ニュースの女王様
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貴重なお時間に見合いますように……
「あのタクシー、どうなってんのよ?」
仁科が私に近づいてくる。
「さっきのは一体何なんでしょう?」
「さあ?……私も何がなんだか。仁科さんもやっぱりあのタクシーに乗ったの偶然なんだよね」
「もちろんです。たまたま外に停まっていたタクシーに乗ったら、目的地も聞かずいきなり走り出したから驚きましたよ。運転手に話しかけても「俺に任せろ」しか言わないし。スピードだけが上がるばかりで……お客さんの話聞かないなんてプロ失格ですよね。もう~あんなタクシーがあるなんて私、聞いてませんよ〜」
「プロはプロでも別のプロなんだろうね。きっと……」
結局私達を乗せたタクシーの事は何も分からないまま私は本題に入る。
「……仁科さん。聞いてほしいことがあるの。聞いてくれる?」
「…………分かりました。何を言うかはなんとなく分かりますけど…聞きます。私も、面と向かって直接言われた方が諦めつきますし」
「まず、初めに。……ごめんなさいッ。誤解してたのは私の方だった」
「えっ?あの、言ってる意味がちょっとよく分からないんですけど……」
「私があなたに何も教えなかったのも、私があえて仕事を与えなかったのも仁科さんの才能が無いからじゃ無いってこと。既に貴方がこの世界ででやっていけるだけのセンスも才能も全部持ってる事を私は知ってる。そんな貴方に今更私が教える事なんて何も無いって思ってたから。仁科さんは遅かれ早かれ、必ず売れる。そしたら休みなんて、いくら欲しくても手に入らなくなるに決まっているし、何かやりたい事や行きたい場所があっても何も出来なくなる。だから、私が出来る事は今のうちに出来るだけ楽をさせてあげる事だって勝手に思ってた。貴方もその事を気付いてて私にそうさせてるとも。でも……さっきようやく気付いた。全部自分の勝手なお節介だったって。私のした行動が貴方を傷つけいたなんて思ってもいなかった。本当にごめんなさい」
「………それって」
「でも間違いじゃないのは貴方に才能があるって事。それだけは確実に妄想じゃないし、お節介でも無い!貴方の推しが断言する。貴方には私に負けないくらいの才能がある!!」
本当は俺以上の才能があるに違いない。
男と女の両方の才能を持ってる兄貴が言ってるんだ。
間違いない。
でも、それを伝えるのは今じゃない。
仁科の顔は泣いてるような泣いてないような、微妙な表情でこっちを見る。
「……どっちも本気で誤解してたって事ですか?……」
「…………うん。そうなるね。でも、最初に誤解させるのは私の方だから、やっぱり私の方が悪い訳で……」
「……ゃめな…すか?」
「え?」
「……辞めなくてもいいんですか?」
「もちろんよ。アナタみたいな才能のある人を辞めさせたら私が進藤さんにキレられる。いや、キレられるで済むかどうか……」
「…良かったぁ!!私、まだここにいてもいいんですよね!?」
「うん」
「姫乃さんの背中、追ってもいいんですよね?追ってても私、ストーカーって言われませんよね?!」
「うん。言わない」
一体、どんな追い方するつもりなんだ。
「なら、私頑張りますッ!精一杯!」
「うん。私も私が出来る事はするつもりよ。私の側にいたいなら~これからはビシビシ厳しくいくから、覚悟してついて来なさい!」
「はい。望むところです。もう二度と私は折れませんからね」
「私は褒めて褒めて褒めすぎだってくらい褒めて伸ばすタイプだからその辺も容赦はしないからそのつもりでね」
「え。なんか思ってたのと違うような……それに今までとあまり変わらないような気も……」
「いい?モデルってのは自分が一番大好きなくらいじゃないと、誰かに好きになんてなってもらえっこない。最初は天狗になるぐらいでちょうどいいのよ」
「そういうものなんでしょうか?」
「そういうものなのよ。といっても、これもある人の受け売りなんだけどね。とにかく、私は私のやり方でアナタをスターにしてみせるわ!姫乃皐月の人生をかけてね!」
「そんなにまで私の事を……私っ、頑張ります!」
何はともあれこれで誤解は解く事ができた。
「私、オーディション受けて本当によかったです。今までの17年間生きてきた人生の中でトップクラスに嬉しいです!」
「トップクラスってわざわざ言うって事は、一位じゃない感じ?」
「ハイ」
「あっ、即答なんだ。因みに何位とかって聞いてもいいかしら?」
「2位です」
「惜しいなぁ~。2位か~。そうか。2位か……」
「ごめんなさい。でも、一位だけはどうしても譲れないんです。すみません」
「いやそんな、謝らなくてもいいから。聞いた私が悪いんだからさ。…………因みになんだけど、1位ってどんな出来事なの?」
「それは…………秘密です!」
「秘密かーー。そりゃあ、そうだよね。ごめんね。変な事聞いちゃって」
うーわ。めっちゃ気になるー!!今日より勝る出来事って一体なんなんだ?
「でも、姫乃さんには特別に教えてあげます」
「っ。本当に。いいの?」
「はい。でも、内緒にしてくださいね。バレたら色々と大変な事になっちゃうかもしれないので……」
「え、そんなに?」
バレたらヤバくて色々と大変な事になってしまうかもしれないほどの出来事が一位って…、それ本当に他人に話しても大丈夫なやつか?
もしかして、俺と離れてから今までの間に犯罪に手を染めるような事でもあったのか? いやいや。
あの妹に限ってそんな事はないに決まっている。
いや、待てよ。
ニュースとか見てるとみんな口を揃えてそう言ってた人に限って実は事件を起こして捕まったなんて話もよく聞く。
でも、妹はまだ17歳だぞ。
その若さでそんな事…………未成年の犯罪……。
そんな馬鹿な。嘘だろ。
「1位は……」




