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異世界で喫茶店を開いたら何故か救国の聖女と言われて大変なことに!  作者: 千葉 仲達
【5】満月の悪夢と姉弟と三毛猫のだまし合い
26/80

26.夢を見ていた。深海の如し昏く濁った世界を漂いながらも……。

※半年程前に公募した作品が箸にも棒にもかからない文字通り無残な結果に散ってしまったため、少々の自棄とリハビリを兼ねて筆を執ることに。落選した作品は近日中には公開予定。嗚呼、座談会にも印象にも残らぬとは。論するに値せずとなった己の技術と実力不足が恨めしい。悔しいので八つ当たりとして文章力全開で書き上げます。筆力で助走をつけてぶん殴る感じ。読み悪くて本当にごめんなさい。

※この作品はフロムソフトウェア製のゲーム『DARK SOULSⅢ』および『ELDEN RING』の影響を多大に受けております。もっと言えばフロムの過去作を知っている方がクスリと笑ってくれるような、それでいてある程度の品質を保ったメタ寄りの作品を目指しております。パクリでもパロディでもなくてステマあるいはダイマ。いずれにせよ愛と敬意を込めて書きたいと思っております。勿論知らない人でも楽しめるようなものにしたいとも思っております。

※『ELDEN RING』のDLC発売早くしてくださいお願いします。あとバランス調整も。大味戦技ブッパゲーはともかく周回の意味があんまり無いのもちょっと悲しい。遺灰レベル上限限界突破まだですか早くしてやくめでしょ叡智な装備の追加と戦技の居合パリィ復活も強く希望しておりますアイテム製作が割と笑えないくらい死んでいる件についてもどうにかして頼むよ。

 夢を見ていた。

 深海の如し(くら)く濁った世界を漂いながらも、嗚呼この世界は夢である、私は今夢にいるのだ、と瞬時に判る夢であった。特にこれといった根拠はない。ただの直感であり、夢とは得てしてそのようなものだろうというどこか投げ遣りな思考ばかりがあった。


 それでも、()いて理由を挙げるのなら。

 私の足許に、(ひる)蛞蝓(なめくじ)にも似た、得体の知れぬ黒い汚泥(おでい)が渦巻き、這いずり回っていることだろうか。


 私はそれを知っている。

 『人の(よど)み』である。


 人間の(うち)(ひそ)み、その中で最も重いものである。いかなる深みにあっても(おり)のように沈み、静かに、それでいて着実に堆積を続けるがゆえに、やがては世界の(かせ)となってしまうような。


 ()えて言語化するなれば。


 闇夜を照らし、人間を惹きつける篝火のような。

 愛や欲望――(ある)いは『人間性』と呼ばれるものだろう。

 この場合、世界とは私自身のことである。いつかそう遠くないうちに、私は、私の裡から滾々(こんこん)(にじ)み出す感情に(むしば)まれ、(こわ)れてしまうのだろう。


 夢だというのに。

 折角休んでいるというのに。

 なんて詰まらぬことを考えているのだろう。

 もう、休息は十分だ。起きて働かなければならない。

 私だけが使える奇跡を、皆に届けてあげなければ――。


 鉛のように重い(まぶた)を気力で()じ開ければ。

 医務室の前に突っ立っている自分を発見する。

 月光を浴び続けた純白の外套を肩にかけ、物憂げな面持ちの女神と満月を(かたど)った儀式杖を抱くように持っている。


 蝶番(ちょうつがい)が緩み、錆びた数本の鉄鋲(リベット)が飛び出た木製の扉を押し開ける。(きし)んだ音と共に、そっと身体を(すべ)り込ませるように入室すれば。


 最初に感じたのは、嗅ぎ慣れた血の臭いである。

 部屋の最奥、ひとつしかない方形の窓からは、(まばゆ)いばかりの月明かりが燦々(さんさん)と差し込んでいる。その太陽光とも見紛うような目に(うるさ)い光線の(おぞ)ましさ。水銀を混ぜ合わせたかのような空気の無機質さ。色温度の高い、どこまでも透き通るかのような浮世離れした神聖さ。熱を放つ生命とは対極に在りながらも、それでいて一切の(けが)れを(はら)う神秘の光。その冷ややかな怖ろしさ――。


 医務室に並べられた木組みの寝台(ベッド)には一床の空きもない。

 皆一様に、(あおの)け様に寝かされている。四肢は完全に脱力して、(うめ)きとも(いびき)ともつかぬ呼吸の度に、胸が僅かに上下するだけであった。そのどれもが見知った顔である。


 男性にしては髪の長い、眼鏡を掛けた参謀も。

 先端の尖った兜に、面頬(マスク)と詰め襟で素性を隠した軽薄な若者も。

 鮮やかな青い襟巻き(スカーフ)に、隊服を着崩した利発そうな少年も。

 以前(つい)えた眼球を治した際、丁寧に御礼を述べてくれた老兵も。

 帝国の騎兵に襲われ、腕を半ば切り落とされた男性も。

 同じく、太股の動脈を切断され失血死寸前だった男性も。


 兵士だけではない。官舎に詰め、本来ならば戦場に出よう(はず)もない侍女や下郎達まで(たお)れている。扱いの酷い者になると、石造の固い床に無造作に打ち棄てられている。


(一体、何があったというの?)


