アルトザイン!
新しい街!という事でワクワクしながら入った僕達だったが、街の風景はあまり変わらず、いつも見ていた石造りの建物がずらりと並び、店で働いている定員がその店の近くで客の呼び込みをしている。
そしてやはり街の中心には一際目立つ建物、領主館が立っていた
ラトリアとは違う点は、ラトリアは看板や装飾が木で作られており色もあまり付いていなかったせいで灰色の街、という印象だったのが、この街、アルトザインでは木の看板という点では同じだが、その上から塗料で色付けをされており、街の道路も石畳が敷いている中に時々色の着いた石で装飾されているのもまた楽しい。
「ここがアルトザイン!ねえカイン、宿に荷物を置いたら今日と明日は依頼を受けずに街の散策をしましょう?ねえ、エリスもいいと思うでしょ?」
「姉さんがそう言うと思ってさっき護衛してた商人から観光した方がいい場所を聞いておいた」
「さっすがあたしの妹ね!あたしの考えをバッチリ読むなんてすごいじゃない!」
「この位は、余裕」
「ていう事で、良いでしょ?カイン」
ううん、まあ今はこの街に来るための食料代とか宿代用に準備しとった金も余っとるし、2日くらいやったらええかな。
「うん、ええよ。その代わり、観光が終わったらしっかり働こうな?なんだって僕らまだ新人冒険者でランクも下やし、何よりあんまり遊んでるとすぐに金が無くなっちゃうからな...。悲しい話やけど」
「やった!じゃあ宿を買ったら直ぐに行きましょ!」
その後僕らはまだ時間も早かったことから宿を表通りの場所出とることができ、宣言通り2日間ギルドにも入らず観光をして行った。
一日目は屋台が集まる屋台広場。ここではエリスが目を輝かせていたが、ここで金を使ってしまうと生活が出来なくなると説明したところ、エリスは渋々豚汁と豚まんの2つを買っただけで次の場所へ行ってくれた。その後たまたま目に入った魔導具屋に立ち寄りいろいろな魔道具、戦闘用だけでなく、水に入れると湯が沸く、暖かい風が出る棒、などを見てその日は終わった。
2日目は一日目に行った屋台広場で出会ったおばちゃんにおすすめスポットを聞いていたので、その中から、景色が綺麗な場所、修行中の曲芸師が自分の技を披露する場所などを周り2日目は終了した。
「さて、2日間の観光は終わりやな。これからはバンバン依頼、こなしてくで」
「分かってるわよ、2日間で殆どお金も使っちゃったしね」
「早く稼がないと宿代も払えなくなる...」
そうして僕らは前もって見つけておいたギルドに行き、いい依頼が無いか受付に聞きに行く。
本当は自分で見たいけど、字を読むために勉強するための本も高くって買えんしな...
「んんなんて?ゴブリン、ゴブリン、ゴブリン、ボアゴブリン、ゴブリン、ウッドゴーレム、か。まあ僕らまだ最初やから仕方ないとはいえ、ゴブリンばっかやな」
「ゴブリンはもういいとして、このウッドゴーレムって言うのは?」
「ああ、ウッドゴーレム、と言うのはですね...」
受付嬢が言うには、岩山に偶に生息している、ストーンゴーレムというのが居て、それを聞いた魔術師がストーンゴーレムを作りたいけど、岩をいい感じに削るには時間も労力も掛かる、という事で、木を削り、そこに魔石を埋め込むことで作り出す事が出来ると思い作ったところ暴走し、そのまま魔物として生きる、ということがたまにあるらしい。
それで厄介なのが、魔術師は大抵自分は特別だ、と思い込んでいる輩が多いらしく、ウッドゴーレムも自分が作れば制御出来る、という勘違いをする物が年に何回かあるようだ。
...いや!魔術師アホすぎるやろ!僕のイメージん中にあるクールでビーカーくるくる回してるイメージ返して!
「へぇ、面白そう。カインこれ、受けよ?」
「うんええよ、僕も初めての魔物ってワクワクするしな。因みにこれの依頼人と報酬は?」
「はい、依頼人はゴーレム作成者で名前は恥ずかしいから匿名で、と希望されていまして、報酬は銀貨3枚、だそうです」
「依頼人の名前匿名ねぇ。てか報酬たっか!あなたはどう思います?この依頼。僕らウッドゴーレムなんて依頼初めて受けるんですけど依頼人匿名なんて初めてみますし、報酬高いってなんか怪しくないですか?」
「いえ、大丈夫ですよ匿名、と言うのは依頼を出す際追加でお金を払ってもらうことで出来ますし、報酬が高い要因としては、個人の完全な失策、という事で依頼人にそのランクの限界である報酬を出してもらう規則になっていますので」
はあ、なるほどな、ギルドがそういう風になってるからアホなヤツが少なくなると、それが嫌なら自分の実力を高めて、自分で処理できるようになれと、メッチャ考えられてるな
「分かりました!この依頼にします」
「分かりました。依頼の登録をしますので、冒険者カードを出してください。...はい、登録は完了です。討伐証明は木の破片を持ってきてください。では行ってらっしゃいませ」
「「「行ってきます!」」」