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ショートショート4月~

ねじねじ

作者: たかさば
掲載日:2020/04/25

思えば、もの心ついた時から、ねじねじの呪縛に、巻きこまれていた。


お絵かきが大好きだった私は、クレヨンとスケッチブックが友達だった。


いつも、思いつくまま、気ままに線を引き、それはやがて、形を描いた。


自分の引いた色が、形となって、作品になる。


自分の世界の幕開けだった。



ところが。


ここで。


ねじねじが、襲い掛かる。



「クレヨンは!右手で持ちなさい!!!」



私は、確かに、左利き、だったのだ。


左手で色を持ち、右手で白を支え。


色を引いて、世界を描き出す喜びを知った私が、ねじれてゆく。



うまく、握れない、色。


うまく支えることは比較的容易で。


色だけが、ぎこちない動きで、創世を阻む。


やりきれない、苛立ちが、クレヨンを持つ手に、篭る。



いつしか私は、色を引くとき、クレヨンを握り締めるようになった。


あんなにも、優しく支えて、優しく白をなでて、創世した私の、色。


クレヨンを折る日が続く。



握り締められて、色が引けなくなった、無残なかけら。


私の左手は、もう、色を引くことができないから。


かけらを細かく割って、割り箸の先にのせて。


白の上にそっと乗せて。


ぎゅっと押しつぶして、色を、のせる。


線を一本も引かずに、色あふれる世界を、何度も描いた。





左手の記憶が、あやふやになるころ。



私は数字の魅力に、心を奪われた。


とりわけ、因数分解。方程式。


難しい問題に憂き身を窶し、何冊も問題を解いては、悦に浸る。



進路を決めねばならない時期。


またしてもねじねじが、襲い掛かる。



「女の癖に理系に行くな!」



問題集は、私が夢中になれる、時間をくれた。


取り上げられた問題集と引き換えに、漢字辞典が私の元にやってきた。



来る日も、来る日も、数字を恋しく思い続けたけれど。


難しい問題の、その先にある数式の定理には、手が届かなくなった。





数字の魅力が薄れ、数式の存在を忘れたころ。



私は人のやさしさに、ふれた。


人と共に有る喜びを知り。


人と共に前を向く、勇気をもらった。



人と共にある幸せを、噛み締めていると。


またしても、ねじねじが、襲い掛かる。



「人なんて結局、孤独なんだよ!」



人は、私に与えてくれた。


人は、私を支えてくれた。


人に、私は。


私は。


私は。



私は、人に、何をしてきた?


こたえてくれる、人がいない。


私は一人、ねじれていく。



私にできることは。



ただ、ねじねじに、巻き込まれるだけ。


ただ、ねじねじと、ねじれていくだけ。


ただ、最後に、ねじ切れるだけ。



次にねじねじが襲い掛かってくる前に。



ねじれを解く、手段を探る。


手段を探す。



手段を見つけて解いたところで。


長年ねじれた、この身は再びねじれを求めて。


よりいっそう複雑に、ねじれていくばかり。



そんなふうに自己完結して、ねじれを受け入れ、生きていく。



ねじねじのまま、生きていく。



ねじねじねじ。


ねじねじねじ。


ねじ、ねじ、ねじ・・・



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― 新着の感想 ―
[良い点] うああああ、久しぶりまともな文学を読んだ気がする! [一言] ありがとうございました!
2020/04/27 21:39 退会済み
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