繋がり
「兄貴、森に魔獣がいるらしいんだ」
「そいつら狩って素材を取ってきてくれないか?兄貴なら余裕だろ?」
そんな俺は可愛い弟の頼みだと思い森に足を踏み入れた。
なのに、
「うあぁああああああああああああっ!」
「話が違う!!なんだこれは!!」
なりふり構わず走りながら絶叫する。
「弱い魔獣じゃないのか?なんだあの化け物!?」
後ろを見てば漆黒の塊が迫ってくる。
その瞳には明確な殺意が込められている。
それもそうだ、眠っているところを俺が魔法で攻撃した。
殺せると思ったんだ。でも結果は?無傷だ。
俺が放った岩の槍の魔法は奴の体に触れ粉々に砕かれた。
「ヴォオオオオオオオオオッ!」
黒い魔獣が怒号を上げる。魔法使いなど遠距離攻撃ができなければただのヒョロガリだ。
死を身近に感じ、足が震える。
「はっ、はっ!」
息が苦しい。どうせ追いつかれる。無意味と知りながらも走り続ける。
そんな地獄の中、
「ヴォッ!?」
突然黒い魔獣が悲鳴を上げた。
何が起こったかは分からない。
他の魔獣か?そんな最悪の場面が頭を過ぎる。ただわかることは、足を止めたら死ぬ。それだけ。
しかし、絶望的な状況に、
「待ってください!」
地獄に人の声がした。
立ち止まり恐る恐る振り返ると、そこには二人の人の姿があった。
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「間に合った‥‥!」
その言葉を発した俺の前には一人の細身の男が立っていた。
「貴方たちは?」
息を整え男は口を開いた。
「自分はイニティウム・ミト・フレンドリアというもので、隣の女性はミト・キョウカさんです。
僕たちはこの森に住んでいるもので、貴方が森に入ってきたことに気付き様子を見にきたところ襲われていたので…‥」
「この森に住んでる!?魔獣だらけの森に?」
「はい、まあ訳ありでして‥‥」
「とりあえず、安全な場所に移動しましょう」
そういい、家までの道を案内した。
家に戻り、少しの会話をし、改めて軽く自己紹介をする。
「私の名前はフレイ・フラット。魔法使いとして国に仕えています。まあ下っ端ですが。」
魔法使い、軍の人なのか。
「ではフレイさん、貴方はなぜこの森に?」
「ああ、それは少し魔獣を狩って素材が欲しかったんだ」
「素材を?それはなぜ?」
「弟が鍛治師しててぇえええええ!」
「ほんとうですか!?」
やばい取り乱してしまった。素材の話でもしかしてと思ったけど‥…
ビンゴだ。まさか一人目で鍛治師の知り合いに会えるとは‥‥
「びっくりした…」
フレイさんは驚きのあまり椅子から転げ落ちている。
「すみません、今武器が欲しくて鍛治師を探してまして…‥」
「そうだったのか…‥まあそれなら…」
椅子に座り直し、
「命を助けてもらったしね、よければ紹介しようか?」
「ほんとうですか?ぜひお願いします!!」
最高だ、俺は運がいい。
「とりあえず森の外に出たいから送ってくれるかな?」
そういうとフレイさんは立ち上がった。
「でも一つ、弟は変わり者だからそのことだけは覚えておいてくれ」
変わり者?関係ない、魔法の主流なこの世界の鍛治師なんてちょっとくらい変わってないとやってけないぜ!
「はい、ではいきましょう!」
そうして俺は家を出た。
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