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抱えた秘密も超ヘビー級で…

閲覧感謝です!

貴重なお時間に見合いますように……

「1位は……」


 いやだ。やめて。


 聞きたくない。知りたくない。


 わーーー聞こえないぞーー。


 私は耳を塞ぐ仕草をして聞きたくないアピールをするが…


「私が兄と暮らしていた時です」


「ふぇッ?………ごめん。もう1回言ってもらってもいい?ちょっとよく聞こえなかったから」


 聞こえてはいるけどもう一度…


「いいですよ。1位は、私が兄と暮らしていた1年間です」


 キターーーーーーーー!!


 そっちかぁ。そっちがあったよね。


 良かったぁ~。


 いや、嘘でしょ。マジで。


 でも聞こえてたうえでもう一回聞いたんだから間違いない。


 でも、本当にそんな事があっていいの? ……じゃあアレってやっぱりわざとって事か。


「そうなんだ~。へぇ~。仁科さんってお兄さんいたんだね」


 私はなんとか話を繋げるためニヤける顔を必死に堪えながら、それとなく話を合わせる。


「はい。でも兄と一緒にいたのは私が5歳の頃の1年間だけなんですけどね。それに、兄とは血が繋がってないんです。色々あって離れ離れになっちゃって、それからは会う事もできてないし、噂を聞くことすらできなかった。出来る事なら会いたいんですけど……そもそも12年も前の事ですから会っても私の事なんて覚えてる訳ないんですけどね」

「いや、忘れるわけがない」


「えっ」


「あっ、いや、なんとなく。お兄さんもきっと仁科さんの事覚えてるだろうなぁと思っただけよ。だってこんなにかわいい妹がいた事、男なら忘れられるわけがない」

「そうだといいんですけど……でもそれが本当なら私がスターになれば気づいてくれるかもって事ですよね。そうだよ。だって私が売れれば売れるほど兄の目に入る可能性も増える。それにもしかしたら番組の企画で探して会う事も出来るかも。そしたら私のもう一つの夢が叶う!そうですよね、姫乃さん!」


「うん。そうだね」


 本当はもう会ってるんだけどね……。


 それも今目の前で見てるんだけど。


 後、そんな番組に出る時は事前に根回しする事にしよう。色々調べられると面倒だから。


「私、頑張りますッ!兄にもう一度会う為に私は必ず売れてみせます」

「うん。その夢、私も応援するよ」

「ありがとうございます。実はここだけの話、私の芸名の翼って兄の名前からとってるんですよ」


 うん。知ってた。やっぱそうか~。


「名前を同じにしておけば気づいてもらうチャンスも増えるかなと思って」


 作戦通りになったね。やっぱこの子は凄いわ。


「私、本当にオーディションを受けて良かったです。受けてなかったら兄に会うチャンスなんか二度となかったと思いますし」

「そうだね。私も嬉しいよ。仁科さんと会えて私も良かった」


 本当に。


「本当に良かったです。家族に内緒でオーディション受けて良かったー!」


「はい?え?……内緒って、仁科さん、オーディション受けた事とかご両親に言ってないの?」


「ハイ。合格した事も今こうやってここで仕事をしている事も何も言ってませんよ」

「え、じゃあ今って……」

「ハイ。家出中って事になりますね」


 キッパリ堂々と言いきる。


「イヤイヤ、え、家出中って…なら今、家とかってどうしてるの?あ、そうか。じゃあ今は、無理言って友達の家とかに止めてもらってる感じかな?」

「いや、友達にも知られたくなかったので普段は野宿ですかね」


 おいおい嘘だろ。


 今のこの時代に17歳の子がホームレスだっていうのか? いや、こんな時代だからか。


 そんなわけない!


 でも両親って確か……


「その事進藤さんとかは知ってるわけ?……知らないに決まってるか。知ってたらこんな事させないもんね」

「……ハイ。だからお願いです。この事秘密にしてくれませんか?お願いします。こんな事がバレたら家族にも知られるし、事務所だってクビになってしまいます。図々しい事を言ってるのは分かってます。でもそこをなんとかお願い致します」