 いや、()()()()()()()()

 いないのだ。彼が、あの青年が。ウィリアム様が。


 無表情のまま、歩みを進める。

 中央に置かれたテーブルの天板には、かつて賭博に用いられたカードが散乱しているし、手脚いずれかの欠損や重篤な感染症などによって医務室の常連だった者達が力なく突っ伏している。


 本当は驚きたかった。

 泣きたかったし、逃げ出しもしたかった。

 だが動揺を()し殺し、(つと)めて感情を(とざ)す。ここで日本人らしく慌てふためいてしまえば、(かえ)って精神が参ってしまうだろうと思ったのだ。理性を(たの)み、浮遊感を伴う眩暈(めまい)に堪えながらも、今や屍人(しびと)の吹き溜まりとなってしまった広くも狭くもない医務室を、患者ひとりひとりの苦悶と痛苦に(まみ)れた顔を(あらた)めながら(ひた)進む。


 ウィリアム様は――いた。いてくれた。


 窓際、一番奥の寝台に。胸の前で祈るように手指を組みながら静かに横たわっている。青褪めた月光にその身を()かれながら。平生(へいぜい)の見慣れた甲冑姿であり、脱いだ鉄兜だけが顔の(かたわ)らに置かれている。


 相変わらず、希臘(ギリシャ)彫刻(ちょうこく)()くやというほどに整い過ぎた顔立ちをしている。

 しかし、その美貌も今日に限っては幾分か劣っているようにも見える。

 それは、きっと。


 ――死んでいるから、だろうか。


 閉ざした()はぴくりとも動かない。

 (まなこ)は落ち込み、周囲には(くま)がありありと浮いている。

 頬はげっそりと()せて()け、(ひび)割れ艶を失った薄い唇は、鬱血のせいで黒く変色している。


 誰に問うても、これは(かばね)と答えるであろう、最早手の施しようもない死穢(しえ)に呑まれた(むくろ)である。かつて騎士団の総長という肩書きを持ち、ウィリアムと呼ばれていただけの、人間だった()()でしかない。最新鋭の現代医療や技術と学識を(もっ)てしても――或いは、どれほど真摯に祈った文字通りの奇跡に(すが)ったとしても――彼を蘇生させることは不可能だろう。


 これは(ぬけがら)である。

 彼は遠いところに逝ってしまったのだ。


 彼を呼び戻すことは、信仰を()らぬ私には到底できぬことである。否、人間の生死を己の都合で捻じ曲げてしまうなど――生と死の境界を踏み越えることなど――決してあってはならぬことである。挑戦する気にもなれない。それだけは私の倫理が(ゆる)さない。


 彼の死に様がいかなるものであったのかは知る(よし)もない。だが。誠実かつ実直な性分をした彼のこと。きっと最期(さいご)のその瞬間まで己が職責を全うしようとしたのだろう。騎士たらんとして。仲間と矜持(きょうじ)を護るため、立派に戦い抜いたのだろう。だから、死んだのだ。死んでしまったのだ。

 

 悲しくないと言えば嘘になる。

 認めたくないと言えば嘘になる。

 だが、これで良いのだ。

 良しとしなくてはならない。


 彼の顔を手巾(ハンカチ)(おお)ってやろうとして。

 遺体の傍らに白い花が(そな)えられていることに気付く。


 複数の花序(かじょ)には白色五弁の小花が咲き、よく見れば花弁の一枚だけが歪に大きい。葉は麗糸(レース)のように深裂(しんれつ)して、全体に滑々(すべすべ)とした光沢と紫紅色の斑点が散見される。(せり)にも似た花の形状から。何より、この場に存在していることから察するに。


 ――ドクニンジンだろう。


 無知の知、悪法もまた法なり、といった言葉を(のこ)した哲学者ソクラテスの薬殺刑にも用いられた、名が示す通りの毒花である。


 花言葉は――。


 貴方は私の命取り。

 死をも惜しまない人。


 (もっぱ)ら、贈与(プレゼント)には向かぬ花である。仮令(たとえ)贈るにしても、時と場そして相手を選ぶような代物ではあるが、全く以てその通りであった。誰が供えたのかは分からないが、私でもきっと同じ花を贈ろうとしただろう。私の――否、私達の関係と心情を示すには、これ以上ないほど適している。


 当然、思慕や恋愛などといった浮ついた感情ではない。

 関係もまた(しか)り。

 敢えて言えば、騎士と侍女でしかない。いずれは喫茶店の店主と賓客(ひんきゃく)になる(はず)だったのだが、その未来も潰えてしまった。


 いずれにしても。


 私が彼を想っていたのは確かだし、彼も私を想ってくれていたと信じたい。

 (もっと)も、今となっては確認のしようもないのだが。


 ――月は、生ける者を惑わし、死せる者を裡に閉ざす――。

 ――神の造った楽園ですから――。


 不意に、彼との出逢いが脳裏を(よぎ)る。


(ウィリアム様も、あそこに昇ってしまったのだろうか)


 窓辺に立ち、夜空の大部分を占有する巨大な月を仰ぎ見る。不気味な天体は煌々(こうこう)と照り、月光と共に強烈な威圧を振り撒いている。


 だが、やはり驚怖(きょうふ)はなくて。

 胸に込み上げるのは郷愁(きょうしゅう)ばかりであった。

久々にダクソ3新キャラ作って遊んでるけどフリーデに勝てなさすぎて禿げそう。あと銀騎士の耳ドロップ率渋過ぎて泣きそう。書き溜めは36部まで保有。毎日更新を予定。

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