『オマケと共に』
二話です。いよいよこれからという感じです。
「大丈夫かい?…少年」
魔獣を殺したであろう女性は優しく声をかけてきた。
「ああ、ゆっくりでいいよ」
「こんなとこに子供が一人、訳ありに決まっているからねぇ」
(助かった…のか?)
「はぁ……」
思わずため息が漏れ出る。
「ふふっ、大丈夫そうだね?」
「はい…助けていただきありがとうございました」
「ここは危険だ、ついてきて」
そう言うと女性は歩き出した。
無我夢中で走り回っていたせいで来た道は当然覚えていない。
とりあえず森の外に出たい。
外に出ればなんとか…
と一瞬考えたが今の俺には帰る家はない。
父様は今頃魔獣の餌にされている俺でも想像してるんだろうか?
やめよう。今は目の前のことを考えよう。
少し歩くと森の中にぽつんと佇む1つ家の前に出た。家の周りには荊棘が生えている。
魔獣対策なのだろうか?
「森に家?もしかして…‥」
「そうよ、私の家よ!」
どう?どう?と女性は大きな胸を張ってきた。
「入って、入って!」
そういうと女性は扉を開ける。
どうする?こんな森に家が1つ。明らかに訳ありだ。まあその点は俺も一緒だが。
まあどうするも何も、入る以外の選択肢はない。覚悟は決まった。
「では、お邪魔します‥‥‥」
「はーい、入って入って」
こうして俺は、謎に包まれた女性に招かれ家に入った。
「うぐ…えぐ……!?」
「えーとぉ…」
家に招かれた後、俺は一通り森に入り死にかけるまでの一連の流れを女性に語った。
初めは真剣な顔つきで話を聞いてくれていた女性は、途中から涙を流し始め、
今では涙が滝のようにこぼれ落ちている。
「そのぉー‥‥」
俺みたいなやつの話をこんなに真剣に聞いてくれるなんて‥‥良い人だ。
「分かった!」
女性は勢いよく立ち上がった。
「へ!?」
思わず変な声が出てしまった。
「貴方はここにいなさい!」
話ていて薄々感じていたが、この人はどこか子供っぽいところがある気がする。
でも何より、今の俺に住む場所を与えてくれるという。まだまだ謎だらけの人だが、
悪い人ではないし、お言葉に甘えよう。
「すみません、ありがとうございます」
「それじゃあ次は、私のことを話そうかしら」
そう言うと彼女は優しく語り始めた。
「私ね、この森から出れないの」
「えっ‥‥!?」
いきなり衝撃的な発言だ。森から出られない?魔獣を易々殺したことを考えると、
魔獣が問題ではなさそうだ。
「それはなぜですか?」
「そうね、話せば長くなるけど‥‥簡単に言えば封印みたいなものね!」
「封印‥‥」
封印といえば悪魔や魔王なんかの強大な力を持つものに対して、倒せるものがいないとき、
行動を封じる最高峰の魔法だ。
そんなことされるなんてこの人、一体何をしたんだ?
「昔、悪魔をすこしね、すこーしだけね!荊棘でね‥‥」
そういうことか‥‥
「もう大丈夫です‥‥」
大方悪魔を荊棘で殺しまくったら悪魔より上位の存在に封印されたんだろう。
それなら魔王か?あの魔王が封印するほどなのか?
それじゃあこの人、魔王よりも強いのか?
「封印はいつから?」
「500年は前かしら?」
「ご、ごひゃく!?」
「そうなの、封印のせいで年は取らないのよ」
500年前からずっと、ずっとこの森にいたのか?
「そんなことだから、貴方が外の世界で一人で生きていけるようになるまでは面倒みるわ!」
任せなさい!と優しく、しかし力強く微笑んだ女性に父にいいように扱われ亡くなった優しかった母が重なった。
「ところでまだ名前を言ってなかったわね」
「私はミト・キョウカ、荊棘の魔女キョウカよ!」
魔女って‥‥まあ500年も生きてたら魔女だろうけど‥‥
「私は、いや……俺は‥‥フレンドリアです。家名はありません。」
俺はもうヴィルム家のフレンドリアじゃない。だから俺はただのフレンドリアだ。
「なら、私の家名のミトを名乗ると良いわぁ、おまけで森の名前のイニティウムもどう?」
おまけって…‥名前だけど…
「貴方は今日から、イニティウム・ミト・フレンドリアよ」
名前が長ぇ……
「今長いって思ったでしょ!!」
ミトさんの顔が膨れた。
「いや……」
ご名答です。さすが魔女様!!!
「貴方の名前は?」
分かりましたよ…‥俺の名前は
「イニティウム・ミト・フレンドリアです」
キョウカさんが微笑んだ。
これから頑張ろう。
生きていくんだ‥‥‥この長ったらしい、オマケでついてきた新しい家名と一緒に。
新しい人生のスタートですね。書きたい場面があるので早くそこまで進めたいです。
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