバレてるわ」
「え?そんな訳ないですよ。私の両親テレビとか雑誌とかそういうの殆ど見ないですし、私もまだメディアに出始めたばっかりですからまだ流石に」
「そういう事じゃないの。貴方が私の付き人を辞めて表にではじめた時点でこの事はとっくにバレてるって思った方がいいって話。いくらご両親がメディアを気にしないからって全く知らない訳じゃないでしょう?今のご時世、どこにいたって、何をしててもメディアに触れることができる時代よ。自分が望まなくても流行りの事は勝手に耳に入る。それが今の現代社会なんだかから。それに貴方には兄と姉がいるんでしょ?」
「はい」
「それならご両親から知る事はなくてもその2人から聞いて知ってる可能性もあるんじゃない?いくら貴方がまだメディアの出演が浅いからって舐めてちゃダメよ。メディアの力ってのは貴方が考えている以上に凄いんだから。敵に回せば気をつけないと私達もあっという間にこの世界に居られなくなるわよ~。冴島がそうだったみたいにね」
「……アイツは自業自得です」
「…で、それにもう一つ、貴方の事がバレていると思う明確な理由があるわ」
「なんです?それ」
「少し前に私と一緒に撮った写真があるでしょう?」
「ああ、はい。確か事務所の公式SNS用に特別に撮ったアレですよね」
「そう。アレをご両親は見ている。間違いないわ!」
「え、いや確かに姫乃さんもお陰もあって沢山の方に拡散されたみたいですけど、それだけで見てるって断言するのは…それに、アレだけじゃ私って分からないですって。だってあの写真…」
「アレってどんな写真だったんです、姐さん?」
「私と仁科のコスプレ写真よ」
「え?コスプレッ!?姐さんが?」
「うん。私が魔女のコスプレしてて仁科がピエロの格好してるの」
「何ですかそれ。え?このハロウィンでもないこの時期に?なんで?」
「私もよくわからないけどやれって言われたから……」
「その時の私結構ガッツリ白塗りして仮装してるんですよ?アレじゃ私だとはバレないですって」
「いや、バレるわよ」
「何ですか?」
「私が一緒に写ってるからよ」
「はい?」
「この写真はコスプレの甲斐もあって相当バズったのよ。仁科は知らないかもだけど貴方がメディアに出だすようになったのも実はこの写真がきっかけなの。このコメント欄にはね、最初は私ありきの写真だってコメントの方が正直多かった。だけどそれのおかげで写真は次々と拡散されて、するとコメント欄には私の事以外に仁科の事に触れているコメントも多くなってきたのよ。姫乃の隣にいるあのかわいいピエロは何者だって。そしたら早いもんで貴方の事は直ぐに特定されて話題になったって訳。まあ、肝心の貴方の方は知らなかったみたいだけど」
「……知らなかったですよ。そうだったんですね。正直私はオーディションきっかけでメディアに出れるようになったのかと思ってましたから」
「それもあるけど、こっちの方が実は大きかったりするのよ」
「でも、その写真が原因でバレてるってのは……」
「それにこの写真を見ればいくら貴方がピエロの格好をしてても貴方だって一瞬でバレると思うわよ。だってまがいなりにも一応家族なんだから。娘の事ぐらい見極められなきゃね」
私が貴方のことを12年ぶりでも分かったみたいにね
「それはないですよ……写真だってそんな都合よく見てる訳ないんですから…」
普段の仁科らしくない様子を見せている。
「まあ、行ってみれば分かるわよ。それにただ冷やかしで行くわけじゃないのよ。用があって行くんだからね」
「用ってなんなんです?」
「近々自分で家を借りるって言ってたじゃない。その時貴方はまだ未成年だから親の承諾なしじゃ勝手にできないでしょう?だから、その許しを貰いに一緒に行くのよ」
「そんなの姫乃さんが私の保護者としてサインしていただければ済む話じゃないですかー。お願いしますよ」
何かとはぐらかそうとする仁科。
「何言ってんのよ。そんなのしたら私捕まっちゃうでしょ。それとも貴方は自分の推しを犯罪者にしたいのかしら?」
本当なら俺がサインしてあげても全然いいんだけど法律の壁が邪魔でそういうわけにもいかない。
「いやでも、それなら私の方から事前に両親には話しておきますから今日の所は帰りましょう。ね」
「そんな事言ったってね、ほら、もう着いちゃったし」
「あ、いつの間に……」
私達を乗せたタクシーは仁科の家の前で停まる。




