表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/80

51.「罪悪感ってどういうこと?」

※罪悪感。この概念は登場人物の考えというより筆者の思想に依るところが大きいのかもしれない。私は罪の意識にずっと苛まれている。縛られている。忘れられない。あの時ああすれば私は失態をせずにいたのではないか。もっとまともな人生を愛する女と送ることができたのではないかという後悔と未練が消えてくれない。私は今日に至るまで多くの者を傷付けてきた。蔑ろにしてきた。その報いを受けているに過ぎないのだろうか。この手の思想の到達点は自己の生涯の否定――自裁にしかならないのだから笑うに笑えない。だが愉快痛快と笑わなければ。嗤笑しなければ。嘲笑しなければ。肩を怒らせて闊歩しなければ何のために生きているのかが分からなくなる。

※エ ル デ ン リ ン グ の ア プ デ は よ 。

「罪悪感ってどういうこと?」


 聖職者を憎む者が教会に多額の寄付をする。

 その理由が罪の意識であるということが私には理解できなかった。


 あの態度の悪い男と、私にとっては友のように慣れ親しんだ概念が、そう簡単に結びついてほしくないという願望が混じっていたことは否定しない。


「葉月も知ってるでしょ。この世に恨みを抱いて、月を墜とそうとした男の子がいた事件」

「うん。ざっくりとした内容はウィリアム様から教えてもらった」

「そうそう。その時にウィリアム団長も――といっても当時は騎士団でもなくて、ただの傭兵隊だったらしいし、隊長ですらなかったらしいけれど――男の子を止めようとしたけど、できなくって。葉月のお爺様が来てくれたお蔭で事なきを得たんだけどれどね。当時から、うちにいる人は皆、口には出さないけれど自分を責めているの。自分がもっと強かったら街の被害を食い止めることができたのではないかって。そう思っている人が少なくないから、今でも騎士団は貧民街の庇護を公言しているし、人員を割いて治安維持の警邏もしているし、中心となる教会に寄付だってしているのよ。きっとあいつも似たようなことを考えているんじゃないかしら」

「そうだったんだ。ちょっと――いや、かなり意外かも」


 そんな人ならあなたが好きになるのもおかしくないね、と私が賛辞を送れば、まあ本人は絶対に認めたがらないだろうけどね、とアリスは照れ笑いを浮かべる。


「実際、あいつにありがとうって伝えても、修道女が可愛かったからとか、痩せ細った子供が鬱陶しかったからだとか、色々言い訳を()ねてばかりなのよ。素直にどういたしまして、って言えないのかしらね。本当に(へそ)曲がりで意地っ張りなんだから」


 そう言って、アリスはくすくすと笑う。恋する乙女を通り越して、粗忽(そこつ)な弟を見守るような――あるいは愛しの我が子を見守るような――博愛精神溢れる聖母(マリア)の如し顔であった。


 その表情をした(まま)


「私も、その事件の被害者なの。住んでいた小さな家も崩れちゃって、お母さんも私を庇ったせいで下敷きになって、どうしようもなくなって街を彷徨(さまよ)っていたところをウィリアム団長に拾われたのよ。だから私にとっては、ウィリアム団長はお父さんで、他の皆は家族のようなものなの」


 私は、話の変化についていけずに返事もできずに固まってしまった。


「……そうだったのね」


 それでも絞り出した言葉は何の機転も利かない相槌だったが、アリスは気を悪くした様子もなく、寧ろ困惑した私を気遣うように。


「そんな顔しないでよ。今ではもう気にしていないんだから」


 と言ってくれた。


「確かに、当時は悲しくて、独りになってしまったくせに、お母さんのことを思い出せない自分のことが憎らしくて、本当に気が狂いそうだったけど――皆が私を支えてくれたもの。私が、お母さんがここにいるの助けてくださいってお願いしたら、皆疲れているはずなのに、傷だらけで今にも倒れそうなのに、瓦礫をどけてくれて、お母さんだった人を丁寧に弔ってくれて、お墓まで立ててくれたのよ」

「…………」

「それでも、悲しいものは悲しいから、お墓の前で何日も何日も泣いていたら、あいつが隣にやって来て。最初は誰だろうと思ったわ。変な仮面で顔を隠しているし、とんがり兜に鎧まで着ているから。でも、あいつ。お母さんのことを色々と教えてくれたのよ」

「……え?」


 私は思わず疑問の声を漏らしてしまう。

 この世界では、人は死ねば忘れられるのではなかったか?

