妄想過ぎたワガママシスター
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貴重なお時間に見合いますように……
妹が付き人として私と共にするようになって三日後。
いつも通り仕事をこなす私をスタッフさんや関係者の側で邪魔にならないようにそっと見ている仁科。
私がチラッと彼女の方を見るとメモをしながら真剣な目で私を見ている姿が窺える。
私からするとメモをとるような事は何一つしていないし会話もしていない。というかこの現場で私はなんだかんだ一度も口を開いていない。
だから、メモなど必要ないと思うのだが…………あっ、そうか。成程。
流石は私の妹だ。
恐らくあのメモには何も書かれていない。きっとあの様子もフリに違いない。だってメモを取るようなこともないし、この三日間私から何かを教えることもなかった。
そりゃあ、飽きるよなぁ。
だって付き人っていったって私の側にいて様子を見ているだけだし。本来は雑用や手伝いとかをやらせたりするらしいが、私が妹にそんな事をさせる訳がない。
まぁ、一緒にいる中で些細な事でも褒めるようにはしているが。
それに、私から得られる事なんて何もない。それがきっとこの三日間で分かったのだろう。でも、付き人として一緒にいる以上彼女がいい加減な態度で過ごす事はできない。だから見た目だけでも一生懸命学ばせてもらってます風でいる事に決めたんだ。そうすれば、側にいるだけで仕事をした事になるから。
やはり、私の妹は分かっている。楽に仕事をこなせるのならそれに越した事はない。楽をする事は決して悪い事ではないのだから。
それが既にこの年で分かっているとは中々やりおるのう、我が妹よ。
それならば……
撮影が一度ひと段落して私は一度控室に戻った。
私は次の仕事の段取りを確認していると仁科が入って来る。
「失礼します。お疲れ様でした。姫乃さん。今日の表情も最高でした。もう、本っ当に勉強になります!」
ここでも感謝の言葉を忘れないとは流石だね。
「ありがとう。そうだ、仁科さん」
「はい。何でしょう?」
「この後の仕事は私一人で向かうから、仁科さんはこれであがってくれて大丈夫だからね」
「え、でも、いや、行かせていただきます。それに、まだ何も付き人らしい事何一つ出来てませんし……。ですから、行かせてください」
一度、渋るとはやるな。皐月。簡単に頷くのではなくあえて断る。こうする事でこの後の行動をより理想的に自分の評価を落とす事なく動かす事ができる。これ程の高等技術まで持ち合わせているとは。
もう既に、この私を手玉に取ろうとするなんて恐ろしい子!
「大丈夫、大丈夫。進藤さんには私から上手く言っておくから何か言われる心配もないし、今日はゆっくりしてさ、美味しい物でも食べて楽しみなよ」
私はバッグから予め用意していた現金の入った袋を手渡す。
渡された瞬間中身も見ずに内容がわかったのかそのまま突き返してくる。
「いや、こんなのいただけませんよ!それに私は……」
「いいから、いいから。貰えるものは大人しく貰っときなって。それにこれは、私の気持ちなんだからさ」
「えっ、それって……」
今まで妹に何か買ってあげる事も出来なかった。まぁ、その頃は子供だったしお金もなかったから仕方ないのだけれど。今の私は人一倍稼いでいるんだ。このくらい甘やかしたってバチは当たらないわよね。
「姫乃さん、スタンバイできましたのでお願いします」
スタッフの声が聞こえる。
「あっ、そろそろ行かないと。じゃあ、お疲れ様。あと、明日は朝もゆっくりでいいから安心して楽しんで来てね」
そう言い残し私は現場へ颯爽と向かう。
これで彼女も堂々と羽が伸ばせる筈に違いない。今まで何も出来なかった兄からのプレゼントだ。
皐月には既に才能がある。
証拠は既に妹の手のひらで転がされている私だ。明日にでも進藤さんに仕事を貰えるように話してみる事にしよう。
これだけの才能があるんだ。一度表に出れば瞬く間に人気者の仲間入りだろう。
……これは、私もうかうかしてるとすぐにでも抜かれてしまうな。
でも、妹に超えられるならそれでもいいか。
姫乃の様子とは裏腹に仁科の表情は暗く、中々その場を動く事は出来なかった。