「……何でそんなに誰かに知られる事を嫌うの?怒られるとか、そんな簡単な理由じゃないんでしょうけど」

「…………家族にだけは絶対まだ知られるわけにはいかないんです」


「何で?……理由を教えてくれないと私も頷けないわよ」


「…………私が兄と別れた理由は私の母親が亡くなったからなんです。これがきっかけで私と兄はバラバラになりました。私は母の兄家族に預けられました。

 一方、血が繋がってない兄は誰かに拾われる事もなく施設に預けられたんです。私が預けられた家は今までとは比べ物にならないほど非常に裕福でした。父は某有名企業の社長で母親も某企業のご令嬢で、その間には二人の子供がいました。長男は父の企業で働きエリートとして結果を残しています。長女である私の姉は企業の御曹司と結婚して二人の子宝にも恵まれて順風満帆に暮らしてます。

 そんな家族の中に後から入った私に居場所などどこにもありませんでした。私を迎入れたのだって今後に使い道があると思ったからなんですって」


 使い道って……。


 12年前、俺が妹と離れるその日、一度だけその家族を見たことがある。その時から裕福な感じは伝わってきてたし、仲だって絵に描いたような理想の家族像って感じに見えた。


 でもそれが正しかったなら、新しく子供を迎え入れる理由なんか無い。嘘ならアレは表向きだけの仮面家族だったって事だ。


「呆れちゃいますよね。私が聞いたら全部教えてくれました。一応、娘なんだから少しぐらい気を遣えって話ですよ。私、婚約者がいるんですって」

「はぁ?」


「相手は私よりも30歳も歳上の政治家で高校卒業後に結婚する事になってるんです。目的は父が政治の世界に繰り出す為の足掛かりにしたいから。

 私がこの事を知ったのは家を出る一ヶ月前です。思い返してみれば姉も父の会社の為に結婚する事になったんだと思います。結婚が結婚した7年前、姉が父と毎日の様に言い合いをしてるのを私は何度も見ていました。アレはきっと姉が結婚の事を拒んでいたからだと思います。当時は幼かったからよく分からなかったけど今なら分かる。姉は結婚式の日、感動して嬉し泣きをしてた訳じゃない。自分の人生を駒のように扱われた事に最後の涙を流したんだって。それからはというもの、姉は人が変わったようにその人を愛し始めました。やがて二人の間には二人の子供も生まれて今の幸せに暮らしています。結婚した時と同じくらいの時期に父の会社も更に大きくなり業界トップの大企業にまで成長しました。これもきっと姉が結婚したおかげなんです。私も詳しくは知りませんけど姉の旦那は権力者の息子らしいですから…」


「なるほどね。最初から全部計画通りだったってこと。仁科さんを拾ったのも全部自分が政治家として権力者になる為の手段を増やしたかったから。そういう事でいい?」


「はい……」


「でもそうなると家からいなくなった今、その人達は相当困ってるんじゃない?無断欠席ばっかしてたら学校側だって不審がるだろうし、未成年の女の子なんだから事件に巻き込まれてるって可能性だってあるし。何もしないって訳にはいかないでしょう」

「ええ。だからきっと、学校には病欠とかそれなりの理由をつけて休みの連絡を勝手に入れてると思います。家出してて連絡がつかないなんて知れればそれこそ、事件性を疑われて事が大きくなりますから。そんな噂が広がってしまえば私の結婚だっておじゃんになってしまうかもしれない。そうなれば自分の政治家への道も遠のく事になりますからそれだけは絶対に避けたいはずです」


「だからって放っておく事ないでしょ。義理とはいえ娘がいなくなってるんだから心配ぐらいしてたっておかしくないんじゃないの?」

「心配してるのはいつも自分の事だけですよ。あの人はそういう人なんです。ただ祈るだけ。何があっても自分の保身だけを真っ先に考えて常に動いてる。今だってこの事が公にならないようにするだけで必死なはずです。父の事を業界から蹴落としたいと思ってる人間はたくさんいますからね。今度は自分が弱味を握られないか心配なんですよ!」


 ……私は、いや、俺は今酷く後悔している。


 どうしてあの時俺はすんなりとバラバラになる事を受け入れたのだろう。俺が少しでも反対すればこうはなってはいなかったかもしれないのに。


 ただ仮にそうなってたとして、事実当時13歳の俺に何かが出来たとも思えない…。


 でも、良くも悪くも今こうして会う事が出来たのもまた事実。


 今の俺は一味も二味も違うどころか性別すら変わっている。


 だったらそんな今の私に出来ない事なんてないんだ。


 私が必ず皐月を私を超えるスターに育ててみせる。


 それが、これからの私が私であり続ける為に必要な目標であり目的だ。


 そう私は密かに誓った。

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