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初めまして
気長に書いていこうと思います
よろしくお願いします。
カタカタと愛用のキーボードを指で弾く。
「っっ、、 ってもう一時か」
俺は、凝り固まった肩をほぐしながら椅子から立ち上がる。パソコンの画面上には編集中のネット小説が映っている。
「俺にはラブコメは向いてなかったのかな」
小説の閲覧状況を確認するページを開いてじっと見つめる。閲覧数は話数を重ねるごとに減っている。最初の頃は結構伸びてたんだけどなあ。悔しいがこれが世間様の評価ってわけだ。
「今日も高校あるし、、もう寝ないと」
そんな悔しさを胸に抱きつつパソコンの電源を落とした。
また朝になってしまったらしい。もう少し寝たいと思いながらも体を起こし、目を擦って身支度を始める。もちろん時間がないから朝飯は取らない。10分後に家を出て電車に乗っていた。おっ 最速RTAじゃん
くだらないが嬉しいものは嬉しいから。仕方なし。
電車のドア前にポジションを取りスマホでネット小説を読み始める。
やっぱり転生ものは流行ってるな、面白いし、読みやすいもんな、、、そんな俺も転生もの書いていた時期があった。うーん 意外と人気作だったんだけど俺自身が飽きちゃったんだよな。つくづくダメな物書きだ。
、、、、久々に自分の転生小説読んでみるか。なんと、いまだに閲覧数が取れているらしい。
これの何が面白いって、、、、、、、
待ってクソおもろいんだが。テンプレのざまあ展開を取り入れつつもしっかりと異世界ファンタジー、ヒロインレースもよき。書いたの誰だよ。俺だよ。
昔の自分にすらダメージを負わされたところで、学校まではこの横断歩道一本だ。今日はいつもより早いな。言っても本鈴3分前だけど。あたりを見回しても生徒はいない。本鈴近くに歩いているバカは俺ぐらいだ。
ここは右手を上げて横断歩道を渡ろう。
人が見てないところでも神は見てるってよく言うもんな。
渡り始めようとした時だった。
ガッツがーーーーーーーん キュいいーーーー
トラックがガードレールに当たりながら、ものすごい勢いで突っ込んできている。
クラクションを鳴らしてないあたり居眠り運転だろう。そう 察した時、俺の意識は途切れていた。
長い間寝ていたかもしれない、はたまた5分も寝ていないかもしれない。
俺は、目を擦りながら視界を確保する。
「っ眩しい」
目を開けると、そこにはアニメに出てくるような天国があった。
「えええ 天国、、、ってことは俺死んだのか」
「死んだのお おぬしは」
そこには、やはりテンプレ通りのおじいさんが立っていた。多分このじっちゃん神だろ。テンプレ通りに「私が神じゃ」とか
言うんだろ。
「私が神じゃ」
ホラ言いやがった。テンプレ縛りでもしているのだろうか。このテンプレ神。
「はあ で俺はトラックに轢かれて死んだと、、、で別の世界に転生この流れだろ」
「ぬおおおお お主私の心が読めるのか すごいぞ えらい」
テンプレ神はいたく感動しているが、ツッコミを入れるとめんどくさそうだからスルーさっさと次の会話に進めてしまおう。
「転生ってどこにだ 特殊スキル 魔法の有無は」
「あっ ごっほん 君はエルトレア王国 貴族のルイード家長男 ルイード バン アレクに転生じゃ」
そういってテンプレ神はニヤリとする。それってソレっって、、、、、、、、、、、、、
「俺の書いた小説の主人公じゃねえかああああああああああああああ」
「おっほほほ そうじゃよ 君の書いた小説『異世界 現代知識チート使ってみた』じゃよ。これがねえ 神々の間で大人気なんじゃよ。もちろんわしも読んでおるぞ。 ほら 書籍にもなっておるわい。後でサインを書いてくれ」
俺は嬉しいようなような、恥ずかしいような。って神界で流行る小説書いてたのか俺。
まあ ファン第一号が神であろうとなかろうとサインの一つや二つチョチョイのチョイだ。しっかりサインも考えている。おっと危うく転生の話を忘れるところだった。切り替え切り替えっと
「で 転生先は俺の書いた小説通りなのか」