 言ってから、あまりにも無粋な合いの手であったことを自覚する。


「ごめんなさい」

「いいのよ。私だって最初はそう思ったんだもの。でもね――」


 アリスは言葉を整理するかのように沈黙したのち、紡ぐように続ける。


「あいつは、私が変なのって思っている間にも一生懸命に語るのよ。私のお母さんが、私と似て赤っぽい髪の色をしていたところとか、目付きや眉の形がそっくりだとか、近くの神学校で働いていて、誰よりも真面目に仕事をこなして、生徒からも慕われていたところとか、猫が好きで、よく痩せた野良猫を拾って、元気になるまでお世話していたところとか、編み物が得意で、私が来ていた服も全て一から仕立ててくれたこととか、その表情はとても幸せそうだったとか、それでもお酒が入ると昔の血が騒ぐらしくて一気に破天荒になってしまうところとか――そして最後に、あの人の分まで生きろって。そう言って、そっと髪を()かしてくれたの。だから私、信じることにしたの。ううん、騙されてもいいやって。優しい嘘を吐くことができるのもひとつの美点だと思うもの。きっと私、その時にやられちゃったんだと思う。一目惚れなのかしらね。まあ、もちろん私も子供だったし、そんな自覚なんてなくて。ウィリアムさんと同じ所属の人なのかな。また会えればいいなあ、くらいに思っていたけど、まさか後々になって葉月のお爺様と一緒にやって来るなんて思いもしなかったわ。運命なんて本当に分からないものだけれど、こればかりは神様に感謝してもいいわ」


 アリスの語りはそこで終わった。


 そこで私は遅まきながら気付く。話は何一つ変わってなどいなかったことに。私は、壮大な惚気(のろけ)話――というには(いささ)か重過ぎる内容なのかもしれないが――もしくは馴れ初めを聞かされていたのだ。


 私は安堵した。

 彼女が過去を乗り越えていることに。

 彼女が想いを寄せる男性が、少なくとも内面は立派な人物であるということに。


「でも、最近不安になるのよ」

「不安って、何が?」

「あいつの様子がおかしいの。焦っているというか急いでいるというか。上手く言えないけれど――胸騒ぎがするの」

「それは――戦争なんだから、平常心ではいられないのではなくて?」


 (もっと)も、私は戦争を知らない世代である。


 祖父には従軍経験があり、戦時中は満州にいて、長いこと拘留されていたとだけは聞いたことがある。そして猫と弟がよく上がり込む居間の鴨居には国からの賞状が飾られているが――祖父に戦争の体験を聞いても眉間に皺を寄せるばかりでほとんど教えてもらうことができなかった。語ることすら(はばか)られる凄惨な出来事があったのだと推察することしかできない。


 そのため、私の知る戦争とは。


 1941年に日本軍が真珠湾を攻撃したこと。

 米国、英国に宣戦布告をして太平洋戦争が勃発したこと。

 1945年8月6日に広島、同年8月9日には長崎に原子爆弾が投下され、(おびただ)しい死者が出てしまったこと(その被害者の(ほとん)どが無辜(むこ)なる民間人だ!)。その被害を受けて、8月15日に玉音放送――大東亜戦争終結ノ詔――が日本放送協会からラジオに流れて終戦を迎えたこと。


 以上である。

 およそ教科書に載る程度の浅いものでしかない。


 東京大空襲で逃げ惑う市民の恐怖も。防災頭巾が引火して、(たちま)ち窒息死した者の苦しみも。熱さに耐えかねて河川に飛び入ったまではいいものの、死者と共に流されて溺死してしまった者も大勢いたことだろう。

 沖縄などはもっと酷い。手榴弾ひとつと集団自決を言い渡された市民は、どれだけ苦しくて、悲しかったのだろうか。防空壕の中で息を潜め、泥水を啜って生きるしかなかった者の無念さは――きっと、私などが想像することすら烏滸(おこ)がましいのかもしれない。


 世界を跨いだところで。


 神が実在して、奇跡と魔術が行使できる世界でも、戦争が悲惨かつ壮絶であることには変わりないのだろう。人が人を殺すのだから本質は同じだ。否、神がいて奇跡だって使えるのだから、尚更酷いものなのかもしれない。人間は、信じる者のためならばどこまでも残虐になれるのだ。


 だからこそ。


 平常でいることなど、健常な精神をもつ人間には到底できないことだろう。そういうことを言いたかったのだが彼女には上手く伝わらなかったようで。


「違うのよ。そういうことじゃなくて」


 アリスは焦れたように声を(あら)らげる。

 力加減を誤ったせいで、作成途上の千代紙がぐしゃりと音を立てた。


「そういうことじゃなくて――嫌な予感がしたの。だから私ね、皆がいる砦にこっそり行って、あいつに言ったのよ。絶対に生きて帰ってねって。いつもだったら、当然だろって言ってくれるのに――右腕だって喪くしていたし。それは無理だってはっきりと言われてしまったわ」

「――え、待って。右腕がないって」

「うん。肘から先がなくなって、意識も朦朧としていたけれど、あとで奇跡で治すから放っておけって断られちゃった。(うじ)避けの苔玉を使っても苦しそうで、寝床も(きたな)くて、取っても取っても切りがなくて。その日は、団長に一日だけいることを許してもらえたけれど――(むし)が肉を(かじ)る、しゃりしゃりという音が耳から離れないのよ」


