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啖呵を切る

※本日3度目の更新です。

 あー、よく寝た。


 隣を見ると、少し違和感がある。なんか『導ノ剣』の位置がずれているような……?


『起きたか、ロイよ』

「……なあ、お前俺が寝てる間に動いたりしたか?」

『……何のことかわからんな』

「何だその間は」


 まあ、さすがに気のせいか。

 さて、街に戻ろう。


 俺は拠点にしているアルムの街へと帰った。


『ロイ、これからどうするのだ』

「冒険者ギルドに行く」


 昨日までの俺とは違う。俺はもう召喚武装を手に入れたのだ。

 つまり、見習い卒業だ。

 これからは依頼だって受けられる。


『……? 『ぎるど』とは何だ?』

「俺みたいな冒険者のサポートをしてくれる組織のことだ。依頼の仲介やら素材の買い取りやらをしてくれる」


 『導ノ剣』に説明しながら歩いているうちにギルドについた。


「おやおやぁ~~~~? 無能のロイ君じゃありませんか。二日も出てこないから死んだかと思いましたよ」

「げっ……支部長」


 最悪だ。一番会いたくない人物に見つかってしまった。


「あなたが来なかったせいで雑用が溜まっているんです。さあ、キリキリ働いてもらいましょうか! まずは書類整理と建物内の掃除です! 掃除はホコリ一つでも残っていたらやり直しをしてもらいますよ!」


 いつものように雑用を押し付けようとしてくる支部長に、俺は言った。


「……いえ、俺はもう雑用はしません」

「は? 今何と言ったんですか? 契約ゼロの無能のくせに」

「俺はもう召喚契約を終えました。これが俺の召喚武装です」


 俺は『導ノ剣』を支部長の前に掲げた。


 そして【召喚】と【送還】によって出したり消したりすることで、それが召喚武装であることを証明する。


「……確かに召喚武装を得たようですね。ですが、それがどうしたというんですか? たかが剣一本で一人前ぶらないでください」

「『導ノ剣』はただの剣じゃありません。それに、以前支部長は言いましたよね? 『俺は未契約の<召喚士>だから、見習いとして扱う』って。召喚武装と契約した今の俺は、もう見習いではないはずです」

「ちっ、細かいことを……」


 支部長は苛立ったように舌打ちをした。

 自分で言ったことのくせに、今まで忘れていたらしい。

 どうせ俺は一生召喚スポットなんて見つけられないと思っていたんだろう。


 それから支部長は、何かを思いついたようにニヤリと笑った。


「わかりました。では、そこまで言うなら試験を受けてもらいましょうか」

「試験?」

「ええ。うちとしても、依頼を仲介するからには、冒険者にはある程度の実力がないと困りますからねえ」

「……冒険者になるのに試験があるなんて聞いていませんが」

「黙りなさい! この支部は私のもの! 私の発言がルールなんですよ! それとも今すぐ冒険者資格を剥奪されたいんですか!?」


 ヒステリックに喚き散らす支部長。会話が通じないが、向こうのほうが立場が上である以上、今は従うしかない。


「試験の内容は――そうですね。『オーク十体の討伐』。これでいいでしょう」

「……はぁ!?」


 俺は思わず声を上げた。

 オーク十体の討伐!?

 冗談じゃない。それを一人でなんて、ベテラン冒険者でもないと不可能だ!


「ふざけないでください!」

「ふざけてなどいませんよ。受けるんですか? 受けないんですか? 受けないなら、あなたは見習いのままです。あなたに受けられますか? どうせ無理でしょうねえ! あなたはこのギルドのお荷物でしかない、無能のゴミなのですから!」


 甲高い声で喚く支部長。

 なんて鬱陶しいやつだ……! 性悪に権力を渡すべきじゃない理由がよくわかる。


『いいではないか、ロイよ。せっかくだから受けて立ってやれ』


 『導ノ剣』がいきなり喋り出した。


「!? 召喚武装が喋った……!?」

『初めまして、支部長とやら。我の名は『導ノ剣』。鍛冶神メルギスが十七番目に造りし星詠みの神器だ』

「ロイ君、これはどういうことですか!?」

「俺にもよくわかりませんが、こいつは喋ります」

「説明になっていないでしょう、それは!」


 混乱したように叫ぶ支部長。


 というか、さっき『導ノ剣』は自己紹介で妙なことを言っていなかったか?

 後半がほとんど理解できなかった。


 困惑する俺を尻目に『導ノ剣』は話を続ける。


『ロイと契約した者として提案しよう。支部長、こちらは汝の条件を呑む。しかしロイの反応を見る限り、これは不当な対応のようだ。よってこちらからも一つ条件を出したい』

「条件?」

『簡単なことだ。仮にロイがオーク十体の討伐を成し遂げたなら――汝はロイに這いつくばって謝罪しろ』


 支部長はにんまりと笑った。


「いいでしょう。いくらでもしてあげますよ。そんなことはあり得ませんからねぇ。もちろん、そちらが試験に失敗すればロイ君にも同じことをしてもらいますよ?」

『構わん。では、条件成立だな』


 待て待て待て。


「勝手に話を進めるな! 俺はやるなんて一言も言ってないぞ!?」

『何を恐れる、ロイ。汝は我の試練を突破したのだぞ?』

「だからって……」

『それに汝は、このままでいいのか』


 その言葉に。

 俺は、反射的に首を横に振った。


「――そんなわけないだろ。嫌に決まってる」

『いい返事だ。では、行くとしよう、我が主。なに、汝なら大丈夫だ。我もついていることだしな』


 もういい、やけくそだ。

 やってやる。

 それに支部長の土下座も見てみたいしな。


「では、どうぞお気をつけて。そんな変な剣一本で何ができるのか疑問ですがね」


 支部長のニタニタ笑いに見送られ、俺は冒険者ギルドを後にするのだった。

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