『破門』
初めまして鳥籠です。
ファンタジーが好きでとうとう書き始めました。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
「はっ、はっ…!」
意識が朦朧とする……
暗い視界には俺の命を刈り取る化け物が映る。
殺せるか?無理だろう。
この世界に神様がいるのなら、どこかで今の俺を見ているのなら……
なんでもするから頼む!俺はまだ死にたくない……
「グゥルゥぅ…‥!」
そんな思考の中、化け物の牙が喉元に迫った……
<数時間前>
「あっっ…」
俺が放った魔法はすぐに霧散し消えてしまった。
「フレンドリア、本当にお前は何もできないな…」
父がため息まじりに呟く。
「すみません、ですが次こそは、次こそは…」
「次などはない!!フェクトリアを見ろ!お前はどうだ?」
「兄と比べ魔法の才は無く、武才も無し、勉学では弟にすら劣る出来…」
仕方がないじゃないか‥‥兄と弟は天才で、俺は普通だったんだから。
「この由緒正しきヴィルム家にクズは不要!!」
「消えろ、お前は私の子供じゃない‥‥」
なんだよ!なんで俺だけこうなんだ。
「お待ちください父様!」
「兄‥…さん!?」
辞めてくれ兄さん、もういいんだよ、貴方が優しいから余計に辛くなる。
「黙っていろフェクトリア」
「お前に弟はいなかった…‥」
「そんな、フレンドリアは私の弟です、どうかご慈悲を!」
「そうか、ならばフレンドリアよ、その価値を示せ!」
「今からイニティウムの森に入り魔獣を一匹狩ってこい」
「……魔獣なんて」
無理だ、狩れるわけないじゃないか!
こいつ俺を殺す気しかないじゃないか。
「何か文句があるのか、フレンドリア」
「‥…‥いえなんでもありません」
「お前もいいな、フェクトリア」
「くっ……はい…」
「決まりだ、準備しろ」
そこから俺は森の中に放り込まれた。
「……ガルゥゥゥ」
森に入ってどのくらい経った?
魔物を殺す?ふざけてんのか!?
無理に決まっている……今の俺は一握りのナイフだけ。
今の俺なんかじゃナイフで魔物は殺せない。
「はあ、はっ、はぁっ……!」
汗が止まらない、足が止まる…逃げきれない。
一か八か迎え撃つか?
噛みちぎられる未来しか見えない。
魔法なら?威力が足りない……
もう一度走り出すか?
平衡感覚はすでにおかしい、心臓がうるさい。
これまた噛みちぎられるだろう…。
視界が暗くなってきた。いよいよか?
「くそぉ……死にたくない、死にたくない」
涙が滲む、死にたくない、ゴミみたいな人生だ、まだ10歳なんだ!?
短い一生すぎるだろ、やりたいことがいっぱいあるんだ…
この世界に神様がいるのなら、どこかで今の俺を見ているのなら……
せめて一度くらい、俺を助けてはくれないだろうか!?
どんな試練も乗り越える、世界の危機なら喜んで救うさ……
だから今この瞬間だけ……
「ガァっっ」
魔獣の牙が俺の喉元に伸びる。
「っっ!」
「グゲェ…」
瞬間、鈍い音と共に魔獣の頭を何かが貫いた。
「なっっ…」
「荊棘!?なのか?」
ドサッという音と共に俺に飛びかろうとしていた魔獣が地面に落ちる。
「死んだ?でもなんで荊棘が?」
今にも心臓が破裂しそうたが、そんなこともいってられない。
息を整え周りを確認する。
すると、
「大丈夫かい?少年……」
紫色の女性が目の前に立っていた。
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