原点と武器
半年が過ぎ、俺はなんとか生き残っている。
だいぶ魔力総量は増えてきた。
そろそろ体に魔力を通して身体能力を強化する方法を試そうと思い、
「キョウカさん、魔力を流すと言っても具体的にはどうすれば?」
「そうね、体の中にある魔力は感じられる?」
「それはまぁ‥‥」
「そうしたら後は……」
「後は‥‥?」
俺は息を呑んだ。
基本子供っぽいこの人だが間違いなく強い。
魔法を魔級まで使える上に、武才まで持ち合わせている。
間違いなくこの世界でも最上位の強さを有していると思う。
「気合ね‥‥」
うん、だよね。
「知ってましたよ‥‥」
するとキョウカさんは申しわけ無さそうに、
「昔にフレくんと同じでこの方法を使っていた人がいたのよ‥‥」
そうか、だからこの案をすぐ出せたのか‥‥
「その人はどんな人だったんですか?」
キョウカさんは懐かしむように、
「そうね、君みたいな感じがあまり得意じゃなくてね‥‥この方法で体を強化して戦ってた」
「獲物は剣で、相手の懐に入り込んでスパッと切るの」
「まあ習得にはかなり苦労してたみたいだけどね」
「それこそ完全独学だったから‥‥この方法を考えるだけでも相当試行錯誤してた」
「でも強かった、地上なら敵なしで、鬼神なんて呼ばれてたわ」
剣で、そうか‥‥‥その人も俺と同じで‥‥
「話が聞けてよかったです、この方法でそんなに強くなったカッケー人がいるんだ」
「俺はその人を超えることを目標に頑張るよ」
「鬼神を超える、大きく出たわね、まあ頑張りなさい」
そうだ、俺なんかやり方がわかるだけまだマシなほうだ。
その人は一からこの方法を編み出したんだ。下地のある俺が頑張らなくてどうする!
よっしゃぁ、やる気出てきたぁぁー
その日から一年半が過ぎ、12歳になった。
魔力を流す練習をし、魔力を毎日空にし続けた。
まだまあだけど、魔力も流せるようになってきた。
そんな時キョウカさんが、
「そろそろ魔獣でも狩ってみる?」
そう、身体強化も多少できるようになった俺の次の試練。実戦での身体強化だ。
どんなに強くなろうと、実戦で使えなければ意味はない。
森の中はもちろん、外にも魔獣はゴロゴロいるんだ。
それには一つ問題がある、それは
「武器がないんですけど‥‥」
そう武器だ。俺にあるのはこの森に入ってきた時に持っていたナイフ一本だ。
そのナイフもあの森の逃走劇と修行でもうボロボロになっている。
身体能力を上げれば殴ったり蹴ったりして殺せるかもしれないが、今の俺にはそんなことはできない。
あと1年修行をすればできるようになるかもしれないが、いつか武器は必要になる。
そんなことを考えていると、キョウカさんは少し考え、
「そうね、魔法主流の世界で武器は基本使わないからと思ってたけど貴方には絶対に必要ね‥‥」
そう、今キョウカさんが言った通りこの世界で武器はあまり使われず、
武器といったら貴族の武芸に使うか、オシャレアイテム、大きな音を出さず一瞬で人を殺す暗殺者御用達の物というのが一般常識として定着している。
なので剣なんかはあまり見かけず、今は魔法の威力を増強させる杖を持つものがほとんどだ。
「どんな獲物がいいの?」
やっぱりこの戦闘スタイルの原点の人が使ってた剣か?武器といえば剣だし。
でもできるだけスピードが欲しいし‥‥何よりその人を俺は越えたいんだ。同じじゃ意味が無い。
なら俺の答えは、
「ナイフがいいです!!」
「へぇ、それはなんで?」
「スピードが欲しいとか、持ち運びやすいとか便利な点と‥‥」
「俺はナイフと一緒にこの森に捨てられました。なので‥‥‥」
俺の人生はナイフと一緒に‥‥なんて、
そんな俺を見てクスリと笑うとキョウカさんは、
「いいわ!‥‥それより貴方って、結構ロマンチストよね」
そういうと、ふふっと我が子を見るような優しい笑みを浮かべる。
一方俺は、「ナイフと一緒に!」なんて今になって恥ずかしくなり、その場を逃げ出した。
「落ち着いた?」
魔法を30分くらいぶっ放した俺はスッキリして戻ってきた。まあ初級魔法なんだけど‥‥‥
「はい‥‥それで武器ってどうやって作るんですか?」
「そうね、森の外には鍛治師がいるけど、私は外には出れないから」
剣や武器があまり使われないこの世界にも少ないが鍛治師いる。
そのほとんどは武器に心奪われた熱い人たちだ。
武器は基本魔獣などのモンスターの部位を基に造られる。
モンスターの部位の素材と呼ばれ、売り買いされている。
「素材はくさるほどあるのだけど‥‥」
「どうしましょうか?」
これはばかりは本当にどうしようもない。
悩んでいると、
「森に誰か入ってきたわね、見にいく?」
キョウカさんは封印の影響で森に入ってきた者の位置がわかるらしい。
それで森に人が入ってくるとこんなふうに反応するのだ。
といってもこの森に来てから2、3人くらいしか人は来ていない。
この森には基本的に魔獣しかいないので人は入っこず、入ってきてもすぐに帰っていく。
「そうですね、もしかしたらその人の知り合いに鍛治師がいる可能性も0でわないですから」
そう入っても、鍛治師は少ないので知り合いに鍛治師がいるなんてことはほぼないが。
そんな少ない可能性に賭けて俺は家を出た。
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