 青い顔で告げるアリスは小刻みに震えている。

 その様子を思い出してしまったのだろう。

 先刻までの女子の会話らしい暢気(のんき)な雰囲気はどこかに消えてしまった。


 アリスは言葉を失った私を。

 私の瞳を真っ直ぐに見て。


「あいつだけじゃないの。皆、疲れ切っているの。団長も副団長も。王都からの援軍がやっと来てくれたことは嬉しいけれど――このままだと、きっと良い結果にはならない。だから――はい」


 アリスは、手持ちの筆記具で鶴の翼に何事かを書いたのち、一羽の鶴を私に差し出す。見れば『オスカーへ。あなたのことを私は忘れない』というメッセージが添えられている。


「あなたが御守りを作ろうって皆に働きかけてくれて、本当に良かった。とびっきりの奇跡をかけてちょうだい。あいつが死なないように。無事に帰ってきてくれるように。どうか、どうか」


 どうかお願いします――とアリスは乞う。


 天真爛漫、天衣無縫という言葉が似合う少女の面影はどこにもなかった。


 私は、彼女が本当に言いたかったことを察した。本当は、奇跡を使える私に、皆のところに行ってくれと言いたいのだ。想い人を助けてくれと言いたいのだ。だが、堪えてくれた。その理由は――彼女にしか分からない。


 私は、返答の代わりに、二羽の鶴に奇跡を宿す。


『大回復』と『治癒の涙』である。


 そのどちらも聖典に載っていたものである。

 大杖が放つ神秘の光は、いつもに増して輝いていた。

以下、本編に一切関係の無いゲームの話。

ダクソⅢの個人的お気に入り武器『竜血の大剣』におけるビルド考察。

分かる人にしか分からない話。


     *     *     *


あれこれ考えた結果、以下のようになった。

――――――――――

・生命34(『虜囚の鎖』で39/HP1200)

・精神15(FP120/記憶2コ)

・持久35(『虜囚の鎖』で40『寵愛+3』併用で179)

・体力25(『虜囚の鎖で30』)

・筋力26

・技量40

・理力09

・信仰30

・運命07

――――――――――

端的に言うなれば『SL132-上質バサ』だろうか。

理力と運は初期値、精神はキリのよい15。

筋力は両手持ち換算で39。

技量は上質戦士の目標値40。

信仰は『暗月の剣』要求値30。

――――――――――

指輪は以下の4コを基本想定

 ①虜囚の鎖

 ②寵愛の指輪+3

 ③鉄加護の指輪+3

 ④草紋の指輪+3

※あくまで「基本的な想定」である。

※サブ武器に『竜狩りの剣槍』『ロス騎士大剣』などといった重量武器を担ぐ場合、また重鎧を着込んでカット率と強靱を底上げする場合は『ハベルの指輪+3』が採用される。

――――――――――

右手武器

①竜血の大剣……鋭利派生。雷と魔力エンチャ可能なイケメン武器。

②赤柄ハルバ……鋭利派生。戦技『我慢』が有用。

左手武器

①東の鉄盾orリンド盾……愚者派生(パリィor戦技)

②フィリアノールの聖鈴……戦技『恩恵の祈り』が有用。

※個人的な拘りとして、装備の三枠目は使いたくない。

※サブ武器候補は『竜狩りの槍』『聖者の二股槍』など。

※対人勢御用足しの『セスタス』はパリィ下手な私では却下。

――――――――――

【総括・結論】

 長きに渡り『DARK SOULSⅢ』における個人的イケメン武器『竜血の大剣』の運用を考察してきた。そしてビルドの使用感を確かめるために闘技や侵入、協力に挑みはしたのだが……。うん、まあ、ハッキリ言うわ。これ一本だけじゃ勝てませんでした。勝てたとしても、相手が殴り合いのプロレスに付き合ってくれた場合やこっちのパリィが成功した時ぐらい。薄々分かっていたことだけど両手R1の発生が遅いから此方からは迂闊に攻められない。特大武器には強靱負けする。故にいつの間にかサブ武器として握っていた『赤柄のハルバード』や『竜狩りの槍』、『アストラの大剣』がメインになっていたという現象がよく起きる。モブ敵を相手にする攻略ならこれ一本で十分安定するのだが、どうにも対人向けではない。少なくとも武器相性の悪さや、先に仕掛けた方が不利になるこのゲーム性を覆すだけの対人スキルは私にはなかったし、身に付くとも思えない(武器でも魔法でも「え? 今の攻撃なんで当たるの? 届いてないやん」という場面がありすぎて真剣に向き合うことができない)。総論として、ありきたりな言葉になってしまうが「攻略向けの対応力ある頼もしく格好良い大剣」であり、「対人や侵入の場合はリーチや強靱を補えるサブ武器を上手く併用すること」がポイントとなるだろう。

 不死の闘技で、竜血騎士の鎧を着て、竜血の大剣をブンブンしている下手糞がいたらそれは十中八九私ですね。豆腐メンタルなので糞団子は投げないでくださいね。よろしく!


     *     *     *


 誓約アイテム総てコンプしました。

 『枷の椎骨』が出なさすぎて吐きそうでした。

 これでもうすぐトロコンできますよ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