7、神界の仮面天使
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前回のあらすじ
管理者の手抜き実装
再びお目見えした白い画面を前に、トーキは打ちひしがれていた。
「これどうしたらいいんだ?」
トーキの問いかけは、誰にも届かず虚空に響くのみ……、ではなく、
『こんにちは! フォルトゥナと申します』
「ひぇっ!?」
『何かお手伝いできることはありますか?』
文字が並ぶ白い画面を覆い隠すように、新たな画面が出現した。画面には黒地にマイクの絵が描かれている。
「な、何者?」
『私は音声アシスタントのフォルトゥナです。あなたのお手伝いをいたします』
しゃべるフォルトゥナの声に同調し、マイクの絵が動いている。
(音声でアシストしてくれるのか……?)
『何かお手伝いできることはありますか?』
となれば、聞くことは一つである。
「お前を消す方法」
トーキの問いかけに、一瞬の沈黙。
『はっはっはっ、またまた御冗談を、どこかのイルカじゃないんですから』
「この世界にもカイ○君が居るの!?」
気を取り直して。トーキはフォルトゥナに問いかけてみた。
「コンパイルエラーを直して」
トーキが前世で知るコンピュータの音声アシスタントは、このような"お願い"には対応できなかった。だが、ここは異世界である。異世界の神様的な何やらが利用している仕組みなら、或いはこのくらいのことが──、
『"コンパイルエラーを直して"の検索結果を表示します』
「検索するのかよ!」
できなかった。この世界の音声アシスタントも似たようなスペックであるらしい。
「っていうか、インターネット?みたいなものがあるのね……」
なぜか日本語で記述されている検索結果。それを指でスワイプしてスクロールし、気になったタイトルをタップして表示してみるトーキ。既にすっかり馴染んでいる。
「うむ、良く分からない。フォルトゥナさん何とかして」
『申し訳ありません、仰っている内容が分かりませんでした。もう一度お願いします。』
「だめじゃん」
再び壁にぶち当たったトーキ。こういう時どうすべきか……。
「そうだ、ネットで質問してみよう」
"コンパイルエラーを直して"の検索結果の中から、システム関係の質問掲示板らしき場所を探し当てたトーキ。
「ここでいいか……、どうやって文字入力したらいいんだ?」
『ソフトウェアキーボードを起動します』
「おぉ! キーボードが出てきた!!」
視界に表示されている画面の下に、半透明のキーボードが表示された。ご丁寧に106キーボード配置である。
「"コンパイルエラーを直す方法"を教えてください、っと」
name:名無し
【コンパイルエラーを直す方法を教えてください】
「後はレスが付くのを待てば……」
name: indraya
【小学校から出直してこい】
name: Yes! くらいすと5
【開発環境も、実行してるコードも分からんのに、何も答えられん】
「辛辣なレス付いた!」
トーキは驚嘆しているが、ごもっともなツッコミである。
「くっ! "そう言う奴こそ、小学校から出直してこい"って返してやる!」
『"煽り"への対応が小学生レベルです』
「こんな時だけフォルトゥナさんの応答が柔軟!?」
name: 神界の仮面天使
【まぁまぁ、差し支えなければ、とりあえずコードをコピペしてみてください】
「天使様や。良い人もいた」
トーキはコンパイルエラーが発生している白い画面に戻る。
「神様的な管理者が作ったプログラムコードなんだけど……、いいよね、コピペしちゃって」
白い画面に記載されているコードを全てコピーし、掲示板に投稿した。
name: 神界の仮面天使
【これはたぶんObjectorのVETですね】
「ほぅ、Objector?」
トーキは改めて白い画面を確認する。画面の一番上に「ExaSkill Objector Visual Element for Things」と記載されていることに気が付いた。
「Visual Element for ThingsだからVETかな……?」
納得しつつ、神界の仮面天使氏の回答には続きがあったため、そちらに目を向けた。
name: 神界の仮面天使
【このコードですと、11行目にある変数「i」が宣言されていません……(中略)。ずいぶん面白い処理ですが、これは生物オブジェクトに記述するコードですよね? これをその生物が実行すると、死ぬまで目覚めなくなります】
「ヴェ!?」
"死ぬまで目覚めなくなります"の部分で、トーキはおかしな声が出た。
name: 神界の仮面天使
【終了部分の判定が常にTrueになってしまうので、そこで無限ループに入ります。ただ、幸い(?)なことに、"眠る"処理だけしかしていないため、早晩脱水症状で死亡します。なので、精々1週間程度で生物オブジェクトが死亡処理されてループも止まります】
「マジかよ、あのクソ管理者……」
「何とかして消せないかな……」
『"何とかして消せないかな"の検索結果を表示します』
検索画面が表示される。
「くっ! 邪魔してきやがる!」
『"くっ、殺せ"の検索結果を表示します』
「そんなこと言ってないし!」
「あ! "何とかして消せないかな"の検索結果に、消し方のページがある!!」
「えっと、タスクバーの検索ボックスを右クリックして……」
(中略)
「これであとは、"無効"を選ぶ、と」
『……』
「?」
『私を消しても、第二第三のフォルトゥナが──』
「魔王みたいな捨て台詞言い出した!!」