ヒマワリに捧ぐ下準備
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貴重なお時間に見合いますように……
それから2ヶ月後。
私はこの日も仁科と一緒にいる。
でも仕事ではない。仕事どころか今日は私にとって久しぶりの休日なのだ。
思い返してみれば私がこの世界に入ってから休みと呼べる日は久々どころか一度も無かったかも知れない。そんな貴重な一日をオシャレをしている妹と一緒に過ごせるなんて私はツイてる。
奴さえいなければ……
「……あのさ、なんで彩華がいるのかなぁ?私が声をかけたのは仁科だけの筈よ?なのになんで!」
「そんな事言わないでくださいよぉ!姐さん!この私が貴重な姐さんの休日にいないなんてそっちの方がおかしいんですから!」
「いやいや、私の休日なんだから私の自由でしょう?」
「そりゃあ、そうなんですけど……そうじゃないんですよ。別にいいじゃないですか。仁科ちゃんもこうやって一緒にいるんですから。そこに私が1人増えるだけ。それだけの話じゃないですか〜、それとも何か問題でも?」
「彩華……」
「私だって最近ずっと我慢してたんですっ!最近姐さんは仁科ちゃんばっかりかまいすぎなんですよー!仕事が忙しいのは私も分かってますからそれは仕方ないとして、合間の時間でも私より仁科ちゃんと一緒にいる時間の方が長いじゃないですか!それに姐さんが仁科ちゃんを高級ホテルに住まわせてるって聞いた時は私、もう、何が何だか分からなくなってもう本当に、自分でもよく分からなくなっちゃったんですからね?本当に」
「なんでそれを…私、その事は進藤さんにも話してない事だよ。なのになんでアンタが知ってんのよ!?」
私は反応的に仁科の方を見ると仁科もそれに応えるように首を横に振る。まぁ、仁科本人から言う事になんのメリットもないもんね。進藤さんにこの事バレたりでもしたら色々とヤバそうだし。
「私が姐さんに隠し事が出来ないみたいに姐さんも私に隠し事はできないって事ですよ。私、姐さんの事なら世界で一番知ってる自信がありますから!」
残念だけど私の事を世界で一番知ってるのは俺だと思う。
「どうやって知ったか知らないけどこの事、進藤さんとかに言ったりしてないよね?」
「ハイ、今のところは。仁科ちゃんの事はどっちでもいいんですけど、この事が原因で姐さんの脚を引っ張る事だけは絶対にしたくなかったので。それに今は違うみたいなんで、まあ、ギリギリセーフって事で許してあげます」
そう。仁科はこの間の宣言通り一ヶ月であのホテルを出て行き、今は自分でお手頃なホテルを見つけてそこで暮らしている。
兄として本当ならまだまだあのホテルにいて欲しいぐらいだったのだが、私としては後輩の覚悟と成長を見守るのも先輩の務めだと自分に言い聞かせる事にした。
しかもホテルを出て行った時と同じ日に付き人も辞め、今は期待の新人モデルとして芸能界で徐々に頭角を表してきており、樹と並ぶようになるのも恐らく時間の問題だろう。
私が言うのもなんだが恐ろしい妹だよ。
それもあってもう少しすれば自分の家も借りれるようになるだろう。ただそれにはどうしても解決しなければ問題が一つだけあって。
「だから今日ぐらい私も一緒にいたっていいじゃないですか~。邪魔だって少しぐらいしかしませんから。一緒にいてくれるだけでいいんですから。それに私との約束忘れたんですか~?なんでも好きな事を叶えてくれるって。約束守ってくれないなら自分でも何するか分からないんで」
さっきまで雰囲気とは明らかに何かが変わる。
「……マジで?」
「マジです」
「…………分かったわよ。もう、仕方ないわね。その代わり、私についてくるんだから今から何があっても文句は言わない事。いい?」
「分かってますって。私は姐さんと一緒にいれるなら文句なんかありませんから」
「だといいんだけど……」
そう言うと喜んで彩華が腕を組んでくる。
私は少し呆れながらいつものようなやりとりに少しだけホッとする。
「あの……私いない方がいい感じですか?コレ?」
「ううん。貴方がいないと私が今日一緒にいる理由がなくなっちゃうから。この子の事は公園でたまに見かけるよく服にくっつく草ぐらいに思ってればいいから」
「草ってヒドイですよーーーどちらかというと私は姐さんのエネルギーで育った向日葵って感じじゃないですかぁ〜?」
もちろん無視。
「でも、ごめんね。自分もせっかくのオフの日の筈だったのに私に付き合わせちゃって」
「いえ。私も樹さん程じゃないですけど姫乃さんと休日を過ごせるのは嬉しいですから」
「仁科ちゃん。姐さんの私のポジションは渡さないからねー。いい?」
「はぁ……」
「誰も欲しがってないから……。でも、最近は休みも少なくなってきたんじゃない?今が売り時だもんね」
「はい。おかげさまで、なんとかやらせて貰ってます。これも全部姫乃さんの付き人をやらせてもらったおかげだと思ってます。本当にありがとうございました」
「私は別に何もしてないから。貴方は私が言った通りに自分で自分の武器を手にしただけ。私はただ側にいただけだし、今が忙しいのも全部自分が手にした武器が通用した結果よ」
「そんな事は……でも、感謝してるのは本当ですよ」
「本当に貴方は出来た子ね。彩華もこのくらいの可愛さがあるといいんだけど…」
私が彩華の方を見ると頬を膨らましながら
「私だって感謝してますよ。今があるのも姐さんのお陰ですし。姐さんが望むならカラダで感謝を伝えたっていいぐらいなんですから!」
「ヤメナサイッ。未成年が見てるんだから…」
私は彩華の頭を叩く。
「ところで……今日は何するんです?」
頭を叩かれたても彩華は気にせず話し続ける。
「アンタも中々よね~」
「でも、それは私も気になってました。何するかとか全然聞いてなかったので」
「それは、ついてくれば分かるわよ。仁科は特にね」
「??」
私達はタクシーに乗り込むと目的の場所まで走り出す。