「それがじゃな わしらが新世界を作る時に開かれる『神界議』でのう。お話の通りに作ってもつまらないじゃないかと皆が言い出してのう。少し変えておるわい」
「えっと それって」
「そうじゃ いわゆるサクセスストーリーじゃの」
なんか嫌な予感がするのは俺だけか。サクセスストーリー、神たちが作ったサクセスストーリー。ぜっっっっったいヤバい。
だって、俺が作ったまんまだったらイベントのタイミング攻略法も分かるけど。
神だぞ。なに考えてるのか分かるはずもない。いや、わかりたくもない。
「なんじゃ お主渋っておるのう」
「そりゃそうだろ 自分の書いた物語ならまだしも神様たちが作った物語なんて命いくつあっても足りねーよ」
「まあまあ 安心せい 逆に神たちが自分の大好きな娯楽を産んでくれるお主をそう簡単に殺すはずもないからのう」
確かにテンプレ神の言うことも一理あるが、本当に人気かなんてわからないだろ。こいつが勝手に言ってるだけかもしれないし。
「おや まだ納得いかない様子じゃのう しょうがあるまい 皆、我が領域への降臨を許可しよう」
「降臨ってなん、、、、」
その時、空から目も開けられない程に眩しい光が降ってきた。テンプレ神が現れた時のようだ。しばらくして目を開けてみるとそこには、6人の美男美女が俺を今にも襲いそうなぐらいに興奮して俺の周りを囲っていた。
「もう だあああああいファンなんです」
「もう99999999999999999999999999999999回も読みましたもの」
「俺もだ あの戦闘シーンは熱かったぜ」
「あの政策は感無量だ」
「うん ハグして良いかな 良いよね」
「ヒロイン 女 可愛かった」
「って誰ええええええええ」
最初の人は熱意がすごすぎてちびりそうだったし、2番目の人は、もう一回読んでから報告してくれたらキリがよくてスッキリしたし。変な人も混じっている。
「うん?私たち」
そう貴方達と思いながら首をこくこくする。
「「「「「「神です 神だわ 神だぜ 神だ 神らしいよ 神」」」」」」
「いや全員神なのかああああああい」
「「「「「「神です 神だわ 神だぜ 神だ 神らしいよ 神」」」」」」
本当に全員、神らしい。神ってもっと神々しくて無表情で、、、、俺の神様像は音を立てて崩れ去っていく。
「そう言うことじゃ お主も決心せい これからあの時間が来ることにのお」
「あの時間 ってなんだ」
「ほほほ」
「「「「「「サインください くださいませ くれ くれないか 欲しい 。」」」」」」
それから、丸2日かけて神の持ち物にサインを書きまくった。
そして一週間も作品の良いところを力説されていた。神々は暇だ。
もう同じ話を30周ぐらい聞かされ、おだて上げられ俺の精神状態はぐちゃぐちゃだった。
止まない雨はない、というか台風レベルだったけど。ついに話が終わったのだ。
神々も流石にこれ以上は担当する世界の仕事を放置できないと渋々帰って行った。できればもう二度と会いたくないが。そして、テンプレ神と二人きりになっていた。
「お疲れじゃのう いつもはもうすこし自重するんだがのお」
「本当だよ 早く転生したいと思ったぐらいいだ」
「そう焦るでない こっからは転生の大切なルールじゃ」
「ルール そんなものあるのか」
「どちらかといえば、こうなればこうなるみたいなものか」
「うう それは大切そうだ」
「そうじゃろう そうじゃろう ごっほん
一 転生先でも死んでも現世には帰ってこれない
二 転生先にいる邪神の言うことは聞いてはいけない
三 なるべく世界を発展させるように
以上じゃ 」
「まあ なんだ定番ちゃあ定番だ」
そう答えると足元には、青白く光る魔法陣が浮かび上がっっていた。
わお ファンタジーだな。
「達者でのう わしらは上から見守っているぞ そうじゃったあっちでは続編も書いて欲しいのう」
「まあ 暇があれば考えなくもないな」
テンプレ神が微笑んだのと、同時に目の前が暗転した。
なんかワクワクしてきた。
さあ 完璧に攻略してやろうじゃないか
待ってろ 俺の異世界
ありがとうございます。
ブックマークぜひ
どうぞよしなに