プロローグ 死んでも好きな人
閲覧ありがとうございます。
当小説には後々少しの性描写が入るかもしれません(とは言っても過度なものは無いので期待しないで下さい笑)。
ちょっとしたものでも苦手な方は見ないほうがよいかもしれません。
それでは本編よろしくお願いします!
ある日ある昼下がりある青年が。そう、名前も知らない様な青年が。
言ったのだ、日のあたらないベンチに腰掛けて友達とにぎやかに話すその少女に。
ぺたん、と突然地に膝をつき、まるで懇願するかのように瞳を潤わせ少女を見上げ、白い手に自分の形の良い大きな手を置いた。
静かになるその空間を青年と少女のみのモノとするように静かにつぶやく。
「死んでも、愛してた……」
無造作に伸びた黒い髪からちらちら覗くあの瞳を決して忘れる事は出来ない、と少女が思ったのは何故だろう。
もしかしたらもう会わないかもしれない。
ただ隣の男の人に面白がって言わされてるだけなのかもしれない。
それにしてもこんな意味の分からない告白を受けて驚かない自分が不思議だ、と少女はまた思う。
普通なら、ほらこうして。
少女の友人達のように、この立膝をして少女の手を握る男をいぶかしがって、そそくさとお弁当の包みを戻し、その場を立ち去ってしまうくらいするのだろうから……。
「え、ちょっ、由衣! あの人達置いてっていいの?」
「あんな変人放っときなさい!」
確かにそうだけど……。
少女は威勢のいい友人にぐいぐい腕を引かれながら時たま後ろを振り返ってみた。
まだ見てる……。
膝をついたままさっきと同じ格好のまま。
余程変わった人なんだろうな、とあまり気には留めていなかった。
これが雪本乃笑と八城文の奇妙な出会いだった。