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ランチナンデス!!

閲覧感謝です!

貴重なお時間に見合いますように……

 私達がテレビ局に入った頃には生放送終了まで残り10分を切っていた。


 私は急いでスタジオに向かっていると途中で進藤さんと樹と合流する。


「姐さんっ!!」

「姫乃、遅いわよ!」


「スミマセン。でも期待通り間に合わせましたよ」

「そうね。本当に私の期待通りよ」


 私はすれ違うように会話を済ましこの勢いのまま樹と共にスタジオに向かう。が、その前に。


「姫乃。これ使いなさい!」


 進藤に投げ渡されたのは私が普段使っているメイク道具と私が着るように事前用意していた衣装だった。


「ありがとございますッ!」


 私はそれらを受け取って走り抜ける。


「仁科はここまでよ。私と一緒にあの子の活躍を見届けるわよ」

「ハイ。進藤さん、実は全部私のせいで……」


「分かってるわよ。姫乃が勝手にしたお節介なんでしょう?だから、貴方が気に病む必要は無いわ。……同じ立場なら姫乃もきっとそんな事言ったんじゃないかしら?なら、私から言える事なんてなにもないわよ。ただ、貴方は姫乃に期待されてる。勿論、私にもね。今回の事の借りを返したいと思うならその期待に答えてあげなさい。それしか貴方には出来ないんだから」

「……分かってます。期待には必ず応えるのがスターなんですもんね」

「そういうことよ」



 私と樹は急いでスタッフの案内のもとスタジオに向かう。


 放送終了まで間もなく5分をきろうとしている。


「私、化粧直ししないと……」


 全力疾走でここまで来た為じっとりと汗をかいてしまっている。


「いや、無理ですよ。そんな時間ないですって!大丈夫ですよ。姐さんにとって汗はアクセサリーみたいなものなんですから。だから誰も不思議には思いませんって!それより急がないと」

「大丈夫!。絶対に間に合わせるから」


 私は慌てて目の前にあったトイレに駆け込む。


「ッ姐さん時間ありませんって!このままじゃ間に合いませんよ。今回は諦めて……」


 樹が後を追うようにトイレに入ろうとした瞬間。


 姫乃が服も着替えて完璧な状態でトイレから出てくる。


「お待たせェッ!さぁ、行くわよ!!」

「早っ!!エッ。いくらなんでも早くないですか?」


 トイレに入ってから出てくるまでその間僅か10秒。


 それではもう一度姫乃の動きを振り返ってみよう。


 トイレに入った瞬間、鏡の前に立つと流れるように必要なメイク道具を手に取り、恐ろしい速さで的確にメイクを施す。それと同時進行で用意していた服にも着替え始める。メイクが殆ど終わると、最後に上着に袖を通して完成だ。


 これらの動きを10秒という僅かな時間で完璧にこなしたのだった。


 凄いよね!


 凄いを通り越してもはや気持ち悪いかも…。


「どうなってるんですかそれ。姐さんって本当に人間ですよね?」

「?何言ってんのよ。当たり前でしょ。今の私はスターで女優よ。色々な意味でね。それに早着替えなんてスターなら誰でもできるでしょう?」


「あ、そうなんですか?やっぱりスターの人達って凄いなーー。ってな訳あるか!やっぱ、姐さんは別格ですね……本物のスターってそんなものなのかな」

「そんなものよ」


 そんなやり取りをしながら急いだ甲斐あり終了時間4分前までにはスタジオに着く事が出来た。


 私たちはそのままMCの方達に呼び入れられ、キッチリと番宣を終えた後は流れるようなテンポで一緒にエンディングを迎えて共に出番を終えた。


 番組終了4分前だったがなんとか放送に間に合った事で私や進藤さんの評価は下がる事なく面子を守ることができた。現場の方達も私達の事を怒るどころか、なんとかなったという安心感が現場を包みお咎め無しになった。それどころか、忙しいなか少しだけでも出演してくれてありがとうとプロデューサーに感謝をされたくらいだ。


 こうして、私と仁科の誤解が同時に招いたピンチを脱する事ができたのであった。

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